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トラと三毛は世界を救う

作者: アサガオ成長日記

私は三毛さんと出会いましたが、挨拶なんてしませんでした。

三毛さんはご近所さんです。

でも親しくなんてなかったんです。

三毛さんを無視して、お母さんの後から車に乗りました。


お母さんの買い物が終わりました。

窓を向き、お外の景色を眺めていると、いつの間にかお家の前の通りでした。

とても驚いたことに、三毛さんが表の通りで私を見つめています。

私の帰りを待っていたのかな。


停車した車から降りると、三毛さんが私に向かって勢いよく走ってきます。

やっぱり私に用があるんだ。

親しくないからって、無視したことを怒っているのかもしれない。


謝った方がいいのかな。

三毛さんは、私を睨んでいます。

今にも飛びかかってきそうな勢いで睨んでいます。


きっと、挨拶をしなかったことを怒っているんだ。

でも、怖くなってしまった私は、お母さんの開けた玄関のドアに潜り込んでしまいました。

だって、睨まれるのも、怒られるのもイヤだったから。


次の日のお昼過ぎ、お外から、戦争の声が聞こえてきました。

私の友達、とらの戦争の声です。

もしかしたら、三毛さんと戦っているのかもしれません。




三毛さんは、もともとここに住む民です。

トラは、私と一緒に、最近ここに越してきた民です。


私とトラが越してきて、三毛さんの生活は、今までと少し、違うものになってしまったのかもしれません。

三毛さんは、今までと全く同じ生活を送りたいのかもしれません。


そんな三毛さんのことを、私は知っていたんです。

それなのに私は、三毛さんを無視したり、逃げてしまったりしたのです。


でも、私もトラもいつの間にか、この新しいお家に住んでいたのです。

三毛さんを怒らせるつもりなんて無かったのです。


私は立ち上がりました。

どうしたら良いのかは分かりません。

ただ、トラと三毛さんが戦争するなんて良くないことだと思いました。

だって、戦争はダメって、大人達がみんな言っているからです。

私は外に飛び出しました。


私は友達のトラに、

「ちょっと待っててね」

と言いました。

そうして、三毛さんにきちんと挨拶をするために、そぉっと歩み寄りました。


「三毛さん、三毛さん。

はじめまして、トラの友達です。

三毛さんはどうしてトラと戦争をするの?」

「勝手に君達がテリトリーに入ってきたからだよ」

「そうだよね、ごめんね。

でも私もトラも、いつの間にか、ここに住んでいたんだよ。

三毛さんのテリトリーだなんて、お母さんは言ってなかった」

「人間はみんなそうだよ。勝手に先住の民のテリトリーを侵略するんだよ」

「じゃぁ、お母さんが悪いの?」

「そうではないと思うよ。お母さんにはお母さんの事情があったんだと思う」

「難しくてよく分からない」


三毛さんは、少し困った顔をして、下を向いてしまいました。


「三毛さんは、トラと友達にならないの?」

「それは難しいね。テリトリーを守るのは大切な仕事だから」

「でも、みんなで仲良くなった方が楽しいと思うの」

「君の友達、トラくんにも聞いてみるといい」


私は、少し悲しくなってしまいました。

後ろで待っているトラを見つめます。

そうして、トラにも尋ねます。

「トラは三毛さんと戦争を続けるの?」

「戦争をしたい訳ではないけれど。でもね、新しい地でテリトリーを確保しなければいけないの」


私はとても悲しい気持ちになりながら、三毛さんに向き直ります。

「これからも、二人は戦争を続けるの?」

「テリトリーを守ることは、生きることだから」


これでは、仲良くなるのは難しそうです。

私は三毛さんに

「分かった」

とだけ伝え、しょぼんとしてしまいました。


テリトリーを守ることは生きること。

三毛さんはそう言っていました。

私のテリトリーはお母さんが決めているのかな。

本当は、自分で確保しないといけないのかな。




夕飯を食べ終えた後のリビングには、テレビがついていました。

戦車の映像が写っています。

お母さんは

「また紛争が始まってしまったのね」

と言っています。


私の知らない国の戦争の話のようですが、私には難しくて良く分かりませんでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アサガオ成長日記さま、作品を見させて頂きました! 自分の家にはとある事情で猫と犬が多くおり、猫も沢山います。その関係で猫の生活を良くみますが、彼らは毎日ケンカするのです。理由は良く若いませ…
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