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第55話 救難ヘリ派遣

2023年10月15日pm2:20 紅魔館上空 UH-60j機内 (メディック隊員視点)


「レスキュー24よりゲンポンへ。負傷者の詳細が知りたい。どうぞ」


「ゲンポンよりレスキュー24へ。負傷者の詳細に関しては重症者2、軽症者6名と把握している。どうぞ」


「了解、現在急行中。応急処置をしつつ着陸地点の確保を頼む。おわり」


対戦車ロケット弾が発射された可能性があることは艦長から聞かされたがこれほどの被害が出ているとは…

正直、想定外もいいところだ

負傷者は医療設備の整った”おおすみ”に運ぶことになっているが、万が一を想定して医官の黒田三尉が本機に搭乗している。

普段は医官などは乗らずメディックと呼ばれる俺のような救難員が搭乗しているだけなのだが、今回は医官が同乗しているためドクターヘリ同様の活動ができるわけだ




しかし、どんなに万全を尽くしても現実では時にそれ以上の問題が発生するものである





「まさかこれほどとは...」





機内から見た人里の一角は何とか消火した直後なのかいまだに黒煙が上がり、竹筒と布を合わせた即席の担架に負傷者を乗せこちらに手を振る警察や民間人が見えた


ヘリはホイストでの吊り上げ救助を諦め着陸して一気に担ぎ込む体勢を整えつつ広場に降下している


ふと黒田三尉をみると険しい表情を浮かべながら何事か呟いていた


着陸と同時に俺がキャビンドアを開け黒田三尉と共に負傷者の元に駆け出していった


「負傷者の状況を教えて下さい」


「重傷者の2名は砲弾の破片などで腹部、並びに脚部を負傷しており出血を止めることができません」


2名の傷は想定より酷く、足を負傷した警察の隊員は付け根から千切れかけた足を押さえつけ苦悶の表情を浮かべながらのたうち回り、腹部を負傷した里の男は出血のせいで意識が朦朧としてきているのか呼び掛けにも応じない


いかに医官が同乗していてもここにある装備で対応するのは不可能だった


「わかりました。三尉、ここの装備では無理です。直ちに"おおすみ"に搬送する必要があります」


「わかってる。重傷者を優先的に我々の艦に運びますので手伝ってください」


「艦と言うと霧の湖まで運ぶつもりですか!?そんな遠くでは運ぶ間に彼らの天命は尽きてしまいます」


実際、彼らの言う通りで現状では重症者が”おおすみ”まで持つ可能性は低い


「しかし、この付近に我々をしのぐ医療技術を持った者がいないことも事実でしょう。もしあるなら教えていただきたい」


黒田三尉の言い分は正しく誰も反論でき無いと踏んでいたのだが…反論は人垣を割って出てきた里長から上がった


「でしたら永遠亭に運んでいただきたい。あそこには八意(やごころ)先生がいらっしゃいます。彼女なら傷を治すことも可能です」


「その方なら治せるという根拠は?」


「先生はもともと地上の者でなく蓬莱(ほうらい)、つまり月の頭脳と呼ばれた方だと聞いています。今まで里の者が何人も助けられていますから」


黒田三尉は一瞬迷うようなそぶりを見せたもののすぐに覚悟を決めたらしく次の指示を出し始めた


「わかりました。負傷者を永遠亭に搬送しますので、どなたか案内をお願いします」


「わかった。永遠亭へは私が案内しよう」


「失礼ですがお名前を聞かせていただいても?」


藤原妹紅(ふじわらもこう)だ。あそこへは良く行くんで道案内には最適だと思うぞ」


「わかりました。では妹紅さん、宜しくお願い致します。こちらへ」


負傷者ごと担架をヘリに乗せ離陸しようとしたまさにその瞬間


…ミサイルの接近を告げる警告音が鳴り響いた


















2023年10月15日pm2:37  ”みょうこう”CIC  (古賀司令視点)


不明機(アンノウン)、レスキュー24に対し火器管制レーダーを照射。以後この目標をボギーとする」


「スタンダードでは間に合わない。空自に対処を要請」


「了解、対処要請します」


「エマージェンシー。ボギー、レスキュー24に対しミサイル発射。回避行動開始」


『アルプス01了解、これより正当防衛射撃を開始する。エンゲージ』


『アルプス01、FOX1』


レーダーディスプレイではアルプス編隊から4つの光点が分離し接近する4機のボギーに向け進んでいく様子が見えた

不思議なことに攻撃を受けているボギーは一切、回避行動をとらない

どういう事かと首をひねっていると菊池三佐が丁寧に解説してくれた


曰く、空自が発射したミサイルはAAM-4という中距離空対空誘導弾らしく終末誘導以外は慣性・指令誘導なので敵のミサイル警報にかからないらしい


要はすごいミサイルなのである


レスキュー24はチャフ・フレアをばら撒き探知されにくい低空を飛行することによって敵のミサイルを回避し、その直後にAAM-4が命中した


4つの内3つの光点がレーダー上から消える


『スプラッシュ3、彼我の距離が近いため格闘戦で対処する』


戦闘機の戦闘と聞くと一般の方は第二次大戦時代の零戦が行った旋回戦を想像される方が多いのだが実際は先程のように中距離ミサイルの撃ち合いで決着することが非常に多い


まぁ必ずしもそうはならないということも市ヶ谷で勤務していた時に空自の幹部に教えてもらったのだが…


『まずい、敵はフランカーだ!』


「フランカーだと?ロシアの戦闘機が何故ここに?」


「まだロシア軍だと決まったわけではありません。フランカーはインドや中国にも輸出されていますから。それより少々まずいですよ。F-35の運動性能ですとフランカーに勝つのは難しいですから」


「艦長、既にボギーはスタンダードの射程内です。空自を支援しますか?」


「いや、その必要はないだろ。レーダーを見ろ」


レーダー上では先程まで追われていたアルプス01がボギーの後ろをとっていた


『アルプス01、FOX2』


発射コールとほぼ同時にボギーはレーザー上から消滅した


「終わったか」


CICの緊張がゆるみかけた時、レーザー士が叫んだ


「撃墜したボギーより小型目標分離、高速でこちらに近づく。対地ミサイルの類が発射された模様」


「ミサイルシーカー波探知できず。腰だめで発射された可能性が高い」


「ミサイルの予測針路には紅魔館があります!敵はここを狙っている可能性があります」


「馬鹿な!撃墜される前のほんの一瞬でか!」


「お嬢様、館内にはパチュリー様が残っています!」


咲夜と名乗った従者の顔は蒼白だった


「目標、スタンダード防空圏突破!さらに近づく」


最悪だ

対応が遅れればさらに撃墜率は低くなっていくのに紅魔館に日本人はいないから自衛権名目の攻撃はできない

問題はこの小さい吸血鬼の当主が決断するかどうかなのだが彼女はかなりプライドが高いらしい

協定適応を要請してくるかとなると微妙だと思ったのだが…

件の吸血鬼はこちらの目をしっかりと見据えこう命じた


「自衛隊は協定を適応し直ちに紅魔館を防護しなさい」


そう《命じた》のだ

要請ではなく命令という形でプライドを守りつつ協定の適応を宣言する

少々癪に障るが、彼女なりによく考えた結論なのだろうから良しとしよう


「わかりました。全力を尽くします。対空戦闘、CIC指示の目標、攻撃始め」


「ESSM間に合いません。砲で対処します。撃ちぃ方始め!」


”みょうこう”、”むらさめ”が主砲で迎撃する中、ミサイルはなおも突っ込んでくる


「あと十秒で着弾します」


「アルプス02、敵ミサイルに突入します」


「何!?どういうことだ」


「同士討ちの危険があります!主砲の射撃をやめましょう」


「しかし、」


「ミサイルポップアップ軌道!着弾します」


もうだめかと思われたときだった


『FOX3』


コールと同時にミサイルは爆散した


「艦橋、爆破閃光視認」


「迎撃成功、近づく目標なし」


「ポップアップ軌道をとった一瞬の隙に機関砲を叩き込んだのか…無茶するな」


『アルプス編隊ミッションコンプリート。RTB』


CICから先程までの緊張感が霧散し、クルー逹は所々で歓声をあげ中には抱き合っているものもいる

そんな中、件の館の当主は私の横にそっと歩み寄ってきた


「ありがとう。貴方達には感謝するわ」


相変わらずこの吸血鬼の少女は見た目に合わず存大な態度をとってくる

まぁ反抗期の孫を見ているようで可愛らしいので良いか


「ミサイルを墜とした人間と少し話したいんだけどいいかしら?」


その意図はよくわからなかったが許可することにしてマイクを渡した


「えーっと聞こえてるかしら?」


『アルプス02、よく聞こえてますよ』


「さっきの撃墜は見事だったわよ。それともう一つ、アルプスっていう名前みたいのって何なのかしら?」


『お褒め頂き光栄です。それとアルプスの名称に関してですが、これはコールサインと言って無線を使って呼び出す際に使用する名前の事です。お気に召しませんでしたか?』


「そうね、もし変える気があるなら私が名を授けてもいいけど」


『お聞きしてもい下ろしいですか?』


「えぇ、貴方達には今回の功績をたたえてスカーレットの名を与えたいと思ったのだけどどうかしら?」


『スカーレット編隊ですか。悪くないですね。ではありがたく頂戴します』


「そう、大事に使いなさいよ」


『了解しました』


この小さな吸血鬼が家名を授けるとなれば相当に感謝しているのだろう

見れば従者の咲夜も驚いているようだ


微笑ましいと思いながらレーダーに視線を戻すとちょうど最初に墜落した所属不明機の付近を陸自の偵察ヘリが飛行していた



いかがでしたか?

ご意見ご感想等お待ちしております


用例解説

メディック…航空自衛官の航空士職域の一つで航空救難団の救難隊に属し、捜索・救難ジェット機のU-125Aや救難ヘリのUH-60Jに搭乗して、高度3000m(空挺・山岳救助)~深度30m(水難救助・潜水)の活動領域での過酷な救難救助活動に従事する航空自衛隊の隊員。


八意永琳…迷いの竹林の奥深くにある永遠亭を実質的に仕切っている凄腕薬師でもある。 薬師の一族である八意家きっての天才で、実は地上出身。 月人がまだ地上に住んでいた頃、月夜見ツクヨミらと共に月へ移り住んだ月の都の創設者のひとり。


永遠亭…幻想郷の迷いの竹林内に建てられている純和風の屋敷。蓬莱山輝夜と八意永琳が地上に隠れ住むために建てたものである。


藤原妹紅…迷いの竹林に住む少女で不老不死である。蓬莱の薬を口にした事によって不死になっている


ボギー…敵機と確認された航空機を指す戦闘機操縦士の隠語。一部の空軍では、まだ使用されているが基本的に古い言葉で、現在は「バンディット」の方が主流である。


FOX1.2.3…戦闘機が赤外線誘導空対空ミサイルを発射した場合、搭乗員が友軍へ向けてコールする符丁。

主にアメリカ軍、及びその同盟国軍が使用する。自衛隊では以下のように使用する。FOX1:中射程AAM(AIM-7やAAM-4など)FOX2:短射程AAM(AIM-9やAAM-3など)FOX3:機関砲


フランカー…正式名SU-27。ソビエト連邦で設計・製造された戦闘機である。現在でもロシアを中心とする旧ソ連諸国や第三世界で使用されており、改良された本機はアメリカ合衆国のF-15 イーグルにも匹敵する極めて高い格闘性能や長大な航続距離を誇る。フランカーは西側諸国が当機につけた愛称。


ポップアップ軌道…レーダーに探知されないよう低空を飛翔するミサイルが、貫通力、命中率を上げるために目標直前で上昇し急降下して目標を攻撃する軌道

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