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"超越"のチートで異世界を征く  作者: ネツアッハ=ソフ
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湖の土地神

 とりあえず、このシャンバラ世界に来てから数時間の時が経過した。俺とアイは未だ樹海の中だ。


 「ねえ、龍。本当にこっちで良いんですか?」


 「ああ、確かこっちにあった筈・・・」


 「・・・何が?」


 それは今は秘密だ。実は空から落下する時にあるモノが見えたから、現在其処を目指している。


 確か、こっちの方角にあと少し歩いた所にあった筈。俺の方向感覚に間違いはない。


 ・・・時刻はそろそろ夕刻に差し掛かる頃だ。さて、そろそろ見えてくる筈・・・。


 「見付けた」


 其処には、一面綺麗な湖があった。非常に透明度が高く、底まで見える程に澄み渡っている。


 「わぁっ・・・」


 アイもすぐに、この光景を気に入った様だ。夕刻の湖に見入っている。


 「ああ、やはり来て良かった・・・」


 綺麗な湖を見詰め、微笑むアイの姿は一枚の絵画の様だった。とても綺麗で、美しい。


 そっと、アイの肩を抱き寄せる。アイも黙って身体を寄せてくる。ああ、良い景色だ。


 この世界に来て良かった。心の底から、俺はそう思った。


 直後、背後で何者かの気配がしたので振り返った。・・・すると、其処には着物風の服を着た薄紫の短髪の少年が居た。


 着物、ではなく着物風だ。あと、少年と言ったが気配から人間ではないのは明らかだろう。


 「・・・誰だ?」


 「土地神だね。土地を守る下級の神だよ」


 どうやら、この少年は土地の守護者らしい。土地神は首を傾げながら、龍とアイを見ている。


 「何故、神と人が一緒に居る?」


 ふむ、どうやらそれが不思議だったらしい。・・・神と人とは基本、あまり接触を取らない物と考えているのだろう。確かに、俺もアイ以外の神は見た事が無いがな。


 「恋仲というやつだよ、要は・・・」


 俺は出来る限り、堂々とした態度でそう良い放った。俺の隣ではアイが真っ赤な顔で俯いている。


 ・・・やはりかわいいな。


 「ほう?」


 土地神は目を鋭く細める。その瞳に、剣呑(けんのん)な光が灯る。


 ・・・闘争の雰囲気(ふんいき)か。


 俺は意識を戦闘用に切り替える。そんな俺を見て、土地神はにやりと笑う。


 「ふむ。中々面白いな、お前」


 「そいつはどうも・・・」


 依然、闘争の空気は消えない。ぴりぴりと空気が緊張している。その空気を察してアイが慌てる。


 「ちょっ!龍!!」


 「大丈夫だ、アイ」


 アイの頭を軽く撫でて、前に出る。恐らく、今の俺は不敵に笑っているだろう。


 土地神も笑みを浮かべている。さて、今の俺の実力で神を相手に何処までいけるか。


 刹那、土地神の背後に水流の嵐が発生した。激しい水の嵐は渦を巻き、周囲の木々を薙ぎ倒す。


 その力は正に、この湖の土地神に相応(ふさわ)しい力だろう。


 水の嵐が俺に襲い掛かるのと、俺が駆け出すのは同時だった。


 激しい水流は渦となり呑み込んだ物を細かく砕いていく。巻き込まれたら只では済まないだろう。


 俺はその大嵐の中を駆け抜けていく。嵐と嵐、渦と渦の僅かな隙間を縫う様に駆け抜けていく。


 一瞬でも迷いを見せればたちまち嵐に呑まれるだろう。だからこそ、俺は一切迷わず駆け抜ける。


 「ぬうっ」


 土地神が僅かに呻く。俺は腕を引き絞り、思いっ切り殴り掛かる。


 土地神は自らを中心に、水流を渦巻かせて拳を防ぐ。しかし、俺は殴った衝撃を水流の内側に浸透させて土地神に届かせた。


 「ぐっ!!」


 水流の渦は弾け、土地神は吹っ飛んでいく。俺は土地神が吹っ飛ぶと同時に駆け出す。


 この程度で土地神が倒れる筈がない。事実、再び俺に嵐が襲い掛かってきた。


 俺は襲い来る大嵐の中を駆け抜けた。


 ・・・・・・・・・


 夜空には満天の星が輝いていた。そんな中、湖では笑い声が響いていた。


 無論、笑い声の主は俺と土地神である。


 「はははっ!お前も中々やるじゃねえか!」


 「はっはっはっ!土地神こそ、中々強いじゃないか!」


 「くはっ、当たり前だ!俺だって下っ端とはいえ、神だぞ!」


 そう言い、一人と一柱はお供え物の御神酒(おみき)を飲み、大笑いしている。アイは既に夢の中だ。


 あの後、結局俺と土地神は決着が付かなかった。最後はアイが止めに入り、呆気なく終了する。


 アイが若干泣きそうになっていた為、流石の俺と土地神も少しは反省した。まあ、少しはな。


 それと、土地神が俺に喧嘩を吹っ掛けた理由は単に俺に興味を持ったかららしい。おいおい。


 それを聞いた時は、流石に呆れ果てた。


 「で、だ・・・。お前はどうやってあの女神と出合ったんだ?」


 「・・・唐突だな、おい。まあ・・・十歳の頃に偶然、夢を通して神界に迷い込んだんだよ」


 「・・・・・・・・・マジかよ。偶然とはいえ、神界に迷い込むか普通?」


 土地神は呆然とした顔になっていた。その顔が面白くて、つい吹き出す。


 お?土地神が不快そうに顔を歪めたな。


 「・・・何だよ」


 「くっくく、いや別に・・・気にするな・・・」


 そう言い、俺は笑いを押し殺す。土地神はまだ不服そうだ。まあ、そろそろ良いか。


 「それにしても、あの水流の嵐は凄いな。俺も出来たら良いんだが・・・」


 「ん?お前なら、それくらい造作もない筈だが?」


 「・・・は?」


 マジ?え、出来るの?


 俺は思わず、土地神を二度見した。あんな出鱈目な奇跡(きせき)が、俺にも使えるのか?


 恐らく、今の俺は間抜けな顔をしているだろう。それくらい呆然としていた。


 その顔に気を良くしたのか、土地神はくつくつと笑っている。


 「くっくく、まあお前も魔術を使えば、これくらい造作もないだろう」


 「・・・魔術」


 魔術か・・・。まあ、神が居るんだし、あってもおかしくはないか。


 俺は頭の中で、無理矢理そう納得した。


 「・・・で、その魔術とやらは俺にも使えるのか?」


 「ああ、才能にもよるがお前も問題無く使える筈。まあ、まずは体内の魔力を感じる事からだな」


 魔力?またオカルトチックな・・・。


 それから土地神が懇切丁寧(こんせつていねい)に説明してくれた。


 「魔力、或いはマナは人間の身体の中を循環する生命エネルギーの事だ。人間以外にも、あらゆる生物や星にも宿っている」


 「星とはスケールがでかいな。要はあれか?生物や自然を育むエネルギーの事か?」


 「まあ、そういう事だ」


 この時、俺はある事を思い出していた。大学の研究レポートだ。


 俺は大学で、人間を含めたあらゆる生物の体内や星を循環する特殊なエネルギーを研究していた。


 俺はそれを単に生命エネルギーと呼んでいたが、どうやら魔力(マナ)と呼ぶらしい。


 「魔力を思考により制御し、神の起こす奇跡を人の手で再現したのが魔術だ」


 「ふむ、なら・・・」


 俺は自身の体内に意識を向ける。体内を循環する様に流れる生命エネルギー、それを思考で制御しその流れを意図的に操る。そして―――


 俺は掌を湖に向けた。


 『渦巻け』


 湖の水は渦を巻き、水の竜巻を形成した。


 「・・・出来た」


 「ほおっ、これは中々」


 まさか、本当に出来るとは思わなかった。流石の俺も呆然とする。


 「何ですか、これ!?え?もしかしてこれは龍がやったのですか!?」


 背後からの声に、俺と土地神は振り返る。其処にはきょとんっとした顔のアイが居た。


 どうやら目を覚ましたらしい。


 「えーっと、もしかして魔術を覚えたんですか?」


 「あ、ああっ・・・。そうだな」


 俺は苦笑する。まあ、流石に説明しなきゃいけないよな。そう思ったら苦笑するしか無かった。


 やれやれ―――


 ・・・・・・・・・


 次の日、08:00頃―――


 「ふぁっ」


 俺は今、猛烈に眠気と戦っていた。正直、かなり眠い。


 結局、あれから早朝までずっと俺は事情を説明していた。お陰であんまり寝ていない。ふぁっ。


 「すいません、私のせいで・・・」


 「いや、別に良いよ・・・」


 かなり眠たい。今にも寝てしまいそうだ・・・ぐうっ。


 「龍!?寝てますよ!!」


 「おっと、失礼・・・」


 うむ、眠たい。


 「おいおい、大丈夫かよ・・・」


 「大丈夫じゃない・・・。眠たい・・・」


 土地神の言葉に、ぼんやりとした声で答える。いや、マジで眠たい。もう・・・無理・・・。


 暗転。


 一時間後、再び目を覚ました俺はようやく完全に覚醒した。ああ、眠たかった。


 「じゃあな、俺達はそろそろ行くから」


 「おう!ではな」


 そう言って、俺とアイは湖を離れた。

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