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三題噺もどき5

3年生

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/07

三題噺もどき―はっぴゃくごじゅうさん。

 




 真っ暗な部屋の中で、スマホを見ている。

 外は星が輝く、いい夜。

 雲一つないとは言わずとも、都会に比べれば星が綺麗に見える事だろう。

 ましてや、私の住んでいる住宅街は街灯が他より少ない。それは危機管理の点でいかがなものかと思うが、まぁ田舎ではそう物騒なことは起きない。……とか言っていて、起きることがあるから街灯をもう少し増やしてほしい気持ちはある。

「……」

 だから何だと言うことを考えているが、目の前のスマホには全く関係のないものが写し出されている。

 スクロールして、たまに止まって眺めてみて。また飛ばして。

 音は聞こえない。夜だもの。寝転がりながらイヤホンをするのは嫌いなので、動画は見ていない。

 ただ文字の羅列や、写真やイラスト、無音の動画が流れているだけ。

「……」

 無駄な時間だ。

 それはそれは、無駄な時間。

 今日は、一日中こうしていたような気がする。

「……」

 学校にはもちろん行っている。

 4月に入り、一学年上がり、最高学年となり。

 今年はいる1年生を迎えるための入学式とやらに、参加しないといけないもので。

 2年生で先輩の卒業式に参加して、3年生になれば1年生の入学式に参加して……生徒を入れるなら保護者を入れたらいいのに。

「……」

 もちろん眠くて眠くて仕方なかった。

 新しいクラスになっても、苗字が苗字なので席は後ろの方。

 横には教師と来賓が見える。後ろには、新入生の保護者。

 こっくりこっくりと船を漕ぐのも少々躊躇われる。

「……」

 だとしても、ほとんど関係ないのに、眠くならないわけもなく。

 というか、1年生だって眠かろうに……この学校の校長はやけにお話が長いのだ。PTA会長とやらが、空気を読んでまきで話してくれたのが唯一の救いだった。

「……」

 入学式が終われば、私たちは帰るだけ。

 多少のホームルームはあるが、それもほとんど進路の話とかばかりで面白くもない。

 3年生になった途端これだから、ホントに疲れる。

 ……1つ学年が上がって、1つ歳をとるだけなのに、なんでこんなに人生の岐路に立たされるのか意味が分からない。

「……」

 ただでさえ、毎日毎日。

 不安でお先真っ暗で、ストレスは少なくともあって、学校に行くのもそれなりに苦労はしている。……私は、あの子がいるからまだ学校にこうして行こうと思って動けている。

「……」

 いつからか、朝食を食べると嘔吐してしまいかけるようになってしまって、毎日毎日それで。実際に吐くことはないけれども、変な気持ち悪さを抱えたまま登校して……それももまぁ少しすれば落ち着くのだけど。

「……」

 それでも、ふいに、あぁ……と思うことはあって。

 だから、スカートの下に履いた体育ズボンのポケットに、常にカッターが潜んでいて。

 休み時間にあの子のところではなく、トイレに行ってみたり、騒がしい外の声を聞きながら死にたくなってみたり。

「……」

 何か一つでも、盲目的に追いかけることができれば違ったかもしれない。

 将来の夢なんてものをもって、進路に迷うこともなく、自分の未来をしかと見据えて、自信をもって、1つ1つの行動に意味を持って。

「……」

 そんな絵空事のようなことを考えたところで、何かが変わるわけではない。

 何もかもが決まりきっているように動いていけるのは、一部の人間だけだろうに。

 大抵の人間は、私以上に悩んで苦しんでもがきながら生きているだろうに。

「……」

 何を考えているんだろう。

 明日からも普通に学校に行って、普通に授業を受けて、あの子と昼食を食べて、また授業を受けて部活に行って。

 そんな普通の日々を送らないといけないのに、何を高尚なように思えることを考えているんだろう。

「……」

 さっさと寝て。明日の朝起きて。

 朝食を食べて、行かなくてはいけないのに。

「……」

「……」

「……」

「……ふぅ」

 視界が歪むのは気のせいで。

 死にたくなるのは気の迷いだ。










 お題:盲目・星・嘔吐

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