第5話 上陸作戦
お久しぶりです。兵器の名前や東方キャラの名前などに間違いがあった場合はコメントにてお知らせいただければ幸いです。
ご協力よろしくお願いします。
★登場させてほしい東方キャラがいらっしゃれば、登場させてほしいキャラの名前、詳しい説明(能力やスペルカード等)を記載してコメントにて投稿してください。
余裕があれば登場させたいと思います。
2023年8月16日am9:20 軽装甲機動車 車内
お世辞にも快適とは言えない車両の中で、完全装備に身を包んだ自衛官たちが揺られていた。未知の土地だから道順も分からない上に、車両が通ることなど想定されていないような未舗装の悪路である。
「木島三尉、相手国の許可も無くこんな重武装で上陸してよかったんですかね。これじゃ俺たち海兵隊みたいじゃないですか」
「海兵隊か、そりゃいいな。フォース・リーコンには程遠いけどな」
「一応我々にも発砲権限があるじゃないですか」
「バーカ、発砲権限つったって単射だけだぞ。そんなんで艦砲射撃やら戦術航空爆撃気軽に要請できる部隊と一緒にされちゃ困る」
何故こんなことになってしまったのか……それを知るには14時間前にさかのぼる必要がある。
2023年8月15日pm8:20 輸送艦‘‘おおすみ’’格納庫 回想~
「第38普通科連隊 連隊長の伊藤だ。皆も知っての通り、我々統合任務部隊は衛星などの長距離連絡手段が軒並み壊滅し本国との連絡が取れない状況にある」
ここまでは昨日の艦内放送で統合任務部隊指揮官の古賀海将に伝えられているため動揺が少なかった。
「また、不可解な現象が連続して起こり正確な現在地は依然として不明なままである。ことによってはここは異世界であるという可能性まで出てきた。このような状況の中で立ち止まっていては何も解決しない。幸いなことに先日こちら側の責任者とコンタクトをとる事ができた。その際、紅魔館と呼ばれる場所に行くことが求められた。この場所にはこの地域一帯での権力を持った人物が住んでいる。よって、我々は自らの安全と今後の良好な関係のため紅魔館へ使者を送ることを決定した」
格納庫にいた自衛官の間にどよめきがはしった。
確かに甲板に上がれば、ここが太平洋ではないことが誰の目に見ても明らかだ。
一部の陸曹や陸士の中では異世界転移説がささやかれていたが、まさかそれを連隊長の口から聞くことになろうとはだれも思っていなかったのである。
「本作戦の目的は紅魔館の当主である吸血鬼、レミリア・スカーレットに対し我々がこの世界にいる間一切の危害を加えないこと、お互いに良好な関係を築けるよう努力する旨の条約を認めさせることにある。しかし、我々自衛官に交渉に長けた者はいないため、警視庁刑事部特殊捜査班、通称SITの皆様に協力してもらうことになった」
連隊長というかなりの大物の演説中だというのにざわめきは一層大きくなる。しかしそれも当然だろう。
部隊を派遣するという旨の通達を受けていた各小隊長ですら、交渉相手が吸血鬼などという伝説の存在であるということを知らされていなかったのだから。
「しかしながら、SITはあくまで警視庁からの客人である。彼らを危険にさらすようなまねはできない。そこで我々は少数精鋭の特別分隊を新設しSITを警護することが決まった。これより特別警護分隊の人事を発表する」
ざわつきが収まり隊員たちが耳を澄ませるのがわかる。
「第38普通科連隊第3中隊・木島三尉を分隊長とし山本一曹、佐藤一曹、松本二曹の以上4名を特別警護分隊に任命する。なお、作戦開始は明朝○九○○とする。何か質問はあるか」
早速、木島三尉が手を挙げた。
「連隊長、我々は特別警護分隊に配属されました。任務遂行にあたってSITもしくは我々が危険な状態に陥った際、武器を使用し敵を撃退すことは可能ですか」
「今回は本来指示を仰ぐべき上部組織と一切連絡が取れないという特殊環境のため超法規的措置として、現場指揮官の木島三尉の判断で小銃などの武器の使用を許可する。ただし、発砲する際は基本的に単射のみ。小銃を連射にする場合や重機関銃や対戦車ミサイルなどの重火器が使用が必要な場合は本部に指示を仰げ」
「ではもう一つ。連隊本部としてはレミリア・スカーレット……いや、吸血鬼に対しての情報を持っているのですか? 未知なる敵と遭遇した場合、対処を誤れば部隊が全滅する可能性があります」
「残念ながら吸血鬼に関する情報はあまり集まっていない。事前情報がない中で送り出すことになってしまい申し訳なく思っている。装甲車をバックアップにつけるし万が一に備えて特戦群にも待機を命じてある。これでも対策としては不十分かもしれないが行ってくれるな」
「了解しました。全力を尽くして任務を遂行します」
「頼んだぞ、木島三尉」
2023年8月16日am9:30 軽装甲車 車内 (山本一曹視点)
「分隊長、本当に大丈夫でしょうか?」
「大丈夫なはずだ。あの奇妙な空飛ぶマスコミが紅魔館にアポとったらしいって話も上がってたしな。向こうに訪問の話が通っているならば突発的な戦闘はないはずだ。おっと雑談しているうちに着いちまったな」
不安が残る作戦だったため会話をすることで緊張を紛らわせようとしたのだがあまり効果はなさそうだ。
むしろ前を見ていなかったので到着に気付くのが遅れ慌てて前を向いて……驚いた。目の前に真っ赤な館があったのだ。
館の名前は紅魔館だと聞いていたが、まさか字の通りだとは……趣味が悪いと思う一方で某ロボットアニメの見過ぎなのか不覚にもカッコいいと思ってしまった。
「よし、行くぞついてこい」
木島三尉に続き全員が降車し、そのまま紅魔館の正門らしき所まで進んだ。
ある程度門に近づくと門の前に中国服を着た女性がいるのが確認できた。向こうも自分達に気付いたらしく声をかけてきた。
「すみません、私はここ紅魔館の門番をしている紅美鈴といいます。えっとあなた方は新聞に載っていた外来人の方でしょうか?」
「はい、多分それであっていると思います」
「そうですか、では咲夜さんを呼んでくるので少し待っていてください」
「わかりました。お願いします」
木島三尉がそう言うと美鈴と名乗った少女は館の中に駆け込んで行った。彼女を見届けた後、俺は疑問に思ったことを三尉に質問してみることにした。
「分隊長、我々がこの世界に来てから女の子しか見ていない気がするんですが……気のせいですかね?」
「さぁな。公的な身分の人に女性が多いんじゃねぇのか? だとしたら、この世界は男女平等を超えて女性優遇の文化ってことになるだろうな」
「案外そうかもしれませんね」
2023年8月16日am8:35 紅魔館前 (山本一曹視点)
美鈴と名乗った少女は館に駆け込んでから5分でメイド服を着た女性をつれてきた。
「私はここ紅魔館のメイド長をしています。十六夜咲夜と申します。お嬢様の所までご案内しますのでついてきてください」
そのまま館まで誘導しようとする咲夜を木島三尉は呼び止めた。
「申し訳ありませんが我々に武器の携帯を認めてもらえませんか。我々の持っている武器は自衛の為にのみ使用されます。したがってあなた方が攻撃しない限り武器の使用はしません。この条件で武器の携帯を認めてください」
咲夜は困ったような素振りをみせ木島三尉にこう尋ねた。
「何故武器を携帯しなければいけないのですか」
咲夜は不信感をあらわにして三尉を問い詰める。
彼女の瞳からは、主を危険にさらすわけにはいかないという確固たる意志が感じられた。
「それは我々自衛隊に与えられた任務は交渉人の警護です。決してこちらから攻撃を仕掛けるようなことはありません。それに情報提供者の博麗霊夢さんに『紅魔館の連中は危険だ』という旨の言葉を頂いたので丸腰では警護任務が達成できないものと判断しました」
それを聞いた咲夜さんは三尉を睨みつけた。
まぁ自分の仕える主を危険人物呼ばわりされたのだ。怒るなという方が無理だろう。
それに、三尉は自覚せずに相手に嫌味を言ってしまう傾向がある。何度か無理やりにでも交渉を変わろうかと思ったほどだ。
「あなたは博麗の巫女を信用し、その過程で我が主を貶めるのですか」
「貶めるなんてことはしませんが危険であるといったことに関しては半分は信じていますよ。だって現にあなた左足にナイフのホルスターぶら下げてるし、スカートでうまく隠してるようだけど」
その指摘に咲夜は驚愕していた。
ナイフを隠し持つことに自信があったのだろうか? たしかに俺も気づくことができなかったが……
驚愕の表情は一瞬で消え失せ冷静さを取り戻したかのごとく反論に転じてきた。
「このナイフはお嬢様をお守りするためのものであって、お嬢様の命令が無い限りこのナイフを使うことはありません」
「わかりました。ではこちらも同じです。この武器は自分の身を守るためのものであり、あなた方が攻撃しない限り使うことはありません」
ここまで言ってようやく咲夜が折れ武器を所持したままの入館が許可された。
この時の三尉を見る彼女の眼は主を侮辱されたときの氷のような冷たい眼差しではなく、武器の携帯を見破ったり自分の圧力をものともせずに跳ね返したことに対する一種の尊敬が含まれていた。
しばらく進むと、ひとつの部屋に通されここで待つように言われた。
5分ほど待つと部屋の扉が開き、女性の声が聞こえた。
「ようこそ、紅魔館へ」
用例解説
SIT…警視庁刑事部特殊捜査班。警察の特殊部隊で、制圧ではなく確保することを基本としている。そのためSITは犯人との交渉を得意としている
フォース・リーコン…正式名称はアメリカ海兵隊武装偵察部隊である。空挺・レンジャー・斥侯などの特殊作戦能力を保有している。作中で述べた通り、本部隊には艦砲射撃や爆撃機を使用した攻撃の権限が与えられている
紅美鈴…紅魔館の門番をしている。ぱっとみ人間の様に見えるが実は妖怪。近接格闘を得意とする。
十六夜咲夜…紅魔館のメイド長を務めている。時を止めることのできる能力があり、常に投げナイフを携帯している。年齢は自称10代後半。




