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時計仕掛けと君

作者: みーしゃ

悲しいBGMとか付けたらいいかも!

momentとか?

時計仕掛けと君



夢を見ていた。


あの日、君と歩いた帰り道、…君を知った。


もしかしたら、もっと、ずっと前から君のことを知っていたのかもしれない。


知っている、君は世界で1番美しいことを…


知っている、君は世界で1番、脆いことを…。


それでも、だからこそ君が、…君という花が散るまでは一緒にいようと思った。



oneday


…起きて。

「起きて!」

けたたましい女性の声で僕の意識は覚醒する。

「起きてって言ってるじゃん!守隆!」

僕はようやく自分が何をしていたのか理解出来た。

どうやら僕は学校の昼休みから放課後までの時間、うたた寝していたようだ。

僕の視界に映る女性は

そんな僕を起こしてくれていたようだ。

「ごめん。寝てた。」

「見りゃ分かるわよ」

教室には僕と彼女の他に人はいなかった。

教室の窓を見ると茜色に空が染まり校庭には部活動が終わり帰り支度を始める生徒が少数人見受ける。

時計の針は午後7時を回っていた。

「なんで僕を待っていたの?」


彼女は1つため息をして言う。

「何言ってるの?一緒に帰るため…でしょ?」

一緒に帰る?僕と君が?

そんな約束したっけ?

「なに、その顔…まぁいいか。」

そういうと彼女は僕の手を引いて教室を出る。



…名も知らない彼女と僕の出会いだった。



。。。。



何故だろう。


とても懐かしい。


心が痛い。


泣く気がないのに

溢れんばかりの涙を流す。


こんな辛いのは何故だろう。

苦しいよ。


………足音が聞こえる。


行かなくちゃ。


。。。。。。




僕らは公園に向かっていた。



彼女は僕の手を離さない。

僕も彼女の手を離さない。


「ねぇ守隆。君は生きるってなんだと思う。

人間ってね、自分ではそのレールに外れていると思っても、神様がそうなるように仕向けてるんだって。

どんなにどんなに抗っても、私たちはその神様の記したレールからは外れることはない。」


……彼女はブランコに揺られながらそんなことを言う。

「きっと、どんな抗おうと目の前に向けられた運命からは逃れることは出来ないんだと思う。」


彼女は夜空を見ながらそんなことを呟く。

それにしても、なぜ彼女はそんなにも悲しい顔をするのだろう。




twoday



君はどこにいて、何を

見てるの。


どうして置いて行ってしまうの。


どうして何も言わずに居なくなっちゃうの。


君を、……。


。。。。。。



「ほら起きて!」


またか。また僕の耳にはあの彼女の声が聞こえる。

再び僕は昨日と同様に

意識が覚醒した。


「守隆はどうしてそう寝てばかりなの?」

哀しいような声で彼女は僕に問う。

「寝たいから寝るんだよ」

「守隆くん…必要でない睡眠程、無駄なことはないよ。」

睡眠は生きる上で大切なことだ。

僕は決して無駄ではないと思った。

しかし、彼女は…。

「その守隆が寝ていた時間で何ができたのか考えてみて。」

僕は思考をめぐらせた…。彼女の意図は一体なんなのかと…。

「まぁいいわ。帰りましょうか」

時計の秒針は僕の鼓動を追い越していく。

校庭に人の気配はない。





暗闇の中、街灯の光でようやく見つけた公園のベンチに僕らは腰をおろす。


「人生は常に選択の繰り返しって、言葉は聞いた事ある?」

彼女はポツリと呟く。


どこかで聞いた事のあるフレーズだった。

誰、なのか、どこで、なのか分からないが

僕は黙って頷く。


「うん。今君は私の話しに答えてくれた。

私の問いかけに答えない。という選択もあったのに。あなたは答えてくれた。

選択って言うのはね常に日頃から私たちは、行ってるの。」


彼女はなんでもないことをなにか大切な事のように僕に話してくる。


僕はそんな彼女に憧れを抱いていたのかもしれない。


。。。。。。。



threeday


。。。。。。。


ねぇどこに行くの!


手を取っても、手を取っても、君の手を取ることは出来なかった。


手探りで、僕は不器用ながらも何とかその手を触れても消えてしまう。


もう少しだけでいい…


あともう少しだけ



。。。。



起きて…。


気づけば夜になっていた。

いつも僕の傍にいた女性はいない。

名前も知らない、…

君はどこに行ってしまったのだろうか。


僕はあの日君と来た公園に来ていた。

そこに行けば君がいるかもしれないと。


現実はそんなに甘くはない。

僕は知っている。

君は言っていた。

人生は常に選択であると、…

人は常に神様のレールの上で生きているのだと…。


僕は次の日も、また次の日も学校に行った。

しかし彼女の姿は見ることは無かった。




この物語を綴る


この物語を受け入れる



oneday


…起きて。

「起きて!」

けたたましい女性の声で僕の意識は覚醒する。

「起きてって言ってるじゃん!守隆!」

僕はようやく自分が何をしていたのか理解出来た。

どうやら僕は学校の昼休みから放課後までの時間、うたた寝していたようだ。

僕の視界に映る女性は

そんな僕を起こしてくれていたようだ。

「ごめん。寝てた。」

「見りゃ分かるわよ」

教室には僕と彼女の他に人はいなかった。

教室の窓を見ると茜色に空が染まり校庭には部活動が終わり帰り支度を始める生徒が少数人見受ける。

時計の針は午後7時を回っていた。

「なんで僕を待っていたの?」


彼女は1つため息をして言う。

「何言ってるの?一緒に帰るため…でしょ?」

一緒に帰る?僕と君が?

そんな約束したっけ?

「なに、その顔…まぁいいか。」

そういうと彼女は僕の手を引いて教室を出る。



…名も知らない彼女と僕の出会いだった。


……。。


刻刻と時間が過ぎていく。

彼女は僕の手を離さない。

僕も彼女の手を離さない。


「ねぇ守隆。君は生きるってなんだと思う。

人間ってね、自分ではそのレールに外れていると思っても、神様がそうなるように仕向けてるんだって。

どんなにどんなに抗っても、私たちはその神様の記したレールからは外れることはない。」


……彼女はブランコに揺られながらそんなことを言う。

「きっと、どんな抗おうと目の前に向けられた運命からは逃れることは出来ないんだと思う。」


彼女は夜空を見ながらそんなことを呟く。

それにしても、なぜ彼女はそんなにも悲しい顔をするのだろう。



僕は喉につっかえたものを吐けないでいた。

なんなんだろう。この気持ちは。




。。。。。。

twoday


人生は常に選択である

どこかで聞いた言葉だ。

聞き慣れている訳ではないが、ココ最近の出来事…。僕はこの言葉を誰からか聞いた。


どこで聞いたのだろう。


「あら?今日は起きているのね。」


珍しいものを見たかのように僕を見ている。

「なんでだろうね。」

僕にも分からなかった。

なぜ僕は今日に限って起きているのだろうか?

僕は眠たい目を擦りながらも今日は今日だけは何とか起きていた。

時刻は午後の4時。

「ねぇ、良ければなんだけど…」

彼女は珍しく口を濁らす。

「私とデートをしない?」

デート?僕と君が?

…。





夕焼けが僕と君の頬を赤く染める。

学校の近くの裏山、そこには綺麗に澄みきった広大な畔。今還湖が一目できる。

僕らはその湖に向かい足を動かしている。


「ねぇ守隆は私のことをどう思ってる?」

僕が君のことを……どう思ってるのか?。

「私ね。君のことが大好きよ。この世界で1番君のことを大切に思ってる。

守隆。……。」

僕は彼女のことをどう思ってるのだろうか。

僕と彼女の関係は一体何なのだろう。

考えてみればとても不思議な関係と思った。

「僕はよく分からない。…でも君のことは嫌いじゃないよ。」

「そっか、それが聞けただけでも私は嬉しいよ。」


僕達は足を止めた。

水面に映る夜空はまるで、宝石のように輝いている。そして銀色に眩しく光る満月。

それも相まって、今還

湖はとても綺麗に僕の目に写った。


「私ね。もう一度この景色を守隆と見たかったんだ。」

「もう一度?」

「うん。何度も何度もそう思った。願った。」


「……。」

「私ね。この景色を見るために君と…」

頭が痛い。

突然、記憶の奥底にノイズが走った。

この景色を見るために僕と出会った?

何度も何度も願った?

彼女は何を言ってるんだ。

なんだ……彼女は……

「だからね。」

一体。…

「泣かないで……。」

誰なんだ。

「ほら、…守隆…そんな顔しないで。」

彼女の瞳からは弧を描くように涙が伝っていた。


僕も目から涙が溢れていた。

なんで、なんでこんなにも悲しい気持ちになるんだ。

僕は溢れてくる涙を手で拭いとる。


あれ?彼女は一体どこへ。

気づいたら彼女は僕の隣からいなくなっていた。

水面に映る朧月を掻き分ける感覚だ。

手を取ろう、取ろうと思ってもそれは形はない。不明瞭な僕らの関係のように。


threeday



君は昨日居なくなった。

まるでこの世界から拒絶されたかのように

しかし、彼女は消えるあの瞬間まで確かにいたんだ。


授業が終わり、今は放課後だ。

僕は机に突っ伏し項垂れている。

「前にもこんな事があったような気がする。」

思いだそうと思考を巡らす。しかし思い出そうとした瞬間、まるで南京錠が厳重に施錠されているかのように硬く閉ざされている。

昨日の出来事が鮮明に頭に思い浮かぶ。

僕は昨日行った今環湖に足を運ぶことにした。


行く途中、雨に降られてしまって。

雨粒が水面を打ち付ける。

ノイズのように鳴るその音。

何故か心地よかった。

ここにくれば何かわかる気がしたのだが僕の思い過ごしだったのだろうか。


ーーーーーーーーーーーー。





白い世界があった。

歩いても歩いても先が見えない世界に彼女は色を作った。人を作った。その人に感情を作った。

だけどその世界はいつか消えてしまう。

彼女はそれを分かっていた。

分かっていてもそれを止めることは出来ない。

なぜならその世界は彼女すらも意図せず作ってしまうのだから。

その理由もなく作り出された世界の1人の男の子『守隆』に私は恋をしてしまう。

ーーーーそんな夢。

そんな世界。



「ーーーーッ!」


白い部屋に白いベッド…いつもの光景だ。。

私は目が覚めた。

「あれ…は…夢?」

何かとても大切な夢を見ていた気がする。

1人の男の子に恋をする夢。

世界の全てを知っているかのように饒舌する私。本当は何も知らない。

そろそろ知っているはずなんてなかった。

私はずっと生まれた時から体が弱いのだから。

「……あ。」

目下から頬を伝い粒。

これは哀愁という感情だろう。

まるでそれは失恋後のもの悲しさ。…

いや……忘れたくない記憶、感情……でもそれがなんなのか分からない。

まるで君と私の不鮮明な関係……あれ?君って?

「あら。目を覚ましたのね。」

私の病室に顔を出したのは看護の筒田さんだった。

「って。泣いてるの?」

いきなり私が泣いていたので驚かせてしまったようだ。

「あっ!。…な、なんでもないです。」


「結衣さん……1人事をこれから言うから聞いててくれるかしら。」

「1人事…ですか?」

「そっ!」

私は渋々ながら承諾した。

「ここの病院はね。何年も前に湖があったのよ。…」

「湖…ですか?」

「ふっ、信じられないって顔してるわね。」

「…はい。」

「それもそう。多分結衣さんが想像してるずっと前に。ね。」

「…」

私は、黙って聞いた。

「ここの湖の名前は今環湖。よくある縁結びの…ね。」


「1人の男の子がいたそうよ。」

「男の子…。」

「そう。男の子…。その男の子は1人の女の子に恋をしたの。…女の子は一途な男の子の思いに惹かれてしまう。」


「そしてお互いの思いに気づいた2人は付き合い始めた…そして夜その湖で2人で行こうと約束した。」

「…」

「とても美しいその湖見て2人はキスをしたの。」

「ロマンチックなおなしですね。」

「女の子は泣いてしまう。

女の子は知っていたから…2人の愛は結ばれることも無いから」

「どうし…て?」

「その世界は作り物の世界だから。

そしてその作った本人が彼女だから」

「……え?」

「おとぎ話よ。」

「あっ…はい」

「いつ壊れてしまうか彼女本人ですら分からなかった世界。だから怖かった人と関わることが」

「…」

「そんな中男の子と出会ってしまって女の子は揺らいだ。」

「…」

「その揺らぎはきっと世界の崩壊をもたらすと知っていた。」

「…」

「でも1つだけ彼女は知っていたその崩壊を止められる方法を。」

「…」

「世界を…男の子を失うこと…と世界を救い自分を壊すこと…」

「…」

「女の子は男の子との愛を確かめた後に決心した。

…壊れるのは自分だと。」

「…」

何故だろう。

目から1つまた1つと涙が流れた。

この話を聞いて泣いてしまったのだろうか。

「…とまぁ終わりかな。なんてね。ただのおとぎ話よっ!ってなんで泣いているの…」

分からないっと首よ横にふった。

「感情が豊かなのねー。結衣さんは。でもねこんなのただの『夢 』の話しよ」

「うん。」

本当にそうなのだろうか。

今感じたこの感情は何なのだろうか。

どこから湧き上がって来るのだろうか。

それが分からなかった。


















時計仕掛けと君



夢を見ていた。


あの日、君と歩いた帰り道、…君を知った。


もしかしたら、もっと、ずっと前から君のことを知っていたのかもしれない。


知っている、君は世界で1番美しいことを…


知っている、君は世界で1番、脆いことを…。


それでも、だからこそ君が、…君という花が散るまでは一緒にいようと思った。



oneday


…起きて。

「起きて!」

けたたましい女性の声で僕の意識は覚醒する。

「起きてって言ってるじゃん!守隆!」

僕はようやく自分が何をしていたのか理解出来た。

どうやら僕は学校の昼休みから放課後までの時間、うたた寝していたようだ。

僕の視界に映る女性は

そんな僕を起こしてくれていたようだ。

「ごめん。寝てた。」

「見りゃ分かるわよ」

教室には僕と彼女の他に人はいなかった。

教室の窓を見ると茜色に空が染まり校庭には部活動が終わり帰り支度を始める生徒が少数人見受ける。

時計の針は午後7時を回っていた。

「なんで僕を待っていたの?」


彼女は1つため息をして言う。

「何言ってるの?一緒に帰るため…でしょ?」

一緒に帰る?僕と君が?

そんな約束したっけ?

「なに、その顔…まぁいいか。」

そういうと彼女は僕の手を引いて教室を出る。



…名も知らない彼女と僕の出会いだった。



。。。。



何故だろう。


とても懐かしい。


心が痛い。


泣く気がないのに

溢れんばかりの涙を流す。


こんな辛いのは何故だろう。

苦しいよ。


………足音が聞こえる。


行かなくちゃ。


。。。。。。




僕らは公園に向かっていた。



彼女は僕の手を離さない。

僕も彼女の手を離さない。


「ねぇ守隆。君は生きるってなんだと思う。

人間ってね、自分ではそのレールに外れていると思っても、神様がそうなるように仕向けてるんだって。

どんなにどんなに抗っても、私たちはその神様の記したレールからは外れることはない。」


……彼女はブランコに揺られながらそんなことを言う。

「きっと、どんな抗おうと目の前に向けられた運命からは逃れることは出来ないんだと思う。」


彼女は夜空を見ながらそんなことを呟く。

それにしても、なぜ彼女はそんなにも悲しい顔をするのだろう。




twoday



君はどこにいて、何を

見てるの。


どうして置いて行ってしまうの。


どうして何も言わずに居なくなっちゃうの。


君を、……。


。。。。。。



「ほら起きて!」


またか。また僕の耳にはあの彼女の声が聞こえる。

再び僕は昨日と同様に

意識が覚醒した。


「守隆はどうしてそう寝てばかりなの?」

哀しいような声で彼女は僕に問う。

「寝たいから寝るんだよ」

「守隆くん…必要でない睡眠程、無駄なことはないよ。」

睡眠は生きる上で大切なことだ。

僕は決して無駄ではないと思った。

しかし、彼女は…。

「その守隆が寝ていた時間で何ができたのか考えてみて。」

僕は思考をめぐらせた…。彼女の意図は一体なんなのかと…。

「まぁいいわ。帰りましょうか」

時計の秒針は僕の鼓動を追い越していく。

校庭に人の気配はない。





暗闇の中、街灯の光でようやく見つけた公園のベンチに僕らは腰をおろす。


「人生は常に選択の繰り返しって、言葉は聞いた事ある?」

彼女はポツリと呟く。


どこかで聞いた事のあるフレーズだった。

誰、なのか、どこで、なのか分からないが

僕は黙って頷く。


「うん。今君は私の話しに答えてくれた。

私の問いかけに答えない。という選択もあったのに。あなたは答えてくれた。

選択って言うのはね常に日頃から私たちは、行ってるの。」


彼女はなんでもないことをなにか大切な事のように僕に話してくる。


僕はそんな彼女に憧れを抱いていたのかもしれない。


。。。。。。。



threeday


。。。。。。。


ねぇどこに行くの!


手を取っても、手を取っても、君の手を取ることは出来なかった。


手探りで、僕は不器用ながらも何とかその手を触れても消えてしまう。


もう少しだけでいい…


あともう少しだけ



。。。。



起きて…。


気づけば夜になっていた。

いつも僕の傍にいた女性はいない。

名前も知らない、…

君はどこに行ってしまったのだろうか。


僕はあの日君と来た公園に来ていた。

そこに行けば君がいるかもしれないと。


現実はそんなに甘くはない。

僕は知っている。

君は言っていた。

人生は常に選択であると、…

人は常に神様のレールの上で生きているのだと…。


僕は次の日も、また次の日も学校に行った。

しかし彼女の姿は見ることは無かった。




この物語を綴る


この物語を受け入れる



oneday


…起きて。

「起きて!」

けたたましい女性の声で僕の意識は覚醒する。

「起きてって言ってるじゃん!守隆!」

僕はようやく自分が何をしていたのか理解出来た。

どうやら僕は学校の昼休みから放課後までの時間、うたた寝していたようだ。

僕の視界に映る女性は

そんな僕を起こしてくれていたようだ。

「ごめん。寝てた。」

「見りゃ分かるわよ」

教室には僕と彼女の他に人はいなかった。

教室の窓を見ると茜色に空が染まり校庭には部活動が終わり帰り支度を始める生徒が少数人見受ける。

時計の針は午後7時を回っていた。

「なんで僕を待っていたの?」


彼女は1つため息をして言う。

「何言ってるの?一緒に帰るため…でしょ?」

一緒に帰る?僕と君が?

そんな約束したっけ?

「なに、その顔…まぁいいか。」

そういうと彼女は僕の手を引いて教室を出る。



…名も知らない彼女と僕の出会いだった。


……。。


刻刻と時間が過ぎていく。

彼女は僕の手を離さない。

僕も彼女の手を離さない。


「ねぇ守隆。君は生きるってなんだと思う。

人間ってね、自分ではそのレールに外れていると思っても、神様がそうなるように仕向けてるんだって。

どんなにどんなに抗っても、私たちはその神様の記したレールからは外れることはない。」


……彼女はブランコに揺られながらそんなことを言う。

「きっと、どんな抗おうと目の前に向けられた運命からは逃れることは出来ないんだと思う。」


彼女は夜空を見ながらそんなことを呟く。

それにしても、なぜ彼女はそんなにも悲しい顔をするのだろう。



僕は喉につっかえたものを吐けないでいた。

なんなんだろう。この気持ちは。




。。。。。。

twoday


人生は常に選択である

どこかで聞いた言葉だ。

聞き慣れている訳ではないが、ココ最近の出来事…。僕はこの言葉を誰からか聞いた。


どこで聞いたのだろう。


「あら?今日は起きているのね。」


珍しいものを見たかのように僕を見ている。

「なんでだろうね。」

僕にも分からなかった。

なぜ僕は今日に限って起きているのだろうか?

僕は眠たい目を擦りながらも今日は今日だけは何とか起きていた。

時刻は午後の4時。

「ねぇ、良ければなんだけど…」

彼女は珍しく口を濁らす。

「私とデートをしない?」

デート?僕と君が?

…。





夕焼けが僕と君の頬を赤く染める。

学校の近くの裏山、そこには綺麗に澄みきった広大な畔。今還湖が一目できる。

僕らはその湖に向かい足を動かしている。


「ねぇ守隆は私のことをどう思ってる?」

僕が君のことを……どう思ってるのか?。

「私ね。君のことが大好きよ。この世界で1番君のことを大切に思ってる。

守隆。……。」

僕は彼女のことをどう思ってるのだろうか。

僕と彼女の関係は一体何なのだろう。

考えてみればとても不思議な関係と思った。

「僕はよく分からない。…でも君のことは嫌いじゃないよ。」

「そっか、それが聞けただけでも私は嬉しいよ。」


僕達は足を止めた。

水面に映る夜空はまるで、宝石のように輝いている。そして銀色に眩しく光る満月。

それも相まって、今還

湖はとても綺麗に僕の目に写った。


「私ね。もう一度この景色を守隆と見たかったんだ。」

「もう一度?」

「うん。何度も何度もそう思った。願った。」


「……。」

「私ね。この景色を見るために君と…」

頭が痛い。

突然、記憶の奥底にノイズが走った。

この景色を見るために僕と出会った?

何度も何度も願った?

彼女は何を言ってるんだ。

なんだ……彼女は……

「だからね。」

一体。…

「泣かないで……。」

誰なんだ。

「ほら、…守隆…そんな顔しないで。」

彼女の瞳からは弧を描くように涙が伝っていた。


僕も目から涙が溢れていた。

なんで、なんでこんなにも悲しい気持ちになるんだ。

僕は溢れてくる涙を手で拭いとる。


あれ?彼女は一体どこへ。

気づいたら彼女は僕の隣からいなくなっていた。

水面に映る朧月を掻き分ける感覚だ。

手を取ろう、取ろうと思ってもそれは形はない。不明瞭な僕らの関係のように。


threeday



君は昨日居なくなった。

まるでこの世界から拒絶されたかのように

しかし、彼女は消えるあの瞬間まで確かにいたんだ。


授業が終わり、今は放課後だ。

僕は机に突っ伏し項垂れている。

「前にもこんな事があったような気がする。」

思いだそうと思考を巡らす。しかし思い出そうとした瞬間、まるで南京錠が厳重に施錠されているかのように硬く閉ざされている。

昨日の出来事が鮮明に頭に思い浮かぶ。

僕は昨日行った今環湖に足を運ぶことにした。


行く途中、雨に降られてしまって。

雨粒が水面を打ち付ける。

ノイズのように鳴るその音。

何故か心地よかった。

ここにくれば何かわかる気がしたのだが僕の思い過ごしだったのだろうか。


ーーーーーーーーーーーー。





白い世界があった。

歩いても歩いても先が見えない世界に彼女は色を作った。人を作った。その人に感情を作った。

だけどその世界はいつか消えてしまう。

彼女はそれを分かっていた。

分かっていてもそれを止めることは出来ない。

なぜならその世界は彼女すらも意図せず作ってしまうのだから。

その理由もなく作り出された世界の1人の男の子『守隆』に私は恋をしてしまう。

ーーーーそんな夢。

そんな世界。



「ーーーーッ!」


白い部屋に白いベッド…いつもの光景だ。。

私は目が覚めた。

「あれ…は…夢?」

何かとても大切な夢を見ていた気がする。

1人の男の子に恋をする夢。

世界の全てを知っているかのように饒舌する私。本当は何も知らない。

そろそろ知っているはずなんてなかった。

私はずっと生まれた時から体が弱いのだから。

「……あ。」

目下から頬を伝い粒。

これは哀愁という感情だろう。

まるでそれは失恋後のもの悲しさ。…

いや……忘れたくない記憶、感情……でもそれがなんなのか分からない。

まるで君と私の不鮮明な関係……あれ?君って?

「あら。目を覚ましたのね。」

私の病室に顔を出したのは看護の筒田さんだった。

「って。泣いてるの?」

いきなり私が泣いていたので驚かせてしまったようだ。

「あっ!。…な、なんでもないです。」


「結衣さん……1人事をこれから言うから聞いててくれるかしら。」

「1人事…ですか?」

「そっ!」

私は渋々ながら承諾した。

「ここの病院はね。何年も前に湖があったのよ。…」

「湖…ですか?」

「ふっ、信じられないって顔してるわね。」

「…はい。」

「それもそう。多分結衣さんが想像してるずっと前に。ね。」

「…」

私は、黙って聞いた。

「ここの湖の名前は今環湖。よくある縁結びの…ね。」


「1人の男の子がいたそうよ。」

「男の子…。」

「そう。男の子…。その男の子は1人の女の子に恋をしたの。…女の子は一途な男の子の思いに惹かれてしまう。」


「そしてお互いの思いに気づいた2人は付き合い始めた…そして夜その湖で2人で行こうと約束した。」

「…」

「とても美しいその湖見て2人はキスをしたの。」

「ロマンチックなおなしですね。」

「女の子は泣いてしまう。

女の子は知っていたから…2人の愛は結ばれることも無いから」

「どうし…て?」

「その世界は作り物の世界だから。

そしてその作った本人が彼女だから」

「……え?」

「おとぎ話よ。」

「あっ…はい」

「いつ壊れてしまうか彼女本人ですら分からなかった世界。だから怖かった人と関わることが」

「…」

「そんな中男の子と出会ってしまって女の子は揺らいだ。」

「…」

「その揺らぎはきっと世界の崩壊をもたらすと知っていた。」

「…」

「でも1つだけ彼女は知っていたその崩壊を止められる方法を。」

「…」

「世界を…男の子を失うこと…と世界を救い自分を壊すこと…」

「…」

「女の子は男の子との愛を確かめた後に決心した。

…壊れるのは自分だと。」

「…」

何故だろう。

目から1つまた1つと涙が流れた。

この話を聞いて泣いてしまったのだろうか。

「…とまぁ終わりかな。なんてね。ただのおとぎ話よっ!ってなんで泣いているの…」

分からないっと首よ横にふった。

「感情が豊かなのねー。結衣さんは。でもねこんなのただの『夢 』の話しよ」

「うん。」

本当にそうなのだろうか。

今感じたこの感情は何なのだろうか。

どこから湧き上がって来るのだろうか。

それが分からなかった。





































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