ヒーロースーツ、その驚愕の性能
「俺のヒーローネームは後でいくらでも考えられますのでいいですよ今は。」
「そうか、まあ好きにせい。・・・重装ビーカンダーというのはどうじゃろう?」
「メタルヒーローシリーズ好きだなぁあんた。」
「博士、もしくはドクと呼べ!」
「えぇ・・・」
ドク・・・
未来に戻らなくちゃいけなさそうな気分になるが別に俺は未来から来たバツイチ中年ではない。
「じゃあドク。」
「お主も好きよのう。あーそれとこの腕時計型通信機を持っていくがよい。シャドウが出たらそれに連絡を入れる。」
「ハイテクっすね、じゃあありがたくいただいていきますよ。」
「あーそれと、その通信機は完全防水になってるからそのまま風呂に入れるぞい。普段はデジタル時計としても使えるしアラーム機能もついてるから使うといい。」
「えぇ・・・わかりました・・・」
だから、なんかー!!
非日常から日常に一気に戻されるとさぁ!
なんかさぁ!
うまく言葉にできないけど、なんかさぁ!!
「とりあえず出動までは好きにするといい。」
「わかりました、色々お世話になりました。それじゃあ今度はガイアに寄りますんで今日の所はこれでお暇させて頂きます。」
「おう、ワシももっと凄い装備を作っておくぞい!追加装備もいいな、新規でスーツを作るのもいいな!!・・・どうせ自衛隊はワシの作った装備は危険だとか言って買い取ってくれんのじゃから・・・」
最後小声で凄い物騒な事を言っていた気がするが・・・気のせいだろう!
俺はドク樋口の研究所を後にし、喫茶店ガイアへと向かうのであったが・・・
「帰り道・・・どうしよう」
小屋を出た瞬間に思考停止。
なんてこった、ドク樋口の研究所に辿り着いたことがすでに奇跡だったのだ。
どうやって帰れば良いのだ・・・
「そうだ、悲観してても仕方がない。どうせ誰もいないんだ、早速スーツを試着してみよう」
どうせ最初に着るならだれも見ていないところでひっそり試着した方がいいだろう。
恥ずかしいしね。
ヒーロースーツに袖を通す。
質感はスポーツとかやる時に着る下着のアンダーアーマーというピチピチの素材によく似ていた。
厚さは比べ物にならないが、それでも非常に柔軟で動きやすい。
そして最後にマスクを被る。
「うおぉ!?」
思わず声に出てしまった。
凄い、なんというか最初の感想が「ハイテク」って言葉しか出てこないあたり自分のボキャブラリーのなさに嫌気がさす。
でもハイテクなんだ。
何かよく分からんが目の焦点を合わせると勝手にスキャンして情報とかが表示される。
これが世に言うVRという物なのだろうか。
目の前には森の中なので木が沢山立ち並んでいるのだが何という種類の木で太さがどのくらい、丈はどのくらいという様な情報が一瞬で目の前に、というかマスク内のモニターに表示されるのだ。
そしてここが一番脆い、という感じなのか、どの木を見ても赤い点がいろんな場所に表示されている。
やはり戦闘用デバイスなのであろう。
すげーすげー!と一人ではしゃいでいたが、視界の右上の方に小さく地図のマークがあったので空間を指で触るような真似をしたら地図まで出てくる始末。
これは凄い。
「スーツの性能を試すいい機会だ、ガイアを目的地に設定してどのくらいの時間で到着できるか試してやる!」
・・・第一歩目が人間が到底できるとは思えないような大ジャンプになってしまった。
ゆうに5Mは空中に飛び上がった。
「お、落ちる!!脚骨折・・・!!」
ドシンと両足で着地するが何ともない。
スーツが全て衝撃を吸収してくれたのだ。
モニターには今の衝撃がエネルギー量にしてどの程度だったかなどが表示されているがよく分からないので無視。
もの凄いおもちゃを手に入れた子供の様にはしゃぎ、俺はそのまま全速力でガイアへと向かった。