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第54話 人里上空制空戦

2023年10月15日pm1:50   人里上空(博麗霊夢視点)


「何であんたまでついて来るわけ!?」


「面白そうなものがあればついて行くに決まってるだろ」


言うのも癪だが取材のために私を利用したネタに飢えた文屋がついてくるのは仕方ないとしよう

しかし、何の関係もない魔理沙がついて来るのはどうなんだろうか?

しかも理由は面白そうだったからときた

これでは肝試しと称して人間や妖怪に喧嘩を売る妖精と大して変わらないではないか

まぁ幻想郷の連中など皆そんな奴ばかりか…


私が諦観していると射命丸が自衛隊から預かった箱型の《無線機》とかいうものから声が聞こえてきた


『文さん、高橋です。聞こえてますか?』


「へっ!?高橋さんですか!?てっきり他の方が誘導するとばかり…」


『えぇ自分もです。にとりさんに駐屯地内を案内してたら司令部に緊急招集ですからねぇ』


「それは大変でしたね」


『いえ、そちらの方が危険で大変ですから。先ほどから正体不明機が人里を攻撃しているようです。くれぐれも注意してください』


「わかりました。私は後ろの方で撮影するだけで終わりますし大丈夫ですよ」


私は全然大丈夫ではないのだが仕事柄ここで逃げるわけにもいかない

まったく面倒なことだ





















2023年10月15日pm1:50  人里 (SIT隊員視点)


「森の方向に1機落ちたぞ!」


たった今、自警団と我々が必死に銃撃を加えたのが功を奏し、1機のヘリが黒煙を吐きながら墜落していった

正直、短機関銃や火縄銃ごときでヘリが墜ちるとは思ってもいなかったので驚いている

順調にいけば勝てると誰もが信じた時、《それ》はヘリから放たれた


閃光

そして爆発


気付けば俺達は地面になぎ倒されていた


何があったのかわからなかった

爆発のせいか耳鳴りもするし視界も霞んでいる

やっとのことで起き上がり、目の前に広がった光景を俺は信じることが出来なかった


近くの建物は倒壊し一瞬前までヘリの撃墜に沸いていた自警団の人間が血を流して倒れている

隣で共に応戦していた隊員も何かの破片が直撃したのか足を押さえて苦しそうにうめいておりとても立てそうには見えなかった


『今の爆発音は何だ!?状況を報告しろ!』


無線がなにやら必死に呼びかけているが応答する気にはなれなかった


ただ一つ、ぼんやりと地獄というのはこういう状況を言うのだろうと考え呆然と立ち尽くした






















2023年10月15日pm1:51  ”みょうこう”CIC 


爆発音が聞こえた直後から怒号と悲鳴に近い報告しか無線が拾うことはなく自衛隊としても何があったのかを知ることが出来ずにいた

こんな時は偵察機の一つでも出動させればいいのだろうが無線の交信内容からそんな猶予は残されて無さそうだった

事態はかつてないほど切迫しており一刻の猶予も残されていない

CIC全体が緊張感に包まれていた


「菊池三佐、君の見解を聞かせてほしい。この爆発音は何だ」


「直前の状況から考えますと国籍不明機から擲弾、もしくは対戦車ロケット弾の類が発射されたものと考えられます」


そんな中、最高責任者の古賀司令に意見する砲雷長に注目が集まらないはずがなかった


「これが里の中心地に着弾した場合どれだけの被害が予想される?」


「着弾する位置にもよりますが対戦車ロケット弾は一般的に60mほどが殺傷範囲とされています」


「ならば選択の余地はもうないだろう。明らかに警察では対処不能だ。我々で対処する」


「しかし、よろしいのですか?まだ里長並びに八雲紫からの要請がありません。出動すれば協定違反になる可能性があります」


「それでは手遅れになる!」


「せめて八雲紫の許可を得てからやるべきです」


「クソ、この大事な時に一体どこに行ったんだ!」


ほんの数分前までCICにいた彼女だが、すぐに戻ると言い残しスキマと呼ばれる謎の空間に姿を消してから今に至るまで行方が分かっていない


「彼女を捜索する時間はない。協定では自衛権が認められている。これを根拠に行動を起こす!陸空自衛隊に協力を要請しろ」


「了解しました」


「霊夢さん以下3名、間もなく開敵します」






















2023年10月15日pm1:55 人里上空(博麗霊夢視点)


自衛隊の言う『国籍不明機』は人里上空にとどまり里を攻撃し続けているらしい

何でも『対戦車ロケット弾』とやらにより甚大な被害が出ているとのことだった


だがやることはいつもの異変と変わらない

それに博麗の巫女の名誉にかけて、これ以上の被害を出すわけにはいかないのだ


「魔理沙、そろそろよ。敵は見える?」


「あぁぼんやりとだが見えてるぜ」


ほどなくして国籍不明機のシルエットが唐突に大きくなった

距離が近づいたためではなく国籍不明機が私達の方角に側面を向けたからだ


馬鹿だと思った

すぐに私達の弾幕の射程に入るのに横っ腹をさらしては被弾面積が大きくなるだけじゃないの


しかし、その考えは敵の側面から連続して放たれる弾幕によってかき消された


「捕捉されてたっていうの!?」


今なら自衛隊の連中が必死に警告してきた理由がよくわかる

これは危険だ

この弾に当たれば弾幕ごっことは違い気絶で済まないだろう

負傷、いや即死すらあり得る


それを理解した時、沸いてきた感情は恐怖ではなく怒りだった

楽園であるはずの幻想郷に危険な武器を持ち込み挨拶どころか協定で守られているはずの人里を攻撃している

そんな敵を許すことが出来ようか?


「ふざけんじゃないわよ!!」


気付けば危険を顧みずこちらの弾幕の射程まで敵に肉薄し弾幕を浴びせていた


多数の弾幕の直撃を受け敵はあちこちから黒煙を噴き射手が撃たれたのか弾幕もやんだ

しかし敵の戦意はまだ挫けなかったのか敵機から一人の人間らしき人物が細長い筒のようなものをこちらに向けてきた


ヤバい

一体何が?と問われても答えることはできないけど本能が防げと叫んでいた


「ッ!二重結界!」


直後、結界越しに強烈な閃光と衝撃を感じた

恐らく警告のあった対戦車ロケット弾の直撃を受けたのだろう

凄まじい威力だ

結界もいたるところが損傷しており連続して直撃を受ければいかに私と言えど防げそうになかった


だからプライドなど投げ出してもすぐに決着させることにした


「魔理沙!お願い!!」


「任せろ!恋符『マスタースパーク』!」


極太のカラフルに輝くレーザーが2機の敵機を飲み込み跡形もなく消し飛ばした



















2023年10月15日pm2:05  ”みょうこう”CIC


敵機がレーダーから消失してからCICは報告の声で埋め尽くされた


「不明機レーダーロスト、撃墜された模様です」


「博麗霊夢以下3名、依然健在。無事です」


「現地捜査本部が緊急で救難ヘリの出動を要請しています」


「司令、陸自の1個中隊が墜落した敵ヘリの拿捕並びに制圧に向かいます。海自の対潜哨戒ヘリも支援を行っています」


「わかった。人里に救難ヘリを急派しろ。陸自の作戦には全面協力する。空自にはCAPの実施を要請しろ」


「了解しました」


「艦長、負傷者は”おおすみ”に搬送してよろしいでしょうか?」


「あぁ、”おおすみ”には負傷者の受け入れ態勢を構築してもらうように要請する」


出現当初、国籍不明機と呼ばれていた機体はいつの間にか敵機に変わっていた

訓練でしか使ったことのない単語を実際の戦闘で使うことになったクルー達は意外にも冷静だった

CICにいるだけで血を流すことがないせいか戦闘を身近に感じられなくなっていたのだ

しかし、そんな彼らも負傷者という単語を聞いた時、ぼんやりとだが確かに感じた


これだけでは終わらないと…




いかがでしたか?

ご意見ご感想お待ちしております。


用例解説

CAP…戦闘空中哨戒の英語略。戦闘機をあらかじめ、必要地域で空中待機させることにより、接近する敵航空機を早期に排除することができるようになる。


擲弾…元々は投擲とうてきして用いる爆弾の意味であり、擲弾兵が投げるものを指したが、手で投擲するものは一般に手榴弾しゅりゅうだんと呼ばれるようになり、擲弾は投射器を使用して遠くへ飛ばすものを指すようになった。

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