小介の真夏の研究所探索記
マッド樋口の研究所にたどり着くまで苦労した。
なにせ山奥の森の中に建っているというのだから車でなんか行けやしない。
結局徒歩で真夏の山奥の森をさまよい歩く羽目になった。
町長から地図を渡されていたが手書きの上に森の中でこんなもん使えるか―!状態。
俺は若干イライラしていた。
熱気と湿気が凄い。
面接の直後そのまま向かったもんだからスーツのままである。
じっとりとした汗が首筋を垂れてワイシャツの襟首に吸収されていくのが分かる。
気持ちが悪い。
嫌悪感を抱くがどうしようもない。
この地獄のジャングルから脱出するにはマッド樋口の研究所にさっさと辿り着く他ないのだから。
しばらく遭難者の様にとぼとぼうつむきながら歩いていると目の前にぼっろぼろの小屋を発見した。
・・・ここじゃないよな?と思ったが一応確認してみる事にした。
森の中にぽつんと佇んでいる小屋。
物置小屋と言っても通じそうなボロボロ具合、そして小さいぞ。
外の壁にはこれまた錆びだらけの鍬が立てかけて有り、窓は汚れツタが絡まっている。
木こりの休憩小屋か物置だ。そうに違いない。
しかし、万が一という事もある。
扉を開けて確認したらすぐにまた森の中を探そう。
そう思い小屋の扉に近づいた。
ふぅ~と息を吐いてドアノブに手を伸ばした瞬間に扉が開いた。
えーと、決して中に誰かがいてドアを開けるタイミングが被ったとかそういうのじゃない。
だってウィーンって機械音と共に扉が上方向にスライドしたんだもの。
俺は呆気に取られ、頭の中は「???」で埋め尽くされていた。
しかも開いた扉の中はどう見ても木造などではなくTHE研究所って感じの様相を呈していた。
・・・メッチャクチャ冷房効いてるし。
しばらく突っ立っていたのだが中に入らねば何も話は進展しない。
俺は意を決して建物の内部に入ることにした。
中は謎のチューブや配電盤やコンソールにまみれていたが物置小屋程度の広さしかない建物である。
誰もいないのは一目瞭然であった。
こんな森の中、ド田舎にハイテク機材。
違和感MAX。
何とはなしに壁につながっているチューブを目で追っていくと床に繋がっていた。
それも目で追った一本だけではなく、何本ものチューブが全て同じ床の一か所に繋がっているのである。
気になってチューブの集中している床を触ってみた。
よく見ると床下収納の扉の様に小さな取っ手が付いている事に気が付いた。
俺がそれを引っ張ると簡単に開いた。
床下にはバルブ。
これを回すとさらに蓋が開くのだろうか。
恐らく地下室への入り口だ。
・・・行くか。