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クローバーのお届け物  作者: 白夜
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プロローグ02

暇ができません

 朝にあった違和感が嘘のように変哲もない1日が流れていった。何のことはない、昨日親から来たメールに引っ張られたか、昨日見た夢に引っ張られたかしたのだろう。あれ?今朝見た夢?どっちの表現が正しいのだろう?日本語は難しい。どっちも同じなのだろうか?


放課後になるとクラスの生徒は大体3つのパターンに分かれる。


1つ目が部活動に励む者。うちは特別強い部活はないが、個人としてぼちぼち強い人は何人かいるらしい。テニス、バドミントン、柔道、魔法拳闘、魔法技師あたりは全国大会に出る人もいたはずだ。大会で勝つことを目的にする人も、部活動で仲間とともに青春を過ごす人も放課後になれば部活動に励んでいる。


2つ目は部活動に所属せず校内で過ごす者だ。級友と親睦を深める人や教室や図書室で勉強する人、実技室や研魔室で魔法の研究や組手をする人もここに含まれる。


3つ目は俺のような帰宅をする者だ。やることがないというか、わざわざ放課後まで学校に残りたくない。俺は決して人と関わるのが下手くそとか、集団に所属できないはみ出し者というわけではない。そう、自分の時間を大事にしたいタイプなんだ。やらなければならないことはたくさんあるし、自己を高めていかなければならないだろう。だから仕方なく変えるだけでなく。きっとみんな同じはずだ。仕方ないのだ。




日課を終え家の中に入る時にはすでに日は落ちている。夏場のため日入り時刻は遅いが、いつもこんなものだ。1人しかいないからここからご飯を作らなければならない。しかし、そこはご安心を、土日のうちに冷凍食品を仕込んでおいたのだ!今日のご飯はチーズ・イン・ハンバーグ、手作りの一品だ。こだわりはバター、牛脂を一欠片練り込むため、濃厚な仕上がりになることだ。我が手作りながら3本指に入るくらい好きである。残りはとろろかけご飯とペペロンチーノだ。

ハンバーグを温めている間に、スープとご飯、サラダを用意してご機嫌な晩御飯だ。ハンバーグやスープが洋風だからサラダは青紫蘇ドレッシングで和風に仕上げる。バランスの良い食事を心がけるのは当然のことだ。味もいつも通り問題ない。ハンバーグの肉汁を吸い、一緒に盛っているご飯が旨い。スープやサラダで口をあっさりにしつつ、濃厚なハンバーグで押し切るのが最高だ。これにコーラがあれば最高だが、あいにく我が家にコーラを置いていないため、水をお供にする。




片付けや洗濯まで終えると訪れる自由時間、ふと今朝のことを思い出した。狐が何かわからない、狐がいないことになっている世界、誰に聞いてもそれだけは覆らなかった。狐、キツネ、古くから神社にいる神の使い、神の化身などと言われているがそれが幻想種に成り果てている。間違いなくこの世界はおかしくなった。もしくは俺自身がおかしくなった・・・?その可能性もないとは言えない、むしろ高いとも言えるが、どちらにしろ原因を追求しなければならないだろう。俺だけが変であれば追求はまだできるが、世界規模となると全く予測できない。いつになれば前のような生活に戻るのか、科学も魔法もあるトンデモ世界なこの世の中ではまったく読めない。時間はあるから少しずつ解明していけばいいだろう。


翌日学校に行くと前日の喧騒はより大きくなっていた。誰も彼もが夢の話、そして不思議なことに全員が似たような夢の内容を話しているのだ。やれイケメンから世界を渡る者を探しているだの、美女に世界の危機を救ってくれと頼まれただの現実味がなさすぎる。俺だけ夢を見ていなくて話にも入れないし、こんなに雰囲気のいいクラスでも居づらさが加速しそうで怖い。

京斗も見たらしく、詳しく教えてくれた。世界を救うというのはこの世界ではないと説明されたそうだ。しかし、どんな世界なのかの説明はなく、ただ助けてくれというお願いだけだったとのことである。質問しようにも話を聞くことしかできず、そのうち目が覚めてしまったそうだ。なぜ俺のとこには来ない・・・みんなが言う美女が違うようだから俺の元に来る人はどんな人か気になった。人それぞれ出てきた人の特徴が違うそうだ。ギャル付きの山口は金髪で化粧の濃い素敵なお姉さまと朝から言ってやまないし、清楚系大好きの森は大和撫子を形にしたような人が出てきたと言っていた。外人大好きな日下部は金髪ボインが、ロリコンの坂田には幼女のような見た目の女神様だったとか・・・てかこのクラス全然関わりのない俺も知っているくらい性癖オープンとか大丈夫なのだろうか?そういえば京斗はどんな人が出てきたんだろう?いつも話すけど意外と知らないな・・・でも知らないのが普通なのかな?


そんなくだらないことを考えていたら担任が入ってきた。ゴリの事務的な説明の最中も学級は夢の話をしたそうにソワソワしている。1人夢を見ていないとなると勝手にハブられている気がしてならない。こんな時どんな顔をすればいのかわからないの・・・いや、本当に。


「浮つくのもいいけど話はちゃんと聞けよ。今日は午後の授業を全部無しにして集会を開く。校長先生から話があるから、しっかり聞くこと。それに伴っていないとは思うが昼休み屋上で寝過ごしたり、校外に出て遅れることがないように。」

ゴリの話が終わってから余計に教室は騒がしい。そりゃ古典と英語オーラルコミュニケーションの授業がなくなれば誰でも嬉しいだろう。しかも校長が臨時の集会を開くとか何かあったに違いないと誰でも考える。


そんなテンションは授業でおさまるわけがない。体育ではマット運動でいつもの3倍はしゃいだ男子が首から落ちて保健室に運ばれ、数学でははしゃいだ男子が適当な公式を答え教師に「その答えだけはあり得ないよ」と否定され、家庭科でははしゃいだ女子が火加減を間違えて、親子丼を作る予定が炭の塊を作り上げていた。昼休みも飯時だって言うのに走り回っている奴らばかりだし、落ち着きがないこと限りなし。


その中に混ざれていない自分が、より疎外感があるようで居た堪れなくなってきた。早く今日が終わって帰れないかな・・・


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