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読んで頂きありがとうございます。
「すごく久しぶりな気がする」
学園の書庫は私が休んでいた間に誰かが入った形跡はない。普段なら読みかけの本の続きを読む所だけど今日は流石に無理だな。北側の窓を開けると今日も複数の気配を感じる。
「精霊さん達、手伝って欲しい事があるんだけど」
《ナニナニ》
《ザラ、オネガイ、カナエマス》
《マセキ、クレルナラ》
呼び掛けると世界樹から神託を受けてから毎日顔を会わせている三体が当然のように姿を現した。そして、他にも見覚えはあったりなかったりするが、複数のまんまる達。
「魅了がどのくらい広まっているのか確認したいの。【鑑定眼】と【気配遮断】を今から三時間掛けて欲しいのだけど」
《カンテイガン、オキヒウケ》
風の精霊がふわふわと飛んで、
《ケハイシャダーン》
水の精霊がくるくると回る。
「ここにある人間の魅了の程度について教えてくれたら、この魔石一つあげるわ」
私の小指の爪くらいの魔石を見せる。
役割がなくて落ち込んでいた精霊達がぽこぽこと跳ね回って、王太子に準備して貰った生徒の姿絵付きの書類を覗き込む。個体差はあるようだが、私に話し掛けてくる精霊達はこの国の言葉を理解していて、書けるかは不明だが読みと話す事はできる。なので、
《クルクルキンパツ、チャパツストレート、ナカヨシ》
《イッショ、カクニン、スルデス?》
《コノ、アオメ、キラーイ》
《ウンガ、ナカッタナ、アキラメロ》
《イエーイ、クッキーダ》
《イイナー》
《ウラヤマ》
好き勝手言いながら各自担当を決めている。割り振る手間がないのは有難い。面倒臭いからね。
《ザラ、カンテイガン、オッケー》
《ケハイシャダーン、カンリョ》
「ありがとう。魔石はこれで足りる?」
親指の爪の大きさの魔石を三つずつ差し出す。
《チョット、オオイ》
《ジカンフヤス?マセキヘラス?》
「じゃあ、時間を増やして」
《リョーカイ》
《ヨカッタ》
「…やりますか」
学園に入学して初めて教室へと向かった。
「えーつまりこの魔方陣を完成させるにあたり……」
授業は案外真面目に受けているらしい。試しに教師を【鑑定】してみたら、洗脳度はDからCが多かった。
関わるのが授業中だけなのと教員室が生徒との生活範囲からやや遠い場所にあるから洗脳に時間が掛かって下手な事はできないって事なんだと思う。
ちなみに、私は教室に入ったけど誰からも気づかれていない。【気配遮断】の効果恐るべし。
場所変わって昼休み。第一食堂。
食堂は第一と第二があって、第一が高位貴族、第二が下位貴族向けとなっている。ただし、どっちを使うかは生徒の自由…と規則上はなっている。
「ペネロペ様よ」
「今日も愛らしいわね」
「ペネロペ様の周りは華やかで羨ましいわ」
「俺もあの和に入れたらな」
「高望みし過ぎだろ!見ろよあの面子」
羨望の眼差しを向ける男子生徒を嗜めるように男子生徒が示す。
第一食堂の中央のテーブルを陣取っている集団。
一人の女子生徒を囲うようにして群がっているのは、
公爵令息、公爵令嬢、侯爵令息、侯爵令息、伯爵令息、伯爵令嬢、子爵令嬢の計七名。
令息だけでなく令嬢を侍らせているのは少し意外だ。
てっきり魅了して、物語でいうハーレム(一般的には男が女を侍らせている)の形成をしているのだと思っていた。
ちなみに、公爵令嬢は第二王子の、伯爵令嬢は騎士団長の息子の婚約者である。子爵令嬢はわからない。
それにしてもペネロペって子確か男爵令嬢じゃなかったっけ?怖くないの?いやまあ、魅了してるから無敵な気分なんだろうけど……。
それにしても魅了結構進んでそう……。食事マナー下位貴族としても微妙なラインなのにみんな嫌悪感どころか微笑ましそうに見てるだけで、誰も咎める雰囲気が無い。少なくとも第一に今いる生徒はC以上かなあ…。今すぐ全員は視れないし確証はないけど。
「ねぇ、コーデリアさんお茶淹れてくれる?」
ペネロペに頼まれて公爵令嬢が立ち上がる。
「もちろんですわ」
心から喜んでいるようにしか見えない笑みを浮かべながら紅茶を淹れる公爵令嬢。
…恐れ知らずと言うべきか。魅了にかかって居なければその場で打ち首にされてもおかしくない不敬だ。
「うーん、ちょっと渋いかなぁ?淹れ直してくれる?」
「申し訳ありません、すぐに淹れ直します!」
不敬だよ、命知らずにもほどがある…。
第二王子は魅了に掛かっている間の記憶なかったし、彼女達も残らないよね?残ってたら発狂しちゃうかもしれないし、どうか記憶が残りませんように!!!
公爵令嬢の実家は筆頭公爵家。王家だって気を使うくらい力を持っている上、現公爵は子煩悩で有名だ……これもしかして、国助かっても私助からない?
今まで放っておいたからなー。精霊達の言葉を精査しなかったのが運の尽きかぁ…謝罪とポーションで相殺してくれる事に賭けよう、うん。
さて、主要な人達が集まってるから早速鑑定しましょうか。近づかないと不特定多数も鑑定しちゃうから…ペネロペの背中が見えるこのテーブルでいいかな。あんまり視線の先に居たくない。【気配遮断】はしてるけど、姿が消えてる訳じゃないからね。
【鑑定】
コーデリア・ウィルヘルム
ウィルヘルム公爵家長女。
魔法適性:攻撃、火。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負荷多大。直
ちに解除を推奨。
ハウリーン・エイブンローズ
エイブンローズ伯爵家次女。
魔法適性:防御、土。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負荷多大。直
ちに解除を推奨。
エミリー・ロズリー
ロズリー子爵家長女。
魔法適性:付加。
魅了の影響下にあり。洗脳度C。精神への負荷軽度。解
除を推奨。
アレクサンダー・レイズローグ
レイズローグ公爵家嫡男。
魔法適性:光。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負担中等度。
速やかな解除を推奨。
エドワード・ウィスタリア
ウィスタリア侯爵家次男。
魔法適性:火、風。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負荷大。早急
な解除を推奨。
ウィリアム・エイヴィス
エイヴィス侯爵家嫡男。
魔法適性:水。剣術適性:高。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負荷中等度。
速やかな解除を推奨。
ノア・ドリュー
ドリュー伯爵家三男。
魔法適性:攻撃、水。
魅了の影響下にあり。洗脳度A。精神への負荷軽度。
解除を推奨。
ペネロペ・ループ
ループ男爵家長女。
魔法適性:闇。加護:■■■■■
称号:魔女の道化。
加護の効果:【自分に好意を持った相手】もしくは【術
の効果範囲に一定時間いる者】に対し自身を好意的に
感じるよう洗脳する。目を合わせると効果が強まる。
術者に対し嫌悪感が強いと時間が掛かり、好意がある
と即時性が強まる。洗脳度E~S。洗脳度がSとなり精
神負荷が多大に達した場合対象者の人格は崩壊、修復
不可能となる。
あ、まずい。
一旦目を閉じて近くの空いている席に座る。短時間で視すぎたらしい。危うく立ち眩みでよろける所だった。
【鑑定眼】は目に魔力を宿している間相手の情報を読み取る事ができる魔法だ。無属性の適性があって、闇属性の精霊から力を借りる事で発動できる。一見便利だが、個人のあらゆる情報が流れてくる。それらを処理できないと知恵熱で倒れたり、眩暈や頭痛、吐き気等の副反応が大きいと知識として知ってはいたけれど……。
体験するとおいそれとは使う気にならない魔法だ。
「あら、あなた見ない顔ね?」
ペネロペと目が合う。
え、バレた?
「…ウィルヘルム公爵令嬢」
と思ったら私の後方に視線を向けたらしい。声出なくてよかった。危ない危ない。
ペネロペが声を掛けた令嬢はペネロペには答えず、公爵令嬢に声を掛けている。おや、この反応は…。
【鑑定】
アンジェリーナ・マートン
マートン伯爵家長女。
魔法適性:水
魅了の影響下にあり。洗脳度E。精神的負担極少。魅了
から物理的に距離を置くことで解除される。
やっぱり、洗脳度が軽い。
「ちょっとぉ、無視しないでくれません?」
まだ、影響少ない生徒もいるのだと安心していたらペネロペが不満そうな声を上げた。




