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第25話 会談

皆さんお久しぶりです。

本日より投稿を復活します!

これからも『幻想自衛隊』を宜しくお願いします。

2023年8月30日am10:00    寺子屋内部(伊藤一佐視点)


 それにしても堂々たる面子が揃ったものだな。

 何と言っても今、目の前に座っているのはこの幻想郷のトップである八雲紫だ。他にもテーブルを1枚挟んだ向かい側には、幻想郷側の有力人物が揃って腰かけている。

 会談の成否いかんでは、彼女らとも敵対することになりかねないのだ。これが緊張しないわけがない。


「それぞれの代表も集まったことだし、そろそろ始めましょうか」


 この会談は八雲紫が自ら音頭を取って進めていくらしい。先程、会談出席者とは一通り挨拶を交わしたが、特に目立って敵対的な様子は見られなかった。

 万が一の場合を想定し、木島が指揮する隊が外で待機してはいるが、霊夢さんからの会わない方がよいと言う言葉が頭を離れない。


 全て杞憂に終わればいいが……


「さて、まず何から話しましょうか?」


 全員に問いかける形を取ってはいるが、彼女が見据える先には我々しかいないのだから質問相手は明白だ。


「では、単刀直入に話しましょう。我々をもとの世界に返して欲しいのです。貴女にはそれができるという情報を掴んでおります」


「なるほど、霊夢あたりに聞いたのかしら。確かに私のもつ()()()()()()()()()()を使えばあなた達を向こう側の世界に返すことは可能よ。けれど、今すぐには無理ね」


「理由をお聞かせ願えますか?」


 予想に反した回答を前に固まった俺の代わりに、古賀海将が冷静に質問する。


「だいたい二年に一度位の周期で、幻想郷を囲む博麗大結界に綻びが生じるの。その時、希に現代の物や人が流れ着いてくる事がある。あなた達がこの世界に流されてしまったのも、きっとそのせいね」


「しかし、紫さんなら我々を送り返すことが出来るのでは?」


「いいえ、私の能力にも限度はあるわ。あなた達の半分位の人数なら、今すぐにでも送り返せるけど倍の人数で、しかもあんなに大きな船や装備品も一緒となると無理ね」


「それはつまり……我々は二度と現代へ戻ることはできないということですか?」


「それは違うわ。言ったでしょう()()()()だって」


「成程。では、いつなら戻れるんですか?」


「あなた達がここに来てしまってから二年後にもう一度結界が緩むの。その時ならあなた達を一度に返せるわ」


「良かった……つまり、時間は掛かっても帰ることはできるんですね」


「ええ、その通りよ。それで、他に聞きたいことはある?」


 取り敢えず帰ることが出来るならば、我々は希望を持って生活できる。一つの重大な懸案が終結の形を見せたことで、自衛隊側からは安堵の空気が漂う。

 紫がその笑みを一層深める中、議題は次の問題へと移った。


「あぁ、そうですね。我々の幻想郷内での安全の保証及び食料、燃料の提供に応じていただきたいのです」


「それだけ?」


 これは一体どういう事だろう? 事前の予想に反して彼女達の態度は非常に融和的だ。交渉が順調に進むのは喜ばしいが、何か裏がありそうで不安でもある。


「……欲を言えばですが。紅魔館から約3キロ地点にある平地の使用許可を、我々に頂きたいと考えております。これは長期にわたり部隊を駐屯させるにあたり、必要な土地となります」


「なるほど、そちらが必要とする要望事項は分かったわ。後者の要望はともかく、前者の要望を叶える為にはこちらの要望はも聞いてもらわないとね」


「要望ですか?」


「そうよ。何も出来ないことをしろとは言わないわ」


 懸念していたことが起こるかもしれない。隣に座る古賀海将からも警戒の色が伝わってくる。


「伺いましょう」


「まず、あなた達の戦力が知りたいわ。武器の性能や威力などが分からないと、不要な誤解を招きかねないし。手の内を知らない相手と仲良くするのは難しいでしょう?」


 幻想郷に来てから薄々感じてはいたが、どうやらこの世界においては力の強弱が大きな指標となるらしい。戦力情報の開示要求はその点から、こちらの潜在能力を測ろうとするもの理解できる。


「つまるところ、我々に公開演習をしろと言うのですか?」


「やり方はあなた達が決めて構わないわ」


 公開の方法に関しては、一旦持ち帰ったのちに検討せねばならない。海将もその辺は同意見のようで、口を閉ざしている。

 しかし、公開演習を行うと決まった場合に備えて、提言しなければいけないこともある。


「分かりました。しかしながら、演習をするとなると弾薬の消費を考えなければなりません。幻想郷に武器弾薬の製造を行える、高い技術力を持った人や組織はありませんか?」


「あぁ、河童なら()()()()を使えるんじゃないの」


「河童って……あのキュウリ好きの伝説の生き物ですか!?」


「そうよ。けど、あなた達が想像する河童よりも機械いじりが好きというか……流石の現代人も光学迷彩とかは作れないでしょう?」


「この世界の河童は光学迷彩なんて作るんですか!? 本当に何でもありだな……」


 光学迷彩……別名ステルス迷彩と言われるものだ。光を反射させることで、それを身にまとう者を視界から消すことが出来るとされている。

 そんな高度な代物は、防衛装備庁の技官をもってしても作れないだろう。


「彼らで良ければ、そこの文屋の天狗が紹介するけど」


「ちょっと勝手に決めないで下さいよ!」


 射命丸さんが慌てた様子で席を立つ。なんだ、未調整なのか。


「あら、嫌かしら?」


「いや、良いですけど事前に確認くらいはとってもらわないと。こちらの都合もあるので困ります」


 紫さんの挑発的な笑み前に、文さんが渋々と言う感じで引き下がる。


「まぁまぁ、落ち着いて下さい。取り合えず案内に関しては文さんを頼らせてもらいます。宜しくお願いします」


「分かりました。けど、暫く取材させて下さいよ」


「了解しました」



 このように双方の思惑が複雑に絡んだ会談は、思いのほか順調に進み最終的に以下の条項としてまとまった。


 一・・・自衛隊は我々からの要望、又は自衛のため以外では武力を行使しないこと

 二・・・自衛隊は2ヵ月以内に戦力を我々に公開すること

 三・・・自衛隊は我々からの要望があった際は幻想郷又はその特定地域の防衛、治安維持に協力する事

 四・・・自衛隊はその活動を広く広報すること



 以下の協定を自衛隊側が守って行動している場合、幻想郷側は以下の要望に応じる


 一・・・自衛隊側から要望のあった土地の提供を行うこと

 二・・・自衛隊に食料、燃料、弾薬の提供を行うこと

 三・・・幻想郷側は自衛隊に対して自衛以外の理由で武力を行使しないこと

 四・・・自衛隊の艦艇の上空を通過する場合及び自衛隊の駐屯地内に立ち入る際は事前に許可を求めること


 この協定を日幻相互安全保障協定と命名する

 協定は自衛隊が現代へ帰還するまで有効とする






2022年8月30日am11:00 人里  寺子屋内部(伊藤一佐視点)


 協定の内容が決まり双方、固い握手を結ぶ。


「では、紫さん。2年間ほど宜しくお願いします」


「2年間とは言わずずっといてもいいのよ」


「またご冗談を」


 こんなにも和やかに会談は終了した。


 しかし、俺はこの協定の内容に違和感を覚えていた。特に自衛隊側に課せられた第3条の部分である。


《自衛隊は我々からの要望があった際は幻想郷又はその特定地域の防衛、治安維持に協力する事》


 つまり八雲紫は幻想郷を防衛しなくてはならない事態が発生しうると考えているのか?


 ならば敵とは何だ?


 現代から来た我々に助けを求めなければならない事態とは一体何なのだ?


「あのぉ、少し良いですか」


 声をかけてきたのは初老の男性だった。

 集中していたせいで、近づかれるまで気が付かなかったようだ。


「えっと、あなたは……」


「私はこの里の里長をしているものです」


 不味い、非常に不味い。何故なら先の事件で対応にあたった木島は、人質をとられるなど事態を悪化させたのだ。挙句、市街地で発砲したときた。

 これが日本であれば自治体からの抗議どころか、市民団体も加わった自衛隊に対する猛烈なデモが発生することもあり得る。

 しかし、里長を名乗るこの男性から出た言葉は想像と違った。


「助けに来て下さってありがとうございます。里のものは皆感謝しています。本当にありがとうございました」


「いえいえ、当然の事をしたまでですから。それよりも我々の介入で事態を悪化させてしまい、何とお詫びすれば良いか……」


「そんなことは有りません! もしあなた達が来てくれなければ、もっと多くの損害が出ていたに違い有りません。お礼をしたいのですが何か協力出来ることは有りませんか?」


「お礼なんてとんでもない。我々は……」


「いえ、是非させてください。お願いします」


「わかりました。では、次に人里に来るときには部下たちを温かく迎えてやってください」


「わかりました。お待ちしています!」


「では、宜しくお願いします」


 里長が行ってしまってから、木島への罰を少し軽くしてやろうかなと考えたが……彼は少々独断専行の癖がある。やっぱり止めておこう。

いかがでしたか?

ご意見・ご感想・ご批評等お待ちしています。

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