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第62話 対策会議2

2023年10月16日am11:45  ”いずも”第2士官室   (古賀海将視点)


『メンツなんかどうでも良くなるような成果を残したからよ。ソ連は月の裏側で生活する文明を発見し独自の外交ルートを確立したの』


『仮にソ連が月の都と接触したとしてそんな簡単に外交ルートを作れるものなんですかね?』


『いいえ、月の都は地上の穢れを避けるために作られた場所よ。いかに相手が平等社会の樹立を目指すソビエト連邦とは言え地上と外交ルートを持つことはあり得ないはずよ』



彼女達はそこで動きを止めた

直後、室内に明かりが灯り周囲を照らし出す

モニターの画像も切り替わり陸海空の各部隊の幹部たちが映し出されていく

”いずも”の副長がモニターの横に立ち司会進行を行う


「ご覧いただいたように我々が確保した捕虜は月の都なる組織の正規軍である可能性が浮上しました。そこで、今後の方針の統一のために急ではありますが対策会議の招集をお願いしたところであります。まず初めに確保した捕虜の情報について、警視庁特殊急襲部隊より山崎巡査部長」


特殊部隊という性質上あまり表に立たない彼らだったが、先の人里襲撃事件でSITの隊員達が少なからず負傷したことにより捕虜の尋問に回せるような隊員が居なかったためやむなく協力してくれたのだ


「はい、自衛隊が確保した捕虜は5名です。うち3名が”おおすみ”への搬送時点で重軽傷を負っていましたが、捕虜のうち墜落機の副操縦士と思われる人物が搬送から2時間後に死亡が確認されたとの事です。なお現時点において尋問を行ったのは今ご覧いただいたニーナ・コトフ陸軍少尉のみであります。以上です」


「次に捕虜の所持していた武装について、高橋三佐」


「はい、我々は陸自各隊の協力によって墜落機及び積載されていた武装の鹵獲に成功しました。分析したところ墜落機はその特徴的な見た目からMi-8ヘリコプターであると思われます。また、鹵獲した武装に関してもSKSカービン、トカレフTT-33自動拳銃、M1891モシンナガン狙撃銃、PPSH-41短機関銃、SG-43重機関銃など第二次世界大戦前後に設計された装備が多いため、我々としては敵部隊はロシア軍、もしくは旧ワルシャワ条約機構軍に関係する組織に所属していると睨んでおりました。その点からみるとニーナ少尉の言い分は否定しづらいと思われます。以上です」


墜落機並び武器装備品の調査は今までの実績を考慮して彼に一任していたのだが今の説明を完全に理解できた者はいるのだろうか?

私がわかるのは暴力団が使うトカレフ拳銃と有名な狙撃手のシモ・ヘイヘの愛銃であるモシンナガンくらいだったのだが…勉強不足だろうか?


「えー次、月の都について八雲紫さん」


「月の都とは千年以上昔に有力な妖怪達を引き連れて戦争をしたことがあるわ。月の技術は凄まじく当時最強と言われた妖怪達を率いて攻撃した時もたいした戦果を挙げることはできなかったわ」


だがこの主張は大きな矛盾を持っている


『失礼だとは思いますが対空ミサイルをかわしてみせる貴方達、妖怪が第二次大戦前後の武器を使う勢力に負けるところが想像できないのですが…』


”みょうこう”艦長の田中一佐が言ったように我々が楽に勝てた相手が紅魔館のような特殊な能力や強靭な肉体を持った妖怪の集団を壊滅させることが出来るとは思えないからだ


「月との戦争は敗戦の記憶だから話すことに抵抗があるのよね…だからどうしても月の連中について聞きたいのならば、知り合いに月の都出身者がいるから彼女を紹介するわ」


「わかりました。ではそのように宜しくお願いします」


「わかったわ。じゃあ今から連れてくるから少し席をはずすわよ」


「はい、宜しく...えっ?」


いや、待てよ

今から連れてくると言ったか?


「何か?」


「今から連れてくるんですか?」


「早い方がいいでしょう?」


いや、まぁそれはそうだがアポも取らずにそんなんで良いのか?

脳裏にいきなり連れてこられて着艦に失敗した霊夢さんの姿が浮かんだ


「...そうですね。では宜しくお願いします」


もうこの辺りの非常識さは深く考えるだけ無駄だと思う


「では失礼して」


紫はそう言い残しスキマと呼ばれる空間に消えていった

こればっかりは何度見ても理解に苦しむ

初めて見た時は度肝を抜かれたものだ


「中断しますか?」


進行を務めていた副長が控え目に問うてきた


「いや、続行しよう。人里の復旧状況に確認しておきたい。災害派遣扱いで出動させた部隊の動向はどうなっている」


『その件については私が説明します』


モニターの中で第一中隊の中隊長である大谷二佐が立ち上がり説明を開始する


『陸自としては被害を受けた地域を中心に復旧支援と里周辺の警戒を行っています。この行動は自衛隊法第6章第83条に基づいて行われています。復旧作業に関しては里の自警団及び警視庁の一部部隊と共同して行っていますが人的被害は比較的少なかったのに対し、家屋の倒壊などの物的被害が多かったため重機の入れない地域ではがれきの撤去に苦戦している部隊がいるという報告を受けています。また、現時点においては周辺警戒を行っている部隊が所属不明の部隊と交戦…訂正、接敵したとの報告は挙がっておりません。以上です』


我が国は日本国憲法第9条によって交戦権が認められていないため【交戦】と言う単語は使わないようにしている

もっとも、それは防衛省の背広組や政治家が言葉遊びをしているだけであり現場では使われることも珍しくないのだが…


「伊藤一佐、派遣部隊への応援は可能か?」


『駐屯地並びに飛行場の防衛のために2個普通科中隊が付近の警備に回っている他、施設科も戦闘に備え防御陣地を構築中であり応援を送ることは現状では不可能です』


この様子では陸自は災害派遣の在り方を考えねばならなくなるだろう。ここは統合任務部隊指揮官としても海自が支援を申し出るべきだろう


「わかった。こちらでも何人か選抜して応援を出そう」


『よろしくお願いします』


「次に敵航空戦力について空自、石川三佐」


『撃墜した機体はロシア空軍のSU-27と同型機です。ニーナ少尉の言葉を信じるならば対象機の任務は敵先遣偵察隊の援護並びに紅魔館への爆撃だったということになります。この点に関しては対象機が最後に空対地ミサイルを撃ち込んだことから信憑性が高いと見ています。空自としては航空優勢維持のために情報共有や防空区域の設定等、陸海空が一体となって対処すべきと考えています。以上です』


いかに神の盾の異名を持つイージス艦がいるとはいえ一度に対処できる機数には限りがある

空自に関しても同様で如何に最新鋭のステルス戦闘機とはいえ3機しかないのだから使いどころに注意していかなかければならない

今後の指揮はさらに厳しいものになるだろう




用例解説


シモヘイヘ…フィンランドの軍人。フィンランドとソビエト連邦の間で起こった冬戦争ではソビエト赤軍から“白い死神”と呼ばれ恐れられた。スナイパーとして史上最多の確認戦果542名射殺の記録を残している


自衛隊法第6章第83条…自衛隊の災害派遣に関する法令。行動内容としては災害救援活動の実施。部隊近傍の災害に対しては、部隊長自身が部隊派遣を発令する


交戦権…国際法及び日本国憲法で使われている概念。しかし、交戦権という言葉には厳密な定義は存在しない


航空優勢…航空戦において味方の航空戦力が空において敵の航空戦力を撃破または抑制して優勢であり、所望の空域を統制または支配し、敵から大きな妨害を受けることなく、陸・海・空の諸作戦を実施できる状態およびその力である。過去には制空権とも呼ばれていたが衛星などの発達で完全に制圧することは不可能に近くなったため現在では、航空優勢の方が一般的である



※お知らせ

月面陸空軍が使用する旧ソ連製の兵器に関しては数が多いので、いずれ各種設定の項目にまとめて追加したいと思っています。

しかしながら時期は未定ですので悪しからず

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