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コメディー短編(現代社会)

足が痛ぇぇぇえ!!

作者: 多田 笑
掲載日:2026/08/05

実話をもとにしています。

七月中、作品を書けなかった理由です。


少しでも笑っていただけたら嬉しいです。

 きっかけは、会社の後輩からの誘いだった。


「え? バスケ?」


「はい。黒井さんは異動してきたばかりなので、ご存じないと思いますが……うちの部署の男性社員は、月に一度集まってバスケをしているんです。よかったら、ご一緒しませんか?」


(バスケか……。しばらく運動してなかったし、お腹も出てきた。ちょうどいい機会かもな)


「いいよ。スポーツは好きだから、ぜひ!」


「よかった~。部長も喜ぶと思いますよ」


「あ、部長も毎回来てるの?」


「ええ。一番やる気があるのは部長なんです」


(部長、お腹めっちゃ出てるけど……本当にバスケできるのかな。これはダイエットには効果なさそうだな)



 バスケ当日。


「よーし! じゃあ、ウォーミングアップをしてから、3x3を始めよう!」


 部長の掛け声で、それぞれランニングやストレッチを始める。

 十分に体を温めたあと、メンバーを入れ替えながら3x3を行った。


「黒井さん!」


 後輩からのパスが飛んでくる。


 俺はスピードを落とさずドリブルで切り込み、そのままレイアップシュートを放つ。


 パサッ。


「ナイッシュー! 黒井さん!」


 後輩が歓声を上げる。


「やるな、黒井くん!」

「ナイッシュー!」


 部長や同僚たちも次々と声を掛けてくれた。


 数試合こなした後。


「はぁ、はぁ……ちょっと休憩しよう……」


 部長の一声で全員がコートの外へ向かう。


「あれ? 黒井さん、水分補給しないんですか?」


「だって、このあと飲みに行くんでしょ? どうせなら、喉をカラカラにして飲んだほうがビールがうまいじゃない?」


「さすが黒井さん! 本当にお酒好きですね!」


 このときの俺は、それが悪夢の始まりだったとは思いもしなかった。



 その後、一行は居酒屋へ。


「いや~、今日もいい汗かいたなぁ」


 部長が満足そうにジョッキを掲げる。


「黒井さん、バスケめちゃくちゃ上手でしたね」


 後輩が笑う。


「新エース誕生じゃない?」


 同僚も続けた。


「いやいや、照れますよ」


 そう言いながら、まんざらでもない俺。


 このあと待ち受ける地獄など、知る由もない。


「それじゃ、新エースの誕生を祝して──乾杯!」


 部長の音頭で宴会が始まった。


「はぁ~……ビールが最高だ。渇いた喉に染みるなぁ」


「黒井さん、ここのレバニラ、絶品なんですよ」


「本当!? 俺、レバー大好きなんだ!」


 酒も料理も進み、宴は夜遅くまで続いた。



(いっ……痛い……)


 明け方。


 突然、左足に走った激痛で俺は目を覚ました。


(筋肉痛じゃない……。なんだ、この痛み……?)


 ズキズキ、ジンジンと脈打つような痛み。


 眠ろうとしても痛みで目が覚め、そのまま浅い眠りを何度も繰り返しながら朝を迎えた。


 朝食のためにリビングへ向かう。


 しかし、足が痛い。


 まともに歩くことすらできず、足を引きずりながら何とか食卓へたどり着いた。


「どうしたの?」


 家族が驚いた顔で尋ねる。


「あのさ……昨日の夜、誰か俺の足を踏んだ?」


「は? 踏むわけないじゃん。ベッドで寝てる人の足なんて踏めないでしょ」


「……だよね。でも、本当に痛いんだ。誰かに全体重をかけて思い切り踏まれたみたいな痛さでさ……」


 仕事どころではない。


 俺は部長に連絡して休みをもらい、そのまま整形外科を受診することにした。



「痛風ですね」


 高齢の医師は検査結果を見ながら、あっさりと言った。


「え?」


(つーふー? ツーフー? Tsu-fu-? ……え、痛風!?)


「痛風って、あの足が痛くなる病気ですか?」


「そう」


「風が吹くだけで痛いっていう?」


「そう」


「でも、俺、まだそんな歳じゃないですよ!」


 俺の中では、痛風は完全に「高齢者の病気」だった。


 ほら、ドラマとかで、「わしゃ、痛風でのお……」なんて言ってそうなイメージがあるじゃない?


「痛風は若いうちに発症する人も多いよ。特に三十代」


「えっ!?」


「激しい運動をするアスリートが発症することもある」


「アスリート……」


(アスリートかぁ……。「痛風=アスリート」の証。ついに俺もアスリートかぁ……)


 思わずニヤニヤしてしまう俺を見て、医師は少し困ったような顔をした。


「まずは野菜をしっかり食べて、水分をたくさん摂ること。尿酸値を下げないとね」


「野菜……」


「そう」


「レバーは?」


「ダメ」


「ホルモンは?」


「ダメ」


「カツオは?」


「ダメ」


「白子は? あん肝は?」


「ダメに決まってるでしょ。あと、ビールもダメ」


「ビ……ビールが……ダメ……だと……?」


 俺はその場で膝から崩れ落ちそうになった。


「それと、適度な運動をすること」


「運動!」


 俺は勢いよく顔を上げる。


「ふっ、ふふっ……それなら大丈夫です! なぜなら俺は、昨日から天才バスケットマンですから!」


「ダメ」


「え?」


「激しい無酸素運動はダメ。ウォーキングみたいな有酸素運動にしなさい」


(えっ、昨日デビューしたばかりなのに……、引退!? もう引退なのぉぉぉ!!)


「先生……」


 俺は医師を真っすぐ見つめた。


「バスケが……バスケがしたいんです……」


「ダメぇぇぇ!!」



 こうして俺は、新たなフレンド「Tsu-fu-」と共に生きることになった。


 最近は発作もほとんど起きなくなり、平和な日々を送っていた……のだが。


 先日、久しぶりにヤツがやって来た。


 真夏。

 エアコンをガンガンに効かせた部屋で、サッカーのワールドカップを観戦していたときのことだ。


 足元が寒いくらいに冷えていた。


 痛風の発作中は患部を冷やすのがよいとされる一方、普段から体が冷えすぎると尿酸が溶けにくくなり、結晶ができやすくなることがあるらしい。


 そんな絶好のタイミングを狙ったかのように、マイフレンドが突撃してきた。


 そう。俺も各国代表選手たちとともに、痛みと戦っていたのだ。


 しかも、その時期は仕事の繁忙期。

 足を引きずって出勤し、帰宅すると倒れ込むように眠る毎日。


 あ、シャワーはちゃんと朝に浴びていましたよ。


 そんなわけで、七月はほとんど執筆も作品を読むこともできませんでした。


 皆さんも、飲み過ぎにはお気を付けください。

(お前が言うな!!)

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
こちらの黒井さんは、もしかしてブラック企業での日々の主人公の黒井さんでしょうか? ウォーキングはこの時期だと暑くて大変ですよね。 脱水に気をつけて、スポーツドリンクなどで水分補給してくださいね。 お…
何となく、途中から嫌な予感がしていたのです。……ああ、やはり。ウォーキングは天候に左右されやすいので、実はなかなか難しいのですよね。
エッセイではないのか……。 御本人を存じているわけではないので、これエッセイって言われたら信じます。 時期的にウオーキングがキツイですよね。 外があちぃ……! うちは、運動不足なら地下街歩けって言わ…
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