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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

高嶺の花

作者: 音我手ぃ舞

私は俗に言う、「同性愛者」だ。


気付けば恋するのは女の子ばかり。


でも、まだ誰にもカムしていない。


だから、私は毎日、普通の女子高生として過ごす。


そんな日々に…終止符を打つ日がくるとは…










私、萩本 優は高校2年の秋を過ごしている。私はボーイッシュな上、男子の様にガサツな性格である。



私の通うこの高校は女子校な訳ではないが、女子の人数が圧倒的に多い。それは、この高校には、美容学科、ファッション学科があるからだ。専門学校のような感じである。私はファッション学科を選択して早2年。周りの子はお洒落な子ばかり。私も、たぶんダサくはないと思うんだけど、奇抜な子が多いこの学科ではまだまだ地味な方だ。そして、お洒落さんな女の子はみんなと言っていいほど可愛い子が多い。女の子好きな私にとったら天国だって?


いやいや、可愛い子のほとんどが彼氏持ちという現実を私は重く受け止めているのだ。そりゃ彼氏の2人や3人(?)いる事は当たり前に近い。高校生だしね。



まぁ、そんな事もあり、私のクラスは女子クラス。ほんとみんな可愛いのです。私はクラスでも地味な方なので、あそこでクラスメイトの中心で大きな声で喋っている、正田 めぐみちゃんになんかとてもじゃないが近づけない。でも可愛いなぁ。今日は少し化粧が濃いなぁ。


なんて考えながらぼーっとしてHRが終わるのを待っていた。







「じゃ、終わろうか、あ、萩本は後で先生のとこ来てね、はい、終わりー」





「えぇー、マジか…」



私の呟きは委員長の「きりーつ、礼」の声にかき消された。





私は先生のとこに行き、いかにも不機嫌な顔をして低い声で「何ですか?」と聞いた。



「お、お前そんないかにもな顔するなよー、まぁ、面倒な事頼むんだけど、そりゃそんな顔に「えぇー!!面倒な事ぉぉー」…はぁ、でも委員のやつだから仕方ないんだよねー」



「委員のやつならもう一人いるじゃないっすかー」




「そのもう一人の東は今日休みだ」




まじか…東さん…なんで今日に限って休むの…




私は東さんを少し恨みながら委員の仕事を引き受けた。仕事の内容は、アンケートの集計をとって、それをグラフにしていくという…とても面倒な仕事だった。ああ、貴重な放課後が…まぁ、帰宅部だし、別に良いんだけどさ。






私は自分の席で作業に取り掛かった。




「あ、萩本、終わったら先生のとこ持ってきて。終わんなかったら持って帰っていいからー、それと、帰る時教室の鍵かけて返してから帰ってくれなー」




くそ、担任め。




「はーい」




生返事して私は作業に没頭した。























どれぐらい集中しただろう、チラッと教室の時計を見れば、始めた頃から1時間は経っていた。もっと集中しようとスカートのポケットから音楽プレーヤーをだしてイヤホンを耳に差し込み伸びをした後また私は集中し始めた。


私は音楽を爆音で聴く癖がある。周りの音を一切消したいが為に音量をググっとあげる。大好きなバンドのギター音に酔いしれる。うん、これでだいぶ集中しやすい。私はガリガリシャーペンを走らせた。




その時、片方のイヤホンが外れた…いや…外された…誰?と思いつつ、顔を上げると、そこには…









「何してんの?萩本さん」








正田 愛ちゃんだった。






私は突然の事に驚きながらも、吃りながらも委員の仕事をしていると説明した。



すると正田さんは「そーなんだ、大変だねー、ってか驚きすぎだから笑」とケラケラと笑い出した。


そりゃ驚くでしょーが!だって目の前に人気者の正田さんがいるんだよ?ただのクラスメイトでも驚くよ…






「ごめ、ちょっとビックリした…はは…」


私は必死の苦笑い。心臓がドクドクいい始めた。正田さんは「まぁいーけどぉ」と呟いて何故か私の前の席の椅子を引き座った。





疑問に思った私は勇気を振り絞って声を掛けた。





「ま、正田さんかえっ…「めぐ…」…えっ?」






「正田さんってなんか硬い、めぐって呼んで、それから…萩本さんの下の名前なに?」



「へ?…あ、ゆ、優…」




「へぇ〜優ちゃんかぁ、じゃあ優って呼ぶねー」



「う、うん」



「呼んでよ、優」



「え、と…よろしく…めぐ…ちゃん」



「ちゃん〜???あはは、呼び捨て!わかった??」





無理だっつーの!!!!!頑張った方だよこれ!!!きっと今の私の顔は真っ赤だ。まさ、めぐちゃんとこんなに喋ったのは初めてだ。うう、緊張やばいんですけど。私はシャーペンを握る手に力を入れた。




「わ、わかった…めぐ」




「うん、よしよし…で、なんか言いかけなかった??」





「あ、そう、めぐ…は帰んないの?」




「あぁ、うーん、手伝おうかなぁて思ってー」




へ?て、手伝ってくれんの?もうこれ以上近くにいたら私が持たないんだけどなぁ…でも、手伝ってくれたら凄い助かる…ここは…




「ほ、本当?手伝ってくれる?」





「いいよぉ〜」





めぐはニコッと笑って私のペンケースから借りるね〜と言いながらシャーペンを取り出し、アンケート用紙に視線を落とした。




「じゃあお言葉に甘えます」




私も少し微笑みながら言った。











それから柔らかい時間が刻々と過ぎて行った。オレンジ色の光が教室に差して、先ほどまで聞こえていた、部活をしている生徒の声が聞こえなくなった。チラッとまた時計を見ればもうすぐ5時半を回る頃だった。めぐはとても集中して仕事を進めてくれていた。意外と真面目な所もあると知って彼女を少し見直した。もっとチャラチャラしていると勝手なイメージを抱いていたからだ。私は心の中で謝罪した。


そんな事を考えていた為、めぐの顔をしばらく見つめていた。その視線に気付いたのかめぐはシャーペンを動かしていた手を止め、用紙から顔を上げて私を見た。





「ん?」




夕陽に照らされた彼女の顔は綺麗の一言に尽きる。本当に可愛い顔をしてる。




「あ、いや、もうすぐ5時半だし、そろそろ帰った方がいいかなーって思って」




「うわっ⁉︎もうそんな時間?でもまだ終わってないよ?」



「大丈夫だよ、うちが持って帰ってやるから、しかも、めぐが結構やってくれたから助かったよ、ありがとう」




私は用紙を片付けながらまた微笑んでめぐにお礼を行った。めぐは私から目線を外さず、何か言いたげな顔をしている。




「優、あのさ、じゃあこれから質問攻めしていい?」




「…はい???」





「だから、今日友達になったじゃん?だから、色々知りたいじゃん!だから今から優に質問攻めするの!!」





悪戯っ子の様な笑顔で私を見た。その笑顔にドキドキしながらも「い、いいけど…別に」と返事をした。





そこからは、「好きな音楽は?」とか、「じゃあ〜好きな食べ物!」とか、「好きな色!」とか、とりあえずどうでもいい事ばかり質問してきた。めぐはずっと笑顔を絶やさずニコニコとしながら私の答えを予想したり、楽しそうにしていた。そろそろネタが尽きただろうと思った頃、こんな事を聞いてきた。<PBR







「じゃあ、好きな人は?」





誰でもこの質問をされたらドキッとするだろう。




「いないよ」




「いないの?じゃあ気になる人は?」





「いない」





「ふぅーん、じゃあ今まで付き合った人数は?」





はぁ、いつまで続くんだ、この質疑応答…




「いないってば、0だよ…ねぇ、もういい?帰ろ?」






「えぇーそうなんだ、ね、じゃあさ、最後の質問だから!ね?これ聞いたら帰るから」





そんな可愛い上目遣いでお願いしないでよぉ〜断れないじゃんか…






「分かったよ、最後ね、何?」









「うちのこと、恋愛対象として、見れる???」






私はしばらく時間が止まったような感覚に陥った。





「……それは…どういう意味?」

















「うち、優のこと…好きだよ、付き合いたい、てか、付き合え」





「は??な、なんで命令形??ちょっ、ちょっと待って、だってめぐっ…「待たない!優がうちのこと好きじゃなくても、好きにさせてみせるよ」…いやいや、だって…めぐは…その、普通の子でしょ?彼氏だっていたのに…なんで?遊び?なんかの罰ゲーム?」





私は突然の告白に驚き、何故か怒りを覚えた。それぐらいあり得ないことだと思った。ノーマルな、彼氏がいて、ちゃんとした恋愛をしていためぐが、正田 愛が、クラスメイトの人気者が、私を好きだと言っているのだ。何かがあるに違いない、私は直感的にそう思った。だが、めぐの顔は紅く紅潮していて、強い瞳で私を見つめていた。





「遊びなんかじゃない!罰ゲームなんかじゃないってば!!本当に…好きなんだって…」





軽く私を睨みながらもそう言った。真剣な顔がこれは遊びじゃないという雰囲気を醸し出していた。私はそんな真剣な顔のめぐを見つめ、「そっか…疑って…ごめん」と呟いた。




「別にいい…」




めぐも呟くように言った。





「ねぇ、めぐはうちが同性愛者って分かってた??」




少し気になっていたところだ。




「ううん、知らなかった、優、そういう子だったんだ」




めぐは優しい顔で私をじっと見つめていた。




「うん、でも、めぐのこと、特別な目で見てなかった…」




というより、自分から凄く遠くの存在だと思っていた。これが正しい。




「そっか」




「めぐ、彼氏はどうしたの?」




「別れたよ、2週間前ぐらいに」




「なんで?」




「優への気持ちに気付いたから、好きだって」




めぐは少し照れながら斜め下を見つめた。初めて彼女が私と目線を外した。




「…そっか…」




私はめぐになんと言ったらいいのか分からず、それしか言えなかった。めぐは再び私を見て言った。





「ねぇ、好きな人いないなら、付き合ってよ」




「うぅ、でも、やっぱ付き合うって両想いだからこそ…「だから!優がうちのこと好きにさせてみせるよ、お試しでいいからうちと付き合ってほしい…です…」





めぐはどれだけ自分に自信があるのかな。きっと相当なものだろう、だけど、最後はお願いしますって、とても小さな声でそう言った。顔を真っ赤にさせて。あーあ、なんて可愛いのか…好きにならない方が可笑しい。私は単純な奴だ。もうすっかり彼女の虜だ。さっきまでは高嶺の花の存在で友達なんかにはならないって思ってたのに…いきなり恋人だなんて。夢なら早く覚めて現実に引き戻してほしい。さっきから顔が緩んでしまって気持ち悪い面をしているはずだ。こんな私がめぐに釣り合う訳がない。私はもう一度聞いた。






「ほっっんとに!うちでいいの?めぐにはもっと釣り合う人がいるとおも…「ばか、優がいいの」…うぅ、なんでうち??地味なやつだよ?ふっつーなやつだよ?」





これが最も聞きたかったことなのかもしれない。めぐは真っ直ぐな瞳で私を見つめ続ける。そしてピンクのグロスでプルッとした唇が近づいてきた。






「優のこと、一緒のクラスになった時からずっと見てた。ただのクラスメイトの私に優しいし、頭うちより良いし、修学旅行の時、見たけど、シンプルでお洒落だったし、こうやって委員の仕事ちゃんとやってて真面目でしっかりしてるんだなって思ったし、てか、顔かっこいいし…とりあえず、優は…素敵な人だよ…普通なんて言わないでよ…」







そんな風に思っててくれたんだ。私を見ててくれたんだ。








「めぐ…すっごく嬉しい…ありがとう…」







「ううん、ねぇ、うちのこと好きになってくれる??」





めぐが私の肩に手を置いて、私より小さいので背伸びして顔をぐっと近づけてそう小さな声で囁いた。











「…ふっ…もう…なっちゃったよ…」









私は優しく微笑んでめぐを見つめた。





「ほんと…??好き?」





めぐが私の首に腕を回してきて抱きついている態勢になった。めぐの吐息が顔にかかるぐらい近い距離。












「うん、好きだよ……めぐ」












私は人生で初めての告白をした。夕暮れ、オレンジ色に染まる教室…なんというロマンチックなシチュエーションだろうか…







「ふふ、やったね♪優〜」




そう言ってさっきよりも強く私に抱きついてきた。めぐの甘い香水?の香りがフワッと香る。






「ちょっめぐ、苦しいぃ…」





「ん〜…ねぇ優…キスして?」







「へ?」




「優、初めてまだでしょ?」




う、図星ですけどね…





「う、うん…」



「優の初めて欲しい」






めぐはそう言ってプルッとした唇を突き出して首に回している腕に力を入れて引き寄せて私の唇を近づけた。





めぐと私の距離が0になった。


チュッというリップ音が教室に小さく響いた。




顔を離すとめぐは満足気にフフっと笑った。私はきっと茹でダコの様な顔になっているだろうな…





「優…好き…大好き…」





「…めぐ…うん、うちも好き…大好き」




きっとお互い顔が緩みっぱなし。めぐの頬はまだ真っ赤。リンゴの様だ。私は思わずその頬に手を伸ばす。めぐの柔らかい頬に触れる。するとめぐは自分の頬に添えられた私の手を包むかのように同じように添えてきた。人肌とはこんなにも落ち着くものなのか。ポカポカする。





「これからよろしくね…優」





「こちらこそ」




優しい二人の影分身がまた再び重なった。
















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