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女子高生ちゃんと俺

作者: さち
掲載日:2017/04/28

久々となる恋愛ものです。

こんなバイト帰りがあればいいなと、自分の妄想が強く反映されている作品となっています。


良かったら最後まで読んでください。

「お疲れ様です」


­­ ­­やる気の無い声で先輩に挨拶をすると、俺は休憩室に戻った。


 コンビニでのバイトを始めて三ヶ月。早くも辞めたくて仕方が無い。マニュアル通りの返答と愛想笑い。何故あんなことをしなくてはならないのか、さっぱり理解出来ない。俺には接客が向いていないようだ。


「あ、先輩お疲れ様です」


 休憩室の扉を開けると、可愛らしい声が俺に向けられた。俺と同じ時刻に上がる後輩の女子高生ちゃんだ。人懐っこい性格なのか、皆に愛想がいい。大学二年で彼女もいない、冴えない男の代名詞の様な俺にでさえ話し掛けてくれる、よく出来た子だ。


「お疲れ様。珍しいね今日入ってるなんて」


「阿部さんが体調不良で急遽出れなくなって、店長から「出れないか?」って電話が来たんですよ」


「あー、だから今日阿部さんいなかったのか」


「もしかして今気付いたんですか?ひどいですよー」


 そう言ってクスッと笑った姿は、彼女の魅力の一つだ。




 ロッカーに入れた荷物を取り出し、休憩室に戻ると学校の制服に着替えた女子高生ちゃんが困った顔で携帯を眺めていた。あまりにも深刻そうな顔をしていたので、思わず声を掛けてしまった。


「どうしたの?帰らないの?」


「いや・・・、今日途中から雨降ってきたじゃないですか。私雨が降るって知らなくて傘持ってきてなくて・・・親に電話しようと思ったんですけど携帯の充電も無くて・・・傘を買うにも今日お財布を家に忘れてきてまして・・・」


 元からそういう子なのか、たまたまついてないだけなのか、不憫な話である。


「なんか色々重なったね」


「そうなんですよ・・・どうしよう・・・」


 俺の通勤手段は徒歩だ。家からここまでたいした距離でもないので、いつも歩いて来ている。女子高生ちゃんも同じだった気がする。それに幸い俺には先週から置きっぱなしの傘がある。雨が降っていようが関係の無い話だ。だからこそ、俺が次に発した言葉に自分で驚いた。


「だったら俺傘あるし、入ってく?」


「ええっ?!本当ですか?!」


 目を丸くして驚いているが、俺が傘を持っていた事がそんなに珍しかったのか。


「確か、家同じ方面だよね?」


「そうですよ!覚えてくれてたんですね!」


 やけに興奮しているが、どうしたのだろうか。どうしても見たいドラマでもあるのだろうか。そういえば、今日から放送のドラマの録画を忘れていた事に、今になって気づいた。まだ五分しか経ってないし、間に合うだろう。


「そりゃ一応覚えてるよ。何度か俺にそう言ってたしね」


 流石に詳しい場所まで覚えていないが、家が近くであることくらいは俺でも覚えている。


「遅くなって親に迷惑かけちゃ悪いから、帰ろっか」


「はい!」


 嬉しそうに微笑む彼女と共に、俺は店を出た。




「先輩って、バイトが無い日とか何してるんですか?普段そういう話しないじゃないですか?」


 俺が右手で持つ傘は、二人が入るには少し狭く、それでも女子高生ちゃんが濡れては困ると自然と距離が近くなっていた。


「何って、特に何もしてないよ。別に趣味とかもないし、出掛ける友達とかもいないしね」


 それほど強い雨ではないが、傘を刺さずに歩けばびしょ濡れになるくらいの雨脚だ。




 女子高生ちゃんがうちのバイト先に入ったのは、俺が入った二週間後の事で、俺の次に入ったという事もあり、仕事は全て俺が教えていた。器量のいい彼女は俺よりも早く仕事を覚え、俺よりも仕事仲間と仲良くなっていた。口うるさいお昼のおばさんや、たまにしか入らないフリーターの人とも嫌な顔せず一緒に働いている。


 俺には不思議でしょうがない。何故ああも楽しそうに仕事が出来るのか。常に笑顔で、要領もよく、年下とは思えないくらい人として出来ている、そんな彼女が何故、俺の様な男と一緒に帰っているのか。改めて思えば不思議な話である。


 なんとなく、ただ家から近いという理由で今のコンビニでバイトを始めたが、今の俺の頭の中には他のバイト先の候補がちらほら浮かび上がっている。別にあの場所に拘る理由が俺にはない。


「えー、そんなのつまらなくないですか?どっか出掛けたりとかしないんですか?」


 「つまらない」か。昔から事あるごとに言われている言葉だ。最初はその言葉にいらつきもしたが、今ではその通りだと納得している自分がいる。何せ、否定できる要素が見当たらないのだから。


「出かける理由が無いしね。それに出掛ける友人がいないって言ったでしょ」


 気が付けば家の近くまで来ていた。女子高生ちゃんの家もこの近くなのだろう。そう思い、家の場所を尋ねようとした時、一台の車が前からやって来た為、女子高生ちゃんの顔がヘッドライトで照らされていた。それまで良く見えていなかった表情がはっきりと見える。


「だったら、私と一緒にどっか出掛けませんか?私行きたいところいっぱいあるんです」


 車が俺達を通過する僅かな時間、俺が見た彼女の顔はこれまで誰にも見せていなかった表情をしていた。


「あ、私の家ここなのでここで大丈夫ですよ!今日はありがとうございました。また土曜日頑張りましょうね!」


 そう言って笑顔で手を振ると、目の前の家に駆けていった。




 女子高生ちゃんの家の斜め向かいに建つアパートの自室に戻った俺はスケジュール帳を開く。そこにはすっかり忘れていた予定が書き込まれていた。


「あ、次の土曜日シフト入ってる」


 今のバイト先を辞めるかどうかは、次の土曜日に声を掛けてから考えようと、冷蔵庫の缶ビールに手を伸ばしながら思った。

今回の作品もTwitter企画の「リプで来た3つのお題で小説書きます」できたお題「バイト」「帰り道」「女子高生」で書いたものです。

実はこの企画結構好きで、不定期でやっています。気になる方は、自分のTwitterアカウントへリプください。

次のお題もお楽しみに。

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