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最後の真実

作者: HALO

ある日、俺は屋上に呼び出され唐突に告白された。一つ下の、少なくとも俺の記憶では一度も会ったことの無い生徒にだ。


…正直、何故なのか全く分からなかった。


今までに面識が無いこともあって、俺はすぐに答えを出すことが出来なかった。

俺が暫らく吃っていると、俺に告白した子と瓜二つの子が屋上の扉を開け入ってきた。

どうやら俺に告白してくれた子は双子だったらしく、今入ってきたのが妹さんらしい。なるほど、双子ならば容姿が瓜二つなことにも合点がいく。

そんなことを考えていると、不意に妹の方が俺に声をかけた。

「早く姉の気持ちに答えてあげなさい」と。

俺は迷ったが“とりあえず友達から”という結論を出した。

俺のその言葉を聞き、告白してくれた女の子はとても喜んでくれていた。そして、妹さんは優しい表情をして「よかったね」と一言、姉に言った。


そんな二人の姿を見て、俺は素直に“可愛い”と思うことが出来た。会ったのは今が初めてのはずなのに、俺はすぐに彼女を好きになれるような気がした。それは紛れもない真実だった。これを“運命の出会い”と言うならば、まさにその言葉が一番合うだろう。

始業のチャイムが鳴り、教室へ戻る。授業が終わり休み時間となると、俺はさっきの出来事を一番信頼している友に話した。

その友は「その子、絶対に手放すんじゃねぇぞ?」

と言った。



…そんなことは分かっていた。そう、分かってはいたんだ。



兎に角、その告白された日から俺の毎日の過ごし方は大きく変わった。彼女…いや、彼女達と一緒に登校したり、お昼を食べたり、下校したり…休日には必ずと言って良いほど会ってデートをした。

そして、会う回数を重ねる度に俺はどんどん彼女に惹かれていった。



――いや、正確には“彼女達”惹かれていったのだ。



この時、俺は自分を憎んだ。優柔不断な自分を憎んだ。欲望に忠実すぎる自分を憎んだ。彼女達に想いを伝えない、弱虫な自分を憎んだ。其の癖、感情を抑えられない自分を…憎んだ。




…告白されてから、幾つかの月日が流れたある日。俺と彼女達が出会った時と同じく唐突に彼女達はいなくなった。理由は…今の俺には知る術は無い。


…いや、知ることすら許されないのかもしれない。


そう思っていた矢先、俺の友が血相を変えて俺に駆け寄ってきて言った。



――いつもお前と一緒にいたあの双子…今朝、交通事故にあったらしいぞ…



…どうやら、彼女達は即死だったらしい。そして、事故の原因は…彼女達の飛び出し。目撃者によれば、まるでタイミングを見計らって飛び出した…自殺のようだったそうだ。

そのことを聞いて、俺は大きな喪失感を感じた。結局その日は勉強をする気にもなれず、屋上で空を眺めていた。




事件の数日後に読まれた彼女達の日記には、俺のことと思われる文が多々あったらしい。

「まだ答えを出してくれない」

とか

「私たち二人が好きなのではないか」

とか

「まさか、お姉ちゃんと同じ人を好きになるなんて」

とか。


――俺たちの気持ちは一つだったんだ。


しかし、彼女達はもう帰ってこない。今更彼女達の気持ちが分かったところで、俺には何も変えることなんてできやしない。


…俺は真実が嫌いだ。何故なら、何時だって辛い事ばかりだからだ。


どうせならば…甘く、優しい嘘を俺に与えてほしい。



それから更に数日後、俺は彼女達の家族から非道く言われ始めていた。

「あなたさえいなければ私たちの子は…」

みたいなことを。

何故かと言えば、それは日記の最後の文にある。二人とも、日記の最後のページに

「彼は、私たちが大怪我したらもっと私たちの存在について考えてくれるだろうか」

といった感じの文が書かれていたからだ。

学校では、みんなが俺を好奇な目で見て

「人殺し…」

なんて言う奴らばかりだ。俺の友は

「あんな奴らの言うことなんか気にするな」

と言うが、確かに俺に責任があったことは間違いない。



――何故なら、彼女達の気持ちに応えられなかったから…



俺は放課後、屋上で空を眺めていた。そろそろ帰るかな…と起き上がると


――フェンス越しに彼女達が見えた気がした。


俺は、ただの自己満足かもしれないが彼女達に謝りたくて…想いを伝えたくて…。彼女達が聞いている気がしたから、ありったけの想いを言葉にした。


そして最後に、俺は一番彼女達に伝えたかった…俺が嫌いとする“真実”というものを、

「こんな素敵な真実なら好きになれるかも」

と思いながら口にした。


――俺は、君たち二人が好きだ。俺は…君たちと三人でいたい。君たちのどちらかじゃなく、君たちが好きなんだ。なぁ、だから…三人で一緒にいよう。


俺のその言葉に、フェンス越しに見える彼女達は優しく微笑みながら首を縦に振った。そして、俺に向かって手を差し伸べた。

俺は、引き寄せられるかのように彼女達に近づいていった。そして


――フェンスに足を掛け、彼女達の元へと飛び込んだ。


俺の体は重力に従い地に落ちてゆく。そんな中で、俺はこんなことを思った。


――俺は…二人が好きだ。二人を愛してる。世界で…いや、宇宙で一番誰よりも二人を愛してる。俺ももうすぐそっちに行く…そしたら、三人でずっと一緒に…永遠に一緒にいよう。



これが俺の一生での“最後の真実”だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結末及びストーリーにインパクトがありませんので、「俺」の気持ちの変化や最後に煮詰まっていく部分をもう少し丁寧に書かれましたら、深みが出てくるのではないでしょうか。
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