第17話 雑談
お久しぶりです。
以前とある読者様よりご要望があったCV-22jオスプレイを搭載装備に追加しました
読者様よりご要望があり、なおかつ自分でも必要と感じたので今回は追加させていただきました。
ただし、今回のように全てのご意見やご要望を取り入れるのは困難となっておりますので
あらかじめご了承ください
2023年8月19日pm1:00 〝おおすみ〟科員食堂 (木島三尉視点)
駐屯地設営の話が持ち上がってからというもの、陸自の隊員達は働き詰めだった。
作業を担当しているのは普通科の隊員達なので、本職の施設科と同じような作業をすることは難しいのだ。
加えて厳しい残暑に晒されながらの作業だ。慣れないことをすれば疲れがたまるし、疲れは事故を誘発する。
そんな訳で午前中作業にあたった隊員達は空調の効いた輸送艦”おおすみ”の科員食堂で、昼食をとりつつ休憩することが許されていた。
「今から昼食ですか?」
「あぁ、小林一佐じゃないですか。どうかしましたか?」
三尉ごときが5つも階級が上の一佐に対して取っていい態度ではないが、この人は気にしている様子がない。
「少しお話をと思いまして」
「説教ならば間に合ってますよ」
「違いますよ。今日は蒸留施設の建設状態を聞こうと思いまして」
何故かは分からないが、この珍しい海自の幹部とは良く昼食を共にすることが多かった。
海自の幹部達は士官室と呼ばれる部屋で、集まって食事を摂ることになっていると聞いたことがある。旧海軍からの伝統らしいが、どうもこの艦長は例外らしい。
毎回のように科員食堂に降りてきては、列の最後尾に並んで食事を受け取っている。
輸送艦の艦長などという大層な肩書に付属するはずの威厳などまるで感じず、制服を脱いだらただの気の良いおじさんにしか見えない。こちらを見つけては気安く話しかけてくる。
頭が固くなりがちな佐官の幹部には、あまりいないような人物だった。
「あぁ、あれなら第4中隊と岩手の戦車隊が総力を挙げてやってますよ」
「こちらで頼んだ桟橋建設はどうなっていますかね?」
「できるだけやってますが、如何せん技術も人手も少ないので」
「すみません。無理を言ってしまって」
そして年下の部下にも敬語を使う徹底ぶりである。
艦長の威厳なんて全く感じられない。
「いえいえ、いずれ作らねばならなかったのですから。しかし、作業をしているのは施設科ではありませんので完成には時間がかかります」
「それにしては皆さんの作業が早いように感じますが……」
「それは我々が東北方面隊だからですかね。日頃から地域の雪まつりの支援をしているので他の隊より施設科と作業することが多いんですよ」
「頼もしいですね」
「労いの言葉なら、私のような幹部ではなく部下達にお願いします。その方が士気の向上につながりますよ」
「三尉はまじめですね。私でよければいくらでも労いますよ」
「一等海佐の肩書を持つ人から直接褒められれば若い連中も喜ぶでしょう。いつの時代も上司に褒められるのは嬉しいものですから」
小林一佐に対応しながら米を描きこむ飯を平らげる。自衛隊の文化として飯は10分以内に食べることがほとんどなので、この様に語りながら食べることには慣れない。
「そう言えば例の会談について何か進展はないんですか? 会議に出席したまでは良かったのですが、それ以降情報が降りてこないものですから」
「何だ。伝わってなかったのですか? 面会日は8月30日に決まったそうですよ」
「横須賀出港から20日目に面会ですか」
「感慨深いですか? あの時とは環境もおかれた立場も全然違いますからね。あぁ、それと向こう側の参加者も決まりましたよ」
「要人揃いですか?」
「ええ、紅魔館からレミリア スカーレットさん。博麗神社から博麗霊夢さん。妖怪の山から大天狗さん及び射命丸文さん」
「意外と知っている人が多いですね」
「案外そうでもないですよ。他には冥界から西行寺幽々子さん及び魂魄妖夢さん。地霊殿から古明地さとりさんが出席するとのことですが彼らの情報はほとんどないのが現状ですし」
「会談を名目に我々を誘い込み一網打尽にする魂胆ってことですかね?」
「さぁ、上陸した後の警備は全て陸自の管轄ですからそっちに任せますよ」
「そう言う小林一佐はこのメンバーどう思います?」
「どう思うも何も……単純にお偉いさんを集めただけだと思いますがね。これが罠ならばわざわざ出席者のリストを寄越したりはしないでしょうし」
彼が言うからにはそうなんだろう。
別に何の根拠もなく言っているわけじゃ無い。
親しくなった海曹から聞いた話しだが彼は昔、情報保全隊や海幕監部に勤めていたことがあるらしく、一部では情報のスペシャリストと呼ばれてたりもするらしい。
「まぁ、警戒するに越したことはありませんからね」
それから暫くはお互い飯に集中していたが、一佐はあたかも今思い出したというような調子で話題を振ってきた。
「あっそう言えば君に関する噂を耳にしましたよ」
俺に関する噂なら、もうどんな内容か見当がついているが一応確認をとってみる。
「へぇ私の? どんな内容なんですか?」
「君は特殊作戦群の指揮官だったんだって?」
あーやっぱりビンゴだ。
この質問をされたのは彼が初めてでは無いから慣れている。
「よくご存じで。やはり噂ってのは怖いですね」
「狭い艦内にいれば噂の広がりは早いので……まぁいいさ。その噂というのは君が特戦群を離れた理由についてでね。心当たりはあるかい?」
「……ありますよ。ええ、あります」
「もしよければ当時の話を聞かせてはくれないか?」
「……どうしても聞きたいですか?」
しかし思い出したくないものに変わりない。思い出そうとすれば今でも胸の奥がチクリと痛む。
「もちろんですよ。でなきゃこんな話題を飯の時間に振りませんから」
けれども下手に詮索されるより自分で話した方がマシなのも事実だ。完全に聞く態勢に入った小林一佐がここで退きさがるようにも見えない。
「貴方という人は……いいでしょう。お聞かせしますよ、忌々しい過去の話を……」
俺は苦笑しつつ過去の苦い記憶を掘り起した。
用例解説
大天狗…妖怪の山にいる天狗達のトップ。(原作設定があやふやなので性格等は本作品オリジナルです)
西行寺幽々子…冥界にある白玉楼の管理者で亡霊の少女。能力は「死を操る程度の能力」
魂魄妖夢…幽々子の剣術指南役謙白玉楼の庭師で半人半霊の少女。能力は「剣術を扱う程度の能力」
古明地さとり…地霊殿の主。ペットがかなり多いらしい。能力は「心を読む程度の能力」




