第43話 木原の苦悩
2023年9月18日 am10:00 幻想駐屯地仮設司令部(木島三尉視点)
先の警視庁捜査員撤退作戦で我々が受けた被害について連隊長より直接報告を受けた
報告を受ける前に損害を直接確認するために“いずも”への視察を受理されていたので大体の被害については理解していたから衝撃は大きくなかった
「三尉、連隊長は何と?」
司令部前で待機させていた山本一曹が首を長くして待っていた
大人しく待っていたのだから何か褒美話でもやるべきか…それなら丁度いいものが手元にあった
「これは?」
「先日の作戦の最終報告書だそうだ。お前も読んどけ」
「了解です。と言っても大体知ってるんですけどね」
「だろうな。隊舎に戻ればいつもその話題ばっかりだ」
「警察も報われませんね。盗難事件を追って森に入るとそこは妖怪だの異形の化け物だのがうじゃうじゃいてさあ大変。回収ヘリも攻撃を受け墜落寸前までいくレベル。戦闘機の支援を受けどうにか撤退してみたら犯人と思わしき人物は既に‘‘いずも’’に拘留されてて、取り調べが入るかと思いきや相手が子供で謝罪し被害者と示談してしまう始末…」
「あぁ警察も苦労人だよ。お前負傷者の数は把握してるのか?」
「ええ、救出作戦における損害は警視庁から負傷者4名、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたものが2名でした。うちからの負傷者はでなかったんですがPTSDやそれに近い症状と診断されたものが計6名になったらしいです」
「まぁ当然の結果だろうな…俺たち自衛隊は実戦を経験していないからPTSDには弱いってことはよく言われてたしな」
「しかし、多くないですか?機銃手は分かりますがパイロットに整備員まで…」
「中隊長から渡された資料のほかに‘‘いずも’’まで行って特に損傷が激しかった方の機体とそのパイロットの担当医に会ってきたが…6人で済んだなら行幸だと思うぞ」
「そうですか、その…大丈夫だったんですか?そのパイロットって木原一尉なんですよね?人里の時の…」
「あぁそうだ。あれだけの損傷を負ったヘリを落とさず無事に帰ってきたんだ。尊敬するよ」
2023年9月18日am10:00 ??? (木原一尉視点)
ここはどこだ?
暗くて寒い…
風を切る音…ローターからでる爆音
瞬きをするとそこは使いなれたSH-60kのコックピットだった。
隣を見ればいつもと同じように配属されて間もない副機長が計器類と格闘している
そう、何の変哲もない俺の日常風景だ
だが違和感があった。
人の声がしないのだ。いつも声をかけてくるコパイやガンナー、機上整備員にセンサーマンまでが黙り込んでいるのだ
不安に思いキャビンに向け無線をかける
応答はなかった
この時点で異常事態であることを認識した俺は事態をコパイに説明するため左側を見たが…そこにコパイの姿はなかった
国際緊急周波数121.5(ガード)に周波数を合わ呼びかける
「メーデー メーデー メーデー こちらは日本国海上自衛隊所属・・・」
数分間、俺は壊れたカセットテープのように緊急事態を伝え続けた
だがどこからも返答はなかった
「繰り返すこちらはっ…誰か…誰か応答してくれ!!!!」
返事はなかった
代わりに来たのは、大音量のロックオン警報だった
レーダーを見ると全方位から接近する小型目標が非常に速い速度でこちらに迫っていた
一応機銃を積んではいるが射撃できる人間がいない現状では重りと変わらない
よって今できるのは回避だけ
一応チャフ/フレアをばら撒いたがこの数を単独でどうこうできるとは思っていない
自分を襲うであろう衝撃に備えて目をつむった
…だがロックオン警報が鳴るだけで衝撃は訪れなかった
不思議に思い目を開けるとそこには先日の戦闘で殺したはずの妖精がいた
何故…どうしてここに…
視界がぼやける
(あぁ…いっそこのまま失神してしまえばいいのに)
そんな願望はむなしく、相手はこちらを見つめてくる
不意に妖精が何事か呟いた
ローターの回転音で音声は聞こえなかったが、その口が何を呟いたかは一瞬で理解できた
『あなたが私たちを殺したの?』
その一言は俺を恐慌状態にするには十分すぎた
「仕方なかったんだ…仕方なかったんだよ!」
妖精は微笑みを崩さず語りかけてきた
今度は周囲の音などまるで最初からなかったかのように相手の肉声でだ
『貴方が私を…?殺した?殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した、殺した・・・・アナタガ殺シタ!!赦さない!!絶対に許さない!!」
「来るなッ…来るなぁぁぁぁぁぁぁッ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
飛び起きると俺はベットの上に横になっていた
体は冷や汗に濡れていて、長距離走をした後のように息も上がっていた
「お目覚めですか?」
唐突に声をかけられ驚いて声のした方を振り向くと、そこには白衣を着た男が水を差しだしていた
折角なので受け取り一気に飲み干す
すると少しは落ち着いたのか余裕ができ始めた
「ここは?」
「‘‘いずも’’の医務室ですよ」
「‘‘いずも’’の医官は確か女性だと思ったが…」
「ええ、私は‘‘おおすみ’’の医官ですから。あっ申し遅れました。自分は三等海尉 黒田駿であります。以後宜しくお願いします」
「あぁよろしく…ちょっと聞きたいんだが俺はどのくらい寝ていたんだ?」
「大体12時間ですかね。鎮静剤を打たせてもらいましたから」
「そうか、道理で体中が痛いわけだ」
「戦闘中に無理な回避機動をとったせいでしょうね。あまり無理しないでくださいよ」
「・・・」
「どうかしましたか」
「三尉…俺は人を殺したのだろうか?」
「いえ、報告書では戦闘を行った相手は妖怪や妖精だったということになっています」
「じゃあその妖怪や妖精と俺たち人間は何が違うんだろうな」
「私はまだそれ等の生命体に会ったことがないので何とも言えませんね。ただ、災害派遣の害獣駆除を根拠とした出動でしたから少なくとも上は敵を動物とみているのではないでしょうか」
「だが、俺が…俺がひき殺したのは羽がついているだけで人そのものだった。それは本当に害獣なんだろうか?知性も感情もあって根本的には人と変わらないんじゃないか?」
「それは…」
「それに見たんだ。死に物狂いで戦ってどうにか着艦したとき周りから浴びせられた視線はどんなものだったと思う?安堵、畏敬?とんでもない!恐怖だ!!俺を見る目はどれも人殺しに向けるような目だったんだ。あいつらを殺したのは事実だ、だから」
「貴方は殺したといった。だが相手を殺したことによって多数の命が救われた。これは紛れもない事実です」
「けど…」
「もしあなたがあの場で撃墜されていたらもっと多くの人が死んでいたんです。あなたはやるべきことをしただけです。褒め称えられこそすれ非難されるいわれはありません」
なおも反論しようとして自分が泣いていることに気付いた
俺はこの4日間ただただ自分の行いを肯定してほしかったということに今更ながら気づいた
「そういえば一尉が眠っている間に陸自の木島正義三尉が面会を求めに来てましたよ。まぁ面会謝絶だったので送り返しましたが」
「そうですか。もしよければ彼によろしく伝えてください」
「それは一尉が自分でするべきことですよ。それに口調も聞いていた通りの柔らかいものに戻ったみたいですしね」
「えっ?」
言われてから初めて口調が変わっていたことに気付いた
寝起きとはいえ気を付けなければ
風邪をひいてしまい投稿が遅れました
すいません<(_ _)>
そして重要なお知らせです。
年末には想定してなかったほどの仕事が大量に入りまして執筆活動に支障をきたしそうです。
そこで一段落つくまで改稿のみに絞らせていただきます
皆様のご理解とご協力よろしくお願いします。




