第12話 救助活動
お久しぶりです
今回は前回よりも長く書けましたよ(^_^;)
しかし、いかんせん忙しいため投稿ペースが遅れたり、内容が薄かったりすることもあると思いますのであらかじめご了承ください。
2023年8月16日pm12:10 紅魔館 庭園 (木島三尉視点)
「木島三尉、間もなくヘリが来ます。負傷者を館の外に出してください」
「わかった」
佐藤が無線を片手にCPと連絡を取り続ける中、山本がレミリアさんを支えながら館を出てくる。
「レミリアさん、間もなく救援ヘリが来ます。外まで歩けそうですか?」
「少し痛むけど……脚には傷を負っていないから歩けるわよ」
「申し訳ありません。あと少し我慢してください」
俺の心配をものともせずレミリアさんは苦痛に表情を歪めながらも気丈に振る舞うことをやめない。見た目が幼い少女であるだけに、その姿は痛々しい。
それから時間をおかず爆音と共に2機のシーホークが上空に現れた。
「思ったより早かったじゃねぇか」
シーホークはふらつくこと無く紅魔館の庭園に着陸してみせた。同じ自衛官でも陸海空の交流はあまりない為、海自の練度に多少の不安もあったがそれは杞憂に終わりそうだ。
「木島……これはいったい何なの……」
「詳しい説明は機内でしますから、早く乗りましょう」
レミリアさんがエンジンの爆音を響かせるヘリコプターを見て何を思ったのかは俺にはわからないが、その声音には畏怖の感情が混じっているようにも思えた。
「佐藤と松本はSITを連れて回収地点まで誘導してLCACで〝おおすみ〟に戻れ。俺と山本はシーホークで艦に戻る。いいな」
「「「了解」」」
「俺は1番機に乗るからお前は2番機に乗れ。いいな」
「了解しました」
山本にこう告げて俺はレミレアさん、咲夜さんを連れてシーホークの1番機に乗り込んだ。
「機長、この機体はどの艦に向かうんだ?」
「重傷者がいないので〝いずも〟に向かいます」
ヘットセットが無いのでキャビンからコックピットに怒鳴ると、機長も大声で叫び返しながらヘリを離陸させた。
「これは鉄でできているの?」
「はい、金属製ですよ」
「これほど大きな鉄の塊が空を飛べるなんて……」
「レミリアさんも、咲夜さんも〝いずも〟に着いたらもっと驚くと思いますよ」
咲夜さんはいまだに気を失っているから上空から艦隊を見れるか微妙なところだが、艦内についてからでも驚かされることは多いだろう。
2023年8月16日pm12:10 霧の湖 一号内火艇 (菊地三佐 視点)
「看護長、目標の容態はどうですか」
湖面から引き揚げられたフランは全身にやけどを負ったような傷ができており、明らかに無事ではなかった。砲で迎撃しては大きな怪我を負いかねないからと、魚雷という選択をとったのにも関わらずフランの受けた傷は想定よりも大きかった。
「心肺停止状態です。一刻も早く〝おおすみ〟に運ばないと命の危険があります」
頭の中が真っ白になりかけた時、俺の携帯していた無線にノイズがはしった。
「無線か? すみません、少しでます」
そう言って胸のカポックに装着してある無線を耳元に運んだとき、無線の相手が大声をあげたため驚いて無線を落としてしまった。
慌てて無線を拾い上げ無線に応答しようとした時、また無線から大声が聞こえた。
『〝みょうこう〟1号内火艇、こちら〝おおすみ〟医官、黒田三尉。オーバー』
「こちら〝みょうこう〟砲雷長、菊地三佐です。黒田三尉、感銘良好です。オーバー」
『えっ三佐!? 申し訳ありません』
「大丈夫ですよ、黒田三尉。それで、用件は何ですか? オーバー」
『申し訳ありませんが、そちらにいる看護長と至急代わってもらえないでしょうか?』
「わかりました。少し待っていてください」
無線を置いてバイタルチェックに勤しむ看護長に声を掛ける。
「看護長、〝おおすみ〟の黒田三尉が至急で君に用事があるらしい」
「わかりました。今代わりたいのですが、砲雷長は救命講習は受けたことがありますか」
「あぁ、一応あるが……具体的に何をすれば良いのか……」
「現在目標は心肺停止状態ですので、胸骨圧迫を30回と人工呼吸を2回の繰り返しでお願いします」
「わかった。魚雷長はブラックホークと連絡取って下さい」
やることがなく困っている魚雷長に取り合えず命令しておき、自分はフランに向き直った。
救命講習は受けたことがあるが、いざ実践となると頭が真っ白になってしまう。こんな時になって講習の指導に来た衛生隊の隊員の言葉を思い出した。
【胸骨圧迫は肋骨に負担をかけるので肋骨が折れることもしばしばありますが、気にせずにビビらないで行いましょう】
この言葉を思い出してしまい心底「嫌なことを教えやがって」と思ったが、見殺しにするよりマシだと思い気を取り直す。
「肋骨の一本、二本折れるかもしれないが命を救うためだ、悪く思うなよ」
そう呟いて、フランの胸の上で重ねた腕に力を入れた。
2023年8月16日pm12:15 SH-60k機内
「レミリアさん腕の具合はどうですか」
「少し痛むけど大丈夫よ」
レミリアさんは依然として気丈に振る舞っているが、止血帯から染み出る紅い血が痛々しい。どう見ても少し痛む程度の傷ではないのだが、本人のプライドが我々に弱みを見せることを許さないのかもしれない。
「申し訳ありません。うちの部下が狙撃ミスであなたを傷つけてしまい、何とお詫びすれば良いのか……」
「それよりも謝らなければいけないのは私の妹の方よ。聞きにくいのだけれども……フランはあの後どうなったのかしら」
「その……艦隊の方に近づき危険な状態になったため……やむ無く撃墜したとの報告を受けています」
「そう……今のフランの状態は?」
「”いずも”からの情報ですとフランさんは現在、心肺停止状態だそうです」
レミリアさんはそれを聞くとそっと目を伏せ唇を噛んだ。やはり彼女としてもこの結果は不本意なものだったのだろう。
「三尉、まもなく〝いずも〟に着艦します。準備してください」
機上整備員がローターの爆音に負けないように声を張り上げた。
「わかりましたよ。レミリアさん、艦に着いたら自分とは別の医療チームが来ますのでそちらで手当てしてください」
そんなことを言っているうちに、雲の合間から展開している護衛艦隊が見え始めた。
「これがあなた達の拠点……」
ヘリは〝いずも〟上空を飛び艦隊の周りを一周してから着艦した。
「レミリアさん、咲夜さん。ようこそ護衛艦〝いずも〟へ」
用例解説
胸骨圧迫…心臓マッサージ。倒れた相手が普段どおりの呼吸をしていないときに使われる。心肺蘇生術。




