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日の本の名の下に  作者: ヒトトセ
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本章 一 選んだ道【追手】

▼選んだ道【追っ手】




草木が鬱蒼と生い茂る森の中、

子供とも大人とも言いきれない女が逃げ走っていた。


女性にしては鋭い目付きの黒瞳は焦りを宿し、

腰に届くほど伸ばされた黒髪は簪で一つにまとめられ

女が走るたび美しく揺れていた。


その女を追いかけるのは中国人の男、総勢十三名程。

皆屈強な肉体をしている。


女を追いかける男たちの顔はにやつき、まるで狩りをしているようである。


「くっ、はぁはぁ…

(くそ、数が多い…!刀は奪われてしまったし、捕まってしまう)」


木に隠れながら逃げる女。パキッ、と枝を踏み折ってしまった。

男の走る足音が近づいてくる。


「!」


「そこか女ァ!」


女は咄嗟に足元にあった石を叩き割り、

近づいてきた中国人の男へと石礫を投げつける。

叩き割られた石は無造作に割られたにも関わらず

先端は尖り立派な凶器に見えた。


「ガッ」


石礫は女の腕力とその鋭さから

男の太い喉を軽々と破り、男を簡単に絶命させた。

女はその様子を見て、苦虫を噛み潰したような顔をしながら

他の男たちが集まる前に逃げ走る。


女がその場から離れて5分程経ち、十二人の男と

その男たちの腰程の背丈しかない中国人の男が二人、集まっていた。

服装もその身に纏う雰囲気も小さな二人の男は違った。

顔の作りも体格もそっくりそのままの二人は、どうやら双子のようだ。


目尻に紅を差し、糸のように細められた目、

細く結われた弁髪のような三つ編みが目立つ。


(チェン)、コイツ死んでるアルヨ。」


双子の片割れが苛立たしげに

女の投げた石礫で絶命した男を足蹴にする。

肉の塊と化した男の死体はゴロンと転がり

その首から流れ出る血液で周囲を濡らしていった。


(ヤン)、下っ端ってホント役立たずアルネ。」


一方、陳と呼ばれた双子の片割れは興味なさげに肩を竦めた。

細く結われた一本の三つ編みが動作とともに揺れる。


「陳、あの女、石礫ひとつで大の男の喉、破ってるアル。」


落ちていた石礫を拾い、笑みを浮かべるのは梁と呼ばれた双子の片割れ。


「梁、ワタシ今更驚かないネ。森に入る前なんてあの女、

たった一人で二十人も殺したアルヨ?」


梁に向かってにやにやと笑う陳。

その手には一本の黒い刀が握られていた。


「陳、そうアルな。連れてきた部下ほとんどあの女一人に殺されたアル。

あの女は強力な戦力になるアル。捕らえるか殺すかするアルヨ。」


女が逃げたであろう方向へ視線を移す梁。


「梁、そんなのわかってるアル。ワタシが行くネ。」


口が裂けているかのように見える程口角を釣り上げ不気味に笑い、

木から木へと飛び移りあっという間に姿を消す陳。


残された梁は、そんな己の片割れに

やれやれと肩を竦めてみせた。

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