面接と仕事内容
ヒーロー業というのはまあ所謂TVとかでよくやってるヒーローだ。
悪の組織が世界征服を目論み、それを超人的能力を持つスーパーヒーローが迎え撃つ。
そんな感じ。
でも現実は違った。
こんなド田舎の町を占領しようと正体不明の組織が盗みや強盗を働いているのだ。
謎の科学技術を使用してバイオ生物まで作り出す始末。
交番のお巡りさんじゃ太刀打ち出来ないってんで町の変わり者の科学者に頼る事になった。
山と海に囲まれたこの田舎の、人目を避けてさらに山奥に研究所という名の小屋を建てて何やら怪しい研究をしている自称科学者のマッドサイエンティスト樋口。
誰も本名は知らない。
その当時俺は町内がマッド樋口に頼んだ事など全く知らなく(盗みや強盗の件は知っていた)、ヒーローの職に応募した時に初めて知ったのだった。
リストラされて落ち込む暇なく求人を探す俺。
しかし山と海、それ以外は田園風景が広がるような田舎にそうそう仕事などあるわけがなく。
(リストラされた会社にも電車で片道2時間通っていた)
近所の農家に事情を話して弟子入りでもするか?と思っていた所、何気なく立ち寄った公民館の掲示板コーナー。
普段ここには求人やアルバイトの募集などが貼られるのが普通なのだが俺はこの町で生まれ育ちこの年まで生きてきたが、この掲示板コーナーに求人が掲載されているところなど一度たりとも見たことが無かった。
しかし、その掲示板には、自警団員募集のプリントが貼ってあった。
一瞬ボランティアか?と思ったが給料の記載があるのを見逃さなかった。
俺は心臓が爆発しそうになった。
奇跡!決して高給などではないがこんなド田舎だ、娘と二人生きていくだけならなんとかギリギリいけるくらいだ!
仕事が出来る!
そのまま公民館の受付のおばさんに「これ、これ応募したいんだけど!」と凄んで求人を出していた人に連絡を入れてもらったわけだ。
まあその人は町長なわけだけど。
後日面接をするという事で再度公民館の会議スペースに呼ばれた。(会議なんてしてるところは見たことないが)
小さいころから祭りや町内の集まりで仲良くしてくれたりするおっさん連中などはしっているんだが(今はもうおじいちゃんだが)、町長ともなると町内の集まりで乾杯の音頭を取るじーさんくらいの認識しかなかったのでお互い初対面の様な感じで面接(?)という名の雑談が始まった。
「えーとお名前は・・・神田小介さんですね?」
「はい、神田小介35歳です。高校1年の娘と二人で暮らしています。」
「ほーそれはそれは」
見るからによぼよぼのじーさんであった。
町長というよりは仙人っぽい。
「前職が会社理由で解雇されてしまいましてそれで」
「いえ、前職の事など構いませんよ。応募してきたのも神田さん一人だけですし、採用させて頂きます。どうかこの町をお守りください。」
「えーと、うれしいんですけど唐突過ぎて・・・勤務時間とか勤務先とかは・・・?」
いきなり採用!?
いや、うれしいけども!
「そうですねぇ、勤務時間は自由です。悪い奴が出ましたら連絡が行きますので、現場に急行してやっつけてください。勤務先は特にありません。とりあえず山に住んでる樋口さんの所に行ってお話を聞いてください。詳しい話などは樋口さんが説明してくださると思います。」
「は、はぁ・・・」
「それと、娘さんと二人とはいえこの自警のお給料だけでは少ないでしょう、神田さんさえ良ければなんですが、町唯一の喫茶店「ガイア」の店長さんが腰を痛めてしまいましてね、ちょうどアルバイト募集をしているのですよ。それで神田さんの事を店長さんにお話ししましてね、神田さんがOKをくれればアルバイトとして雇ってくれることになっております。悪い奴が出るまでは喫茶店で、悪い奴が出たら現場へ、という感じでどうでしょう?」
「はぁ、むしろ願ったりかなったりな展開でありがたいです。こんなに良くしてもらっていいのかっていうくらいです。」
仕事採用、そして公式副業のおまけつきですよ?
俺の人生終わってなかった!
とにかくただただこの時は安堵していた。
そして変人マッド樋口に会いに行くことになるのである。