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短めです。読んで頂きありがとうございます!
ペネロペの不満そうな声にもマートン伯爵令嬢は顔を向ける事はしない。真っ直ぐに公爵令嬢を見つめている。
「ウィルヘルム公爵令嬢、皆の手本となるべき貴女が召し使いの真似事をなさるなどどういうおつもりですか」
アンジェリーナの言い分は正しい。紳士淑女の見本となるのは高位貴族に化せられた義務だ。
……え、私?私は…ほら、教育不足ですし忘れられてるし?はい、すみません。義務を放棄しています。申し訳ございません。
「先月まではそこのペネロペとかいう女を諫めていたではありませんか!なのに…それなのに!命じられてお茶を淹れるなど侍女のする事です!!!公爵令嬢がする事ではありません!命じられた時点で不敬も良いところですわ、たかだか男爵令嬢ごときに」
鋭い声と視線を向けられたペネロペはビクリ、と震えて下を向いて数秒後顔を上げた。
「酷いですっ…うぅ…ぐすっ……っわたし……コーデリアさんとお友達になってはいけないって言うんですか…っ!!!」
凄い、一瞬で涙が溢れ出した…うっかり本落として足の小指に直撃した時でもあんなに早く出ないよ?プロだ。魅了の力だけに頼らず演技力も磨いてるなんて…女優になれば売れっ子間違いなしだよきっと。勿体ない。
「おい、貴様!ペネロペに謝れ!学園では身分による差別は許されていない!!!身分に囚われた卑しい貴様のような奴が彼女を責めるなど笑止千万」
公爵令息が紳士の風上にも置けない鋭い声と視線をマートン伯爵令嬢に向ける。
「私、ペネロペの事を勘違いしていたの。今では友人なのですわ。ですから、勝手な考えを押し付けないで下さいませ」
「……っ」
公爵令嬢から言われた事がショックだったのだろう。マートン伯爵令嬢は悔しそうに顔を歪めて早足で立ち去った。
「マートン伯爵家に抗議しておく!!!あのような奴は退学にでもなれば良いのだ」
「ま、待ってアレク!あの人は羨ましかっただけだと思うの。大目に見てあげて?」
怒り心頭の公爵令息が抗議をするために歩き出そうとするのをペネロペが止める。
なるほど、親に連絡が行くと洗脳済みの生徒達が強制送還される恐れがあるもんね。それは困る、と。
そういえば、親達の事はどうやって洗脳するつもりなんだろう。一部ならともかく殆どの親はいくら外見がよくてもそれだけでペネロペに好意を抱くほど単純ではない。一月後のパーティーで洗脳するにしても、いきなり洗脳度Aとかにはならない筈だ。そうなれば、子ども達の様子がおかしい事に気づかれその原因となったペネロペの排除に動く家だってあるだろう。そうなればたかだか男爵令嬢の彼女に為す術はない。
《ザラ、オワッタ~》
《ロクワリ、ミリョウノミカタ》
《タブン、モウスグ、カクセイスルカモ?》
《カクセイ、クニホロブ、ビョウヨミ》
「……は!?」
「あら、あなたいつからそこにいたの?気が付かなかったわ」
まずい、声に出してしまった。
「も、申し訳ありません」
「別に怒ってないよ?ただ驚いただけだって!」
「お前まさかさっきの女の仲間じゃないだろうな?」
興味津々といった様子のペネロペと不信感マシマシの公爵令息は実に対照的だ。この二人と男の取り巻きだけならどうにかなるけれども、問題は、
「もしや…ザラ王女殿下では御座いませんか?」
あちゃーバレた。
最初に気づいた公爵令嬢に続いて伯爵令嬢も気づいたなこれは。直接会うのってもう七年前なんだけどなぁ。




