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第52話 イージス艦見学

2023年10月15日pm12:30  護衛艦”みょうこう”艦尾ヘリポート (田中一佐視点)


駐屯地で起きたトラブルの影響でで”みょうこう”の艦内見学は30分遅れで始まることになった

今回のトラブルにも例の第2小隊が絡んでいるらしい

全くどれだけ問題を起こしたら気が済むんだ


何でも今回は要人の従者と近接戦を繰り広げた挙句その従者を倒し衛生隊送りにしたらしい

自衛隊への理解を求めるための基地祭で問題を起こすとは一体どういうことか…

陸自の幹部連中が頭を抱える理由がわかる


そうこう思案しているうちに要人を乗せたSH-60kヘリが後部デッキに降り立とうとしていた

整備員が手旗を振りヘリに指示を出して着艦を支援している

この艦にはヘリ格納庫がないので機体の分解整備はできないが給油程度はできるので整備員が着艦誘導員を兼ねて乗艦しているのだ


整備員の誘導で着艦したヘリをベア・トラップ・システムが素早く拘束したところでキャビンスライドドアが開き中から要人が沢山降りてくる

重量を無視したんじゃないかと思うレベルで詰め込まれていたので結構驚いているが、この艦を見せる予定を当日になって早めたどこかの司令官は涼しい顔で出迎えのあいさつを行っているので恐らく司令の指示の下で一度に連れてきたのだろう

残念ながら無茶をするのは陸自の三尉だけではなかったようだ
















2023年10月15日pm1:00  護衛艦”みょうこう”CIC (菊池三佐視点)


ヘリの到着から程なくして艦長と古賀司令が要人達に艦内各所を案内して回っていたがそろそろCICに来る頃合いだろう

艦内各所に訓練の想定書が配られたらしいのですぐにでも訓練を行うことはできる


詳細としては赤青両国が交戦中の海域で本艦が赤国の爆撃機に捕捉され巡航ミサイルによる攻撃を受けたと仮定しそれに対する対処訓練である

個人的にこの対空戦闘訓練は好きだったが、実戦では最も経験したくはないことの一つだ

もっとも幻想郷にとばされてしまった今どこかの国の爆撃機に攻撃されるなどということはまず無いと思うが…


「砲雷長、そろそろ時間ですが艦長はまだでしょうか?」


「訓練の内容的に遅れることはできないだろうからそう焦るな」


待ちきれなくなったのか若い海尉が菊池三佐に小声で訪ねた直後にCICの扉が開きVIP一行を連れた司令たち幕僚が続々と入ってきた


「司令、お待ちしていました。申し訳ありませんが時間が押しているので早速説明させていただいて構いませんか?」


「構わんよ。皆さんこれからこの間の戦闘能力をお見せします。菊池三佐、説明を」


「はい、これからお見せする訓練は対空戦闘つまり空からの脅威に対処するための訓練です。今回はあくまで訓練ですので実弾は使用せずコンピュータで演算を行った結果が皆さんの頭上にある、あのディスプレイに投影されるという流れになります」


「開始まであと2分ほどしかありませんが何か質問はありますか?」


問いかけに対し声が上がることはなかったため訓練の準備に入ることにした

時間が押していたのでありがたい配慮だと思う

腕時計で時間を見るとちょうど開始時間の20秒前を指していた


「艦長、時間となりましたので始めさせていただきます」


「やってくれ」


「了解しました。これより状況を開始する。状況開始」


「状況開始」


状況開始の合図と共にCIC内の空気が緊張を帯び各隊員がディスプレイを食い入るように見つめている


「教練合戦準備。各部対空対潜見張りを厳となせ」


「SPYレーダー目標探知。180度2機、急速接近中」


「了解。無線での警告を開始せよ」


「警告開始します」


担当の海尉が流暢な英語で仮想敵相手に警告を行っている

確か一般大を出て幹部になった人物だったか

まぁ幻想郷で英語を使うことがあるのか甚だ疑問だが…


「艦長、対空部署発令します」


「わかった」


「教練対空戦闘用意」


発令と同時にサイレンが鳴り、艦全体に緊張が広がるのがわかる

幻想郷からの客人も食い入るようにディスプレイを見つめている


「教練対空戦闘用意よし」


準備完了の報告直後にレーダー士が声を張り上げた


「目標機左旋回、ミサイル攻撃の可能性高い」


「探知急げ」


「小型目標探知、機数6距離120まっすぐ突っ込んでくる」


「ESM目標探知、目標はASCM(対艦巡航ミサイル)間違いなし」


「左対空戦闘CIC指示の目標SM-2攻撃始め、EA攻撃始め」


「SM-2発射よーい…撃てぇ!」


客人が見ているディスプレイには以前本艦がSM-2を発射した際に撮った映像が流れている


「SM-2発射、正常飛行」


本番さながらの訓練に圧倒されたのか客人の何人かは質問するわけでもなくただ静かに訓練の推移を見つめている


「インターセプト10秒前…スタンバイ…マークインターセプト」


レーダー士の声と同時にディスプレイから4つの光点が消えた


「トラックナンバー1、3、4、5撃墜」


「トラックナンバー2、6さらに接近」


「主砲攻撃始め」


「撃ちぃ方始め!」


実際には撃たないがディスプレイからは光点がまた一つ消える


「トラックナンバー6撃墜」


「トラックナンバー2なおも突っ込んでくる」


「チャフ、CIWS攻撃始め!衝撃に備え」


「発射よーい…撃てぇ」


「衝撃に備え」


着弾までの数秒が長く感じるのはいつも同じだが、やはり息が詰まる

その数秒後、本艦に命中することなく光点が消滅した


「ターゲットデストロイ、迎撃成功です」


「ふぅ…」


客人たちの中からも安堵のため息が聞こえる

想定書に書かれていた内容はこれだ最後だ

後はこれを終わらせればいい


「状況終了。対空戦闘用具「レーダー目標探知120度、15機、編隊飛行中」


「何だと?位置は?」


「本艦から120km、地図と照らし合わせると無名の丘付近です」


「付近を飛行中の妖精や妖怪じゃないのか?」


「いえ、レーダーの反射波がかなり大きいのでそれは無いと思います。これほどの大きさです戦術輸送機か戦略爆撃機クラスですよ」


「幻想郷には全長60mを近い巨体で空を飛ぶ生物はいますか?」


「いえ、幻想郷にそんな化け物はいないわよ。そんなのがいたら異変の一つや二つ起こしてそうなものだし、何より博麗の巫女たる私が知らないはずないでしょ」


「紫さんはどうです?」


妖怪の賢者は何も言わずただ首を横に振った


「全艦に通達、対空戦闘用意」


古賀司令からの号令にCICのクルーが慌ただしく動き始めた





用例解説

SPY-1レーダー…SPY-1レーダーは、イージス武器システムの核心となるサブシステムであり、多数目標の同時捜索探知、追尾、評定、および発射されたミサイルの追尾・指令誘導の役目を一手に担う、多機能レーダーである。

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