第38話 人形使いとの対談
遅れました。
非常に申し訳ありません。
テストなどの重要なイベントは大体片付けたので復活させていただきます。
もしかするとまた今回のように投稿に時間があいてしまう時もあると思いますが、作者は失踪しませんので活動報告を確認しつつ気長にお待ちいただけると幸いです。
2023年9月14日pm3:15 魔法の森 アリスの家(松村巡査視点)
作戦は成功し、幸い隊員にも死傷者が出なかった…にもかかわらず室内は殺伐とした空気に満たされていた
「こちらにも確かに非はありました。しかしながら、警告もなくいきなり攻撃を仕掛けてくるのはあまりにも…」
「だから先ほどから言ってるでしょう。人形たちは言葉を持たないの!それに私の人形たちは勝手に敷地内に入った貴方達を敵とみなして自衛行動をとっただけよ」
「だからっていきなり抜刀することはないのでは?最初に威嚇ぐらいしてもよかったはずです」
「あのね…」
と言う具合でSATの分隊長、山崎巡査部長と魔法使いのアリス・マーガトロイドさんとの口論が続いているせいだ
なぜこんなことになっているのか…それは15分前の作戦開始直後まで話を戻す必要がある
2023年9月14日pm3:00 魔法の森 アリスの家周辺(SAT隊員視点)
『作戦開始!各員気を緩めるな』
「別動隊了解、これより作戦を開始する」
分隊長の掛け声とともに作戦が開始された
我々別動隊の任務は交渉中のSIT隊員の身に危険が迫った際に速やかに隊員を救出し敵対勢力を制圧すること
つまり我々は万が一交渉が失敗した時の保険であり交渉に臨んでいる隊員の命綱なのだ
絶対に生きて帰れる保証などないが俺達にはその自信があった
厳しい選抜試験と技能試験を受けその狭き門を潜り抜けてきた警視庁の精鋭部隊である我々は何としても護衛対象である隊員を生きて隊のもとに、そして家族のもとに帰さなければならないのだ
それに我々は警視庁の精鋭と呼ばれたSATの中でもトップクラスの成績を収めたまさに精鋭中の精鋭である
そんな我々がここで作戦を失敗すれば警視庁のメンツは丸つぶれだ
全国の警察の代表としてそれだけはやってはならなかった
分隊長自ら先頭に立ち部隊は前進していく
家屋の裏口とみられる扉まであと15メートルというところで俺はこちらに接近してくる小さなものを見つけた
「部隊前方に不明目標、数6、依然こちらに接近中」
「姿は確認できないか?」
「森に日光を遮られ目標の姿が確認できません」
「了解、各員警戒を厳にしろ。敵対行動はとるな」
「了解、銃器の使用に関しては…」
「禁止だ。この近距離での銃器の使用は同士討ちの危険がある」
「了解」
本当に銃を使用しなくて大丈夫なのか?
そんな疑問が脳裏をよぎったが考えてみれば分隊長の判断は理に適っている
あの小さな目標に奇襲でもされようものなら混乱は必須だ
そんな状況での銃を使ったりしたら同士討ちの危険が格段に上がってしまう
だが…ここは常識の通用しない幻想郷だ
何があるかは全く想定できない。あの6体の不明目標を相手にこの別動隊が壊滅する可能性も否定できない
「動くな」
分隊長が6体の目標に対して警告を行い俺は我に返った
「こちらに交戦の意思はない。直ちに両手を挙げて投降しろ。そちらの安全は保障しよう」
警告を聞き入れたのか6体の不明目標は停止した
周囲が暗いのと目標が小さいので正体は分からないが人型であるから何かしらの生命体なのだろう
「よし、そのまま両手を頭の上に…」
しかし、分隊長の発言が最後まで聞き届けられることはなかった
目標が散開しこちらに急接近してきたからだ
「クソ、やっぱりそう来るか」
「どうしますか!?」
「発砲は全面的に禁止だ!同士討ちは何としても避けたい」
「了解!」
目標は速度を落とすことなくこちらへの接近を続けた
俺は特殊警棒を構える
距離が5メートルを切った時ついに目標の姿をとらえた
「人形だと…!」
この距離になってようやく人形が抜刀していることに気付き戦慄した
相手は確実にこちらを殺す気だ
殺す覚悟を持つものは殺される覚悟も持たなければならない…知っているはずだった
だが実際に殺意を向けられた時、不覚にも怯んでしまった
その一瞬で人形は武器の間合いまで接近しあっという間にこちらは防戦一方になった
「焦るな冷静に対処しろ!警視庁の最精鋭がこんなところで斃れるわけにはいかないだろうが!」
焦りと死への恐怖で冷静な対処ができなくなりつつあった俺を分隊長の言葉が俺を正気に戻す
そうだ…訓練を思い出せ!あのきつい訓練に比べたらこんな状況…簡単に片づけられる!
体勢を立て直した我々の反撃は早かった
人形の攻撃をかわしながら隙を見て力任せの一撃を胴に叩き込む
武器を持っていて空を飛ぼうが所詮は軽い人形である。訓練された警察官が放つ重い一撃に耐えることなど土台無理な話なのだ
人形は攻撃を受けメートル程吹き飛んだが、相変わらず攻撃の意思は変わらないようでこちらに武器を構え姿勢を低くし突撃の構えをとった
俺は人形の周辺に人がいないことを確認しホルスターから拳銃を引き抜き慣れた手つきで人形に照準を合わせた
「分隊長、今ならいけます。発砲許可を!」
「よし、発砲許可すr、いや待て!攻撃中止だ!」
「どういう事です?」
「人形をよく見ろ」
「え?」
分隊長に怒鳴られて人形を見るとそこには、まるで戦意を喪失したかのように一斉に武器を捨てる人形達の姿があった
「これは一体何が…」
「わからん。だが交戦を継続する意思はなさそうだ」
突然行動を一変させた人形を注視していると中央に陣取っていた一体の人形が前に出てこちらに向かって深々とお辞儀した
「えっと...これはどうすれば」
この時の俺は、常に冷静に物事を判断しなければならない特殊部隊の隊員としてはあまりにも情けないほどに狼狽えていた
何せ、先程まで敵意をむき出しにしてこちらに攻撃を仕掛けてきた相手が5分もしないうちに戦意を喪失したかと思えば、いきなり謝罪するかのようにお辞儀をし始めたのだ
この状況を理解しろと言うのは土台無理な話である
しかも、あの人形たちは手招きまでして自分達についてくるように促している
「取り敢えず武器を下ろせ。家のなかに入れてくれるっていうんだったらこっちとしても好都合だ」
分隊長の指示で拳銃をしまい人形達についていくことにする
もちろん奇襲に備えて警戒はするが…この様子だと奇襲攻撃はまず無さそうだ
人形たちは家の裏口に俺達を案内した
「不用意な行動は慎めよ」
分隊長の言葉は我々だけでなく自分に向けた言葉のようにも聞こえた
人形たちは扉に手をかける前に我々に向かって恭しく一礼した
それが余計にこちらの不安を煽った
相手はそんなに偉いのか?
もしかするとこの家の主と多少なりとも争ってしまったのは我々の想像以上に不味かったかもしれない…
そんなことを考えている間に扉は開き、この家の主だと言うアリス・マーガトロイドという女性に事の経緯について説明を求められ…
2023年9月13日pm3:15 魔法の森 アリスの家 (松村巡査部長視点)
今に至るというわけである
この状態で私がやるべきことを少し考えてみた
まぁ考えるまでもなくやるべきことは決まっていたのだが…
「お二人共もうやめましょうよ。こんな無益な争いは時間の無駄です」
「時間の無駄?あのなぁ松村巡査部長。こっちは危うく犠牲者を出すところだったんだぞ!あんたも部隊を預かってるんだからそれがどんなにマズいことかわかってるんだろ」
「わかってますよ。でもねぇ別動隊を出して攻撃準備をしたのはこっちの落ち度でしょう?」
「それは確かにそうだが…」
「そうでしょう?アリスさん。そういった事情がありましてその…今回の非礼に関してはこちら側に大きな判断ミスがあり大変遺憾ながら…その~」
「大体の事情は分かったし貴方達としても安全確保のためのやむ負えない手段だったんでしょ?こちらも警告なしで攻撃を仕掛けたのは悪かったわ」
言い争っていた相手がいきなり下手の出たのでバツが悪くなったのだろう。アリスさんはあっさりと謝罪を受け入れてくれた
「ご理解ありがとうございます。実は我々はある人物…もといある妖精を探していまして捜索にご協力いただけないものかと」
「妖精ねぇ。この森にはたくさんの妖精や妖怪が住んでいるから、そのうちの一体を特定するのは難しいかもしれないわ」
「そうですか…」
「あーでもほら、もしかしたら私でもわかるかもしれないし取り敢えず話だけでも…」
明らか気を遣ってくれている…というか必死にフォローしている?
我々を落胆させないためのだろうが…取り敢えず彼女の必死さは良く伝わってきた
俺はできるだけ詳細に妖精の特徴について話すことにした
「えーっと被疑者…じゃなくて、その妖精の特徴についてなのですが、ほとんどの場合二人で行動しており一方は青い髪で青い服を着た少女、もう一方はこれまた緑の髪で緑の服を着た少女との事で事件当時はこの青い髪の方の少女が冷凍攻撃を使い馬車を行動不能にしたうえで人里の商人から物を盗んだという訳でして…心当たりがはありませんか?」
「冷凍系?それって氷の妖精の仕業じゃないの?」
「氷の妖精ですか。そんなのが居るんですか?」
「ええ、名前はチルノだったと思うわ」
「そのチルノという妖精はどこら辺に住んでいるんですか?」
「確か霧の湖だったと思うけど…」
「霧の湖?」
「えっ?もしかして知らないの?」
「申し訳ありません。このあたりの地理にはまだ明るくないので…よろしければ説明していただけますか?」
「紅魔館前の大きな湖よ。たしか貴方たちの拠点はそこにあるって聞いたんだけど」
用例解説
アンノウン…英語で不明な~・未知の~などの意味を持つ言葉。各国の海軍・空軍による国籍不明機の呼び方として広く使われている。我彼不明目標や国籍不明機、未確認機に対してよくこの呼び方が使われる




