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"超越"のチートで異世界を征く  作者: ネツアッハ=ソフ
10/11

マヤの想い

 目を覚ますと、既に夜になっていた。部屋の窓からは夜空に星が輝いている。どうやら、俺はずっと眠り込んでいたらしい。


 「ん、目を覚ましました?」


 傍で本を読んでいたらしく、アイが本をぱたんっと閉じる。薄っすらと微笑みながら寝ている俺の額を優しく撫でる。心地良い温もりがじんわりと伝わってくる。


 「アイ、今は何時だ」


 「今の時間は丁度、20:00を過ぎた所ですね」


 「・・・・・・そうか」


 どうやら、随分(ずいぶん)と眠っていたらしい。まあ、最近は本気を出すのも久し振りだったからな。


 恐らく、体力に限界が来たんだろう。まだまだ俺も未熟(みじゅく)だな。


 もっと鍛えなければ。俺はこんな限界など認めない。


 「それは違うよ」


 「ん?」


 突然のアイの言葉に、俺は首を傾げる。見ると、アイは真剣な瞳で俺を見ていた。


 「今、自分の事を未熟だと思っていたでしょ?」


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 「アレは貴方の限界では無いよ。むしろ、限界を超えて動き続けた反動の様な物だね」


 「・・・・・・そうか」


 限界を超えて動き続けた反動、ね。けど。しかし・・・。


 あの程度で反動が来るようでは駄目だ。やはり、それは俺にとって限界と同じなんだよ。


 もっと、強くなりたい。こんな限界など、俺は認めたくない。もっともっと遥か高みへ。


 そんな俺の想いを察したらしく、アイは寂しげに笑った。そっと、俺を抱き締める。


 「大丈夫。貴方はこれからもっともっと、無限に成長していく」


 そう言い、俺を抱き締める手で優しく頭を撫でた。大丈夫だと。子供をあやす様に。優しげに。


 「ああ、そうだな・・・」


 俺はこんな所では止まれない。止まらない。止まる訳にはいかない。


 だから、俺は決して諦めない―――


 ・・・・・・・・・


 20:59―――


 アイが部屋を出てしばらく。現在、部屋には俺一人だけだ。


 先程まで寝ていた為、いまいち眠くない。さて、どうした物か・・・。


 と、考え事をしていたらドアをノックする音が部屋に響いた。・・・誰だ?


 「ドラクル、私です。マヤです」


 ドアの向こうからマヤの声が響いた。ふむ?声が若干、緊張(きんちょう)している?


 怪訝に思いながら、俺はドアを開ける。んんっ?俺は硬直した。


 其処には薄いネグリジェにカーディガンを羽織ったマヤが居た。またこのパターンか。俺は痛む額を押さえて左右に振った。嗚呼、頭が痛い。


 「マヤ、君もうら若い女の子なんだから、もっと自分を大切にしろよ」


 「理解しています。けど、それでも私は―――」


 「・・・・・・・・・・・・とりあえず、中に入れ」


 俺はマヤを部屋の中に入れた。別にやましい気持ちは無い。こんな所、誰かに見られたら何を言われるか解らないからだ。だからな、マヤも頬を赤らめるのを止めろ。


 と、言う訳で俺の部屋の中。俺とマヤはベッドに並んで座っている。マヤは頬を赤く染め、しきりに俺をちらちらと目の端で見ている。


 はぁっ、と俺は溜息を一つ吐いた。


 「そんなに俺の事が諦められないか?そんなに俺を想ってくれていると?」


 「・・・・・・はい」


 「そうか―――」


 瞬間、俺の中で何か暗い感情が湧き出し、(あふ)れた。


 「―――んっ、んむっ!!?」


 マヤの唇を奪った。荒っぽく、(むさぼ)る様なキスにマヤは目を大きく見開く。


 そのまま、マヤをベッドに押し倒す。ベッドにマヤを押さえ付け、執拗に唇を貪る。


 胸に手を這わせ、乱暴に()みしだく。


 ・・・しばらくすると、抵抗が薄くなってくる。唇を離すと、目の前にはぐったりとベッドに身を預けたマヤの姿が。とろんっとした瞳で俺を見詰める。


 「解るか?誰かを愛するという事は、愛し合うという事は、つまりこういう事もあるという事だ」


 お前に、マヤにその覚悟があるか?そう、俺は問う。


 俺は、俺達は何時かこの村を出ていく。マヤを連れて行く事は出来ない。出来れば、マヤには俺の事を諦めて欲しいと思っている。俺の事は諦めて、マヤには幸せになって欲しいと。


 だから―――


 「私は・・・」


 マヤはそれでも、何かを覚悟した様な瞳で俺を見る。そっと、俺の頬にその手で触れる。


 「私はそれでも、ドラクルの事を愛しています」


 「・・・・・・・・・っ」


 マヤのその顔は優しげに微笑んでいた。たとえ何があろうと、たとえ何れ別れる事になろうと、それでも俺の事を愛しているとマヤは言った。


 その言葉に、覚悟の程に俺は目を見開いた。どうやら、俺は読み違えていたらしい。


 マヤは本当に俺を愛していたのだ。心の底から(した)っていたのだ。悲しいまでに純粋に。


 「私の事を愛してとは言いません。只、私に貴方の居た証を下さい」


 そう言って、マヤは花の咲く様な笑顔を見せた。


 愛して欲しいとは言わない。愛されたいとは言わない。只、証が欲しい。そうマヤは言った。


 それを聞いて、俺はふっと笑みを浮かべる。


 「ごめん、ありがとう。マヤ」


 俺の言葉に、マヤは小首を傾げる。そんなマヤを、俺は真っ直ぐ見据えて言った。


 「お前の事を愛している」


 「―――っ!?」


 マヤは目を見開いて驚愕した。けど、俺は本気だ。本気でマヤを愛している。


 これほど誰かを好きになったのは、アイを除いてマヤしか居ないだろう。


 「この村に居る間だけで良い。俺の傍に居て欲しい」


 「・・・・・・・・・・・・はいっ」


 マヤは瞳を涙で(うる)ませ、それでも弾ける様な笑顔で頷いた。

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