プロローグ
全てを超越したい。それが俺こと竜道=龍の願望だった。
唯、限界を超えたいとそう願った。これが自分の限界だと、人間の限界だと、生物の限界だと膝を折りたくない。
そう言って、俺はあらゆる学問を修めた、芸術を修めた、武術を修めた、技能を修めた、英知の数々を修めた。
様々なジャンルに手を出し、壁にぶつかる度にそれを乗り越え、努力を続けてきた。
だが、それでも俺は満足しない。こんな程度じゃ満足しない。
まだこんな物じゃない、まだ足りない、こんな限界など認めない、もっともっとと。唯、限界を超える事だけを考え、求め続ける。
そんな俺を、周囲の奴は怪物と呼んだ。誰もが俺を怪物と呼び、恐れた。
そんな俺が今、道端で血を流して倒れている。闇討ちだった。
夜、コンビニでビールとおつまみを買った帰り、人通りの少ない道で複数人に囲まれ、鉄パイプで暴行を受けた。まあ、大体八人くらいは返り討ちにしたが・・・。
それに犯人は解っている。大学の教授だ。
まあ、大方俺の研究成果を盗もうとでも考えたのだろう。欲深な教授らしい事だ。
だが残念。俺の研究成果のレポートは、唯一信頼の置ける友人に預けてある。彼なら安心して任せられるだろう。
そろそろ眠くなってきた。
俺はこんな所で死ぬのか。・・・こんな限界、認めたくないなぁ。・・・まあ、後は来世でがんばるか。
おやすみ―――
・・・・・・・・・
「・・・きてっ。・・・きて下さい。・・・お願いですから・・・起きて下さいよぅ・・・龍」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
泣き声が聞こえる。女性の声、俺の名を呼んでいる。一体誰だ?
ゆっくりと目を開くと、其処は暖かな光の射す白い空間だった。目の前には流れる様な金髪を肩まで伸ばした、翠の瞳に透ける様な瑞々しい肌、ゆったりとした純白の衣服を着た美女が居た。
その美女が涙を流しながら、俺を見詰めている。
「・・・えっと?」
「目を覚ましましたか?」
金髪の美女が涙を流しながら、問い掛けてくる。・・・というか、この女性と何処かで会った気がする?
・・・うーん、思い出せない。
「あ、ああ・・・、此処は何処だ?それとお前は?」
「此処は神界、私の名前はアイ、女神アイです」
アイ―――
その名を聞いて思い出す。子供の頃、夢の中で度々会った小さな女神様。そういえば、その夢の中でも白い空間だった。
「アイ、あの時の女神様?」
「っ!!」
瞬間、アイが勢い良く俺に抱き付き、堪え切れずに大泣きした。同時にふくよかな胸の膨らみが俺の胸に押し付けられる。
・・・不謹慎だが、柔らかくて気持ちが良い。
とまあ、取り敢えず泣きじゃくるアイの頭を撫で、宥め続ける。
これが、俺と女神アイとの再会だった。




