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第1話 自衛艦隊出港

いよいよ本編となります。どうぞごゆっくりお楽しみください。

2023年6月14日 am7:00  青森県八戸駐屯地廊下   (山本一曹視点)


 朝食を前にした隊員達の流れに逆らうように、2人の自衛官は慌ただしく庁舎の階段を駆け上がっていた。


「『山本一曹、佐藤一曹大事な話があるから会議室に来てくれ』なーんて言われたけど、こんな朝っぱらから一体何の用件だろうな? 佐藤」


「さあな、どんな用件知らないけど取り合えず早く会議室に行こうぜ。木島三尉は怒ると恐いからな」


「そいつは俺も同感だ。じゃあとっとと行こうぜ」


 そんなことを話してるうちに会議室についた。


「山本一曹、佐藤一曹入ります」


「よし、入れ」


 木島三尉と呼ばれていた男はパソコンから視線を外すと、2人の自衛官に椅子に座るようにと手で合図した。


「何でしょうか。木島三尉」


 朝飯がまだなんですが……という内心を押し殺し目の前の上官を見つめる。


「実は本日〇六〇〇(マルロクマルマル)時に防衛省から通達があった。防衛省によると8月12日にハワイで行われる米軍との合同演習に我々、第38普通科連隊に参加してほしいとのことだった。さらに今回の演習はうちと岩手駐屯地の戦車小隊と仙台駐屯地の高射特科部隊で参加するそうだ。質問はあるか」


 こういった時間に質問をしておかないと後で面倒が増えることが知っていた山本一曹は臆することなく小隊長の木島三尉に質問した。


「なぜ我々に声がかけられたんです? そういうのは西部方面隊やら第一空挺団が積極的に受けるのになぜ今回は東北方面隊だけの参加なんですか?」


 問われた木島三尉もそこら辺は心得ているようで即座に答える。


「西方は中国だの北朝鮮やらが活発だからな。周辺諸国への示威行動を目的とした演習で、前線の部隊を引き抜くのは本末転倒だ。そういう事情もあって、比較的脅威が少ない我々の方にまわってきたんだろ。あと、一応言っとくが今回の演習には非公式だが特殊作戦群も参加するし、警視庁から特殊部隊のSATとSITが参加する事になっているからしっかりやるように。仮にも陸上自衛隊の顔として行くんだからな。……他に質問はあるか?」


 次は佐藤一曹が手を挙げた。


「ハワイまでの移動は航空機ですか」


 この質問にも木島三尉は冷静に答えた。


「今回の演習は米海兵隊と米海軍第7艦隊と合同で行うため海上自衛隊も参加することになっている。そのため一度、横須賀へ向かいそこから海自の艦艇でハワイに向かう事になっている。また横須賀へは出港4日前に宮城の仙台港に輸送艦の〝おおすみ〟が停泊することになっているらしいので、その時に〝おおすみ〟に乗り横須賀に向かえとのことだった。他に質問は?」


 聞くべきことは聞いたのだろう。2人ともそれ以上は口を開かなかった。


「それじゃあ、俺がさっき言った事を分隊全体に伝えといてくれ」


「えっと……どうして直接分隊に指示を出すんですか? 小隊の方から指示を出せばいいのでは?」


「お前らの理解度を確かめるためだ。以上、とっとと出てけ」


 再び手元のパソコンに目線を戻した木島三尉を見て、これ以上は何も聞けないと悟った2人は椅子から立ち上がり、10度の敬礼をした。


「了解しました。失礼しました」






 この決定が彼らの運命を決定的に変えたことを、この時点の彼らは知る由もなかった……








2023年8月10日am11:00   横須賀海上自衛隊基地 輸送艦”おおすみ”艦内


「ようやく横須賀出港だな山本」


「ほんと待ちくたびれたよ。昨日なんかずっと艦内にいたからな。船の中ってのは思ってたより退屈だったよ。そうだろ佐藤」


「全くその通りだよ……知ってたらもっと娯楽になりそうなものを持ち込んださ」


「俺は入隊するとき陸自と海自で悩んだんだけど、実際に艦船に乗ってみると陸自を選んでよかったと思ったね」


「まぁ確かにお前は手旗振ったり泳いだりするのは得意そうじゃないからな。どちらかというと陸で鉄帽かぶって泥の中で匍匐してそうだ」


「それ、まんま今の俺じゃねぇか」


 陸自の隊員達に与えられた区画で2人は談笑を続けていた。







2023年8月10日am11:05 護衛艦〝いずも〟艦橋   (古賀海将視点)


「いよいよ出港ですね。司令」


 護衛艦”いずも”の艦長、秋津一佐が今回の演習の司令官である古賀峯一海将にそう尋ねた。


「そうだな、第7艦隊に我々のやってきた訓練の成果を見せつけてやろうじゃないか。各員気を引き締めろ」


 古賀海将はそう言って乗組員を激励した。


「秋津艦長、私は本艦に座上してはいるがあまり意識しなくて良いからな」


「了解しました。お心遣い感謝します」


 そうは言っても彼の顔から緊張は薄れない。

 軍隊では自分より階級が上の者に対する反応と言えばこれが当たり前なのだ。それは軍事組織である自衛隊でも変わらない。


(堅苦しいのは苦手なんだがな)


 このようなささやかな願いは組織上受け入れられないだろう……







2023年8月10日am11:20  イージス艦”みょうこう”艦橋  (田中一佐視点)


一一二〇(ヒトヒトフタマル)艦長、出港の時間です」


 みょうこうの副長が田中一佐にそう伝えた。


「よしわかった、出港用意。もやい、放て!」


 その言葉を副長が復唱する。

 それと同時に航海科員が出港ラッパを吹き鳴らす。すかさず「両舷、後進半速」を下令する。


 艦の癖をどうにか理解しあまり得意ではない操艦に意識を集中させる。


 ある程度、操艦して落ち着き始めたので次の指示を出す。


「航海長、操艦」


 と少し大きめの声で指示を出だす。


「航海長、いただきました。両舷前進原速、赤黒なし。針路二二〇」


 ジャイロ・コンパス・リピーターの前に立つ航海長が応じる。この後は艦橋に配置された航海科員達の仕事だ。


 あとは彼らに任せても大丈夫だろう。


 そう考え一息つこうと艦長席に腰を下ろした。







 こうして米軍との合同演習を行うため彼らは横須賀を出港した。この後、自衛隊史上最大の事件が起こることを知らずに……

いかがでしたか。投稿ペースは遅めですのであらかじめご了承ください

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「まぁ確かにお前は手旗振ったり泳いだりするのは得意そうじゃないからな。どちらかというと陸で鉄帽かぶって泥の中で匍匐してそうだ」 ここ好きです。 「海軍サンお世話になります」と南方戦線…
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