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【走馬灯】

 私はよく他人から、「融通が利かない」と言われるんだけど……それは正しくないと思うわ。


 正しいことを正しいと言って、間違っていることに対しては間違っていると言う。自分のそのモットーに対して、私は忠実でありたいと思っているだけなの。


 もしも誰かが、そんな私のことを「融通が利かない」、「正論ばかりのマニュアル人間だ」と思うのだとしたら。

 それはその人が、ルールというものを軽んじているからに他ならない。自分でルールを破っておきながら、私を「融通が利かない」と(おとし)めることで、その罪悪感から逃げようとしているだけなのよ。そんな人たちは、一度ルールを破ればそのあとも何度でも同じことを繰り返す。それに、そんな人たちが平然とまかり通っているという状態自体が、きちんとルールを守っている正しい人たちの努力に水をさすことにつながるわ。そうなれば、やがてルールも校則も形骸化して、学校の風紀は地の底に落ちてしまうでしょう?

 だから私は、生徒会長に立候補することにしたのよ。


 ……え? 何の話だったかしら。

 ああ、そうそう。『あの日』のことよね?


 『あの日』は、私が生徒会長に就任して、記念すべき最初の生徒会役員会議の日だったわ。

 私が選挙公約として掲げた「開かれた生徒会」というスローガンに則って、すでに校内のいたるところにはASPRB――オール・スチューデンツ・プレシャス・リクエスト・ボックス。皆さんは単純に、目安箱と呼んでいたみたいだけど……――が配置されていて、その日は丁度その第一回の回収日でもあったの。


 それでその日の放課後、さっそくその箱の中身を回収して、内容を精査しようとしたところで……驚いたわ。

 そこに、「哀田アリスさんがイジメられている」という内容の投書があったのですもの。


 私はすぐに、役員たちと協力して哀田さんを探したわ。

 とにかくまずは彼女に会って話を聞かなくちゃって思ったし、場合によっては先生や保護者のかたも交えて、面談をする必要があったから。

 でも、どれだけ探しても、彼女は見つからなかった。担任の先生はもう帰ってしまわれたあとだったから、副担任の土岐先生にも連絡をとってみたりもしたのだけど……やっぱり先生も、彼女の居場所は知らないっておっしゃってたわ。


 そしてそのうちに、最終下校時間になってしまった。

 役員のみんなをこれ以上拘束できないし、生徒たちの模範となるはずの生徒会が、下校時間を守らないわけにもいかないじゃない?

 だから、その日はとりあえずそこで解散して、哀田さんからの話は明日聞こうということにしたの。念のため、来週のロングホームルームを、イジメがいかに下らない行為かを全校生徒に向けて訴えるような時間として使えないかって、担当の先生に打診しておくことも忘れなかったわ。


 私は一生徒として、一生徒会役員として……そして生徒会長として。自分が出来る限りのことはしたつもりよ。たとえそれが、『あの日』の彼女にとっては何の役にも立たないことだったとしても……。

 だから私を……私たち生徒会を、無意味なことをして自己満足しているだけの『愚か者』だなんて、誰にも呼ばせないわ。


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