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「…相変わらず薄暗い」
ギイィ…と建て付けの悪くなっている扉を開けて証明を付ける。が、真っ暗闇から手元が辛うじて見える程度の光度しかなく、持ってきたランプに火を灯す。
「……」
手元の物が何か識別できそうな程度になった。
無いよりはマシだが、マシな程度であってそれなりに広い倉庫の中を一つずつ照らしながら探すのは骨が折れる。
「ねぇ、精霊さん。この部屋明るくできたりしない?」
私は光魔法に欠片も適正がない。故に初歩的な周囲を照らす魔法も使えない。精霊にも適正属性があるが、よく会う三体のうち一体は光属性だったと記憶している。
今までも何度か力を貸すと持ちかけられたが、必要がなく断っていた。今回ばかりは、精霊達の気の向く限りは力を借りる事になりそうだ。
《マリョク、クレルナラ》
「…そうねぇ…これくらいで足りる?」
勝手に魔力を吸いとられるとどの程度取られるかわからないから、魔力石を見せる。親指の爪くらいの大きさだ。
《イイヨ》
《イイナー》
《ウラヤマ》
「…思ったより埃が少ないのね」
精霊が照らすと先程までの薄暗さが何だったのかと思うほど視界が開けた。
宝箱、絵画、鏡、壺、布袋、ランプ、石盤、錆びた剣、毛皮、大きい布等々……骨董品と呼ぶに相応しい多様な物が無造作に置かれている。しかし、インクなどで汚れている事はあってもカビや埃などはなく、小綺麗で、窓がないのに空気もこもっていない。
《ココ、カピカピマンドレーク》
《コッチ、ユニコーンツノ》
手前から確認していると、精霊達に呼ばれ奥へと進む。
「これが…?」
精霊達が示す袋には緑色と銀色の砂がそれぞれ入っている。
《コナゴナカピカピマンドレーク》
《コナゴナユニコーンツノ》
「…………」
世界樹から貰った聖なるポーションの作り方の続きを見る。
素材を手に入れたら、加工に移ります↓
一、マンドレークを五年乾燥させた物を用意し、跡形もなくすり潰す。
一、ユニコーンの角は満月の光を一晩浴びせた物を粉末にする。
※ユニコーンの角は硬すぎる為、オリハルコン製の鉈とすり鉢とすりこぎが必要です。
なるほど?加工後、の粉末って事か…え、これ作った人、オリハルコン採りに行ったの……?宝物庫にあったりするのかな。オリハルコンのすり鉢…ちょっと見てみたい。
「これ、最近作ったって事はないだろうなぁ。いつの粉かわかる?」
《サァ…?》
《サイキンデハナイ》
《ムカシ、ムカシノ、ハナシデス》
「そっか、痛んだりはしてなさそうだけど……ん?」
汁とか出てないか袋の外側を確認してたら、ルーン文字が縫い付けられてあった。
ルーン文字は古代文字の一つで、大昔の魔法士が使っていたとされている。遺跡から発掘された魔道具や石盤に刻まれていたり、書跡が見つかったりしているがどれも高度な魔法ばかりで現在の技術では再現不可能なものばかりなんだそう。
「…何か付与されてる……じ……かん、て…いし……じかんていし、時間停止!?」
刻まれた魔方陣に書かれたルーン文字は【時間停止】。今の時代では再現できない古の技術。作られたのは数百年は前だろう。完全に国宝レベルのアイテムだ。
「…報告は後でいいか。素材の鮮度維持の方が優先よね」
今報告すれば、そもそも何故倉庫に入ったのかとか魅了の話云々もしなくてはならない。それなら先にポーション完成させた方が話が早くすむはず。決して面倒臭いとか怠いとか、そんな事、オモッテナイヨ。
「あ、大きな鍋」
ユニコーンの角の粉末の横にある布が気になって取ると、大きな鍋があった。これだけ大きければ聖水を容れるのに丁度良いのでは?
『中々順調じゃな、感心感心』
しばらく声がしなかったけど、ちゃんといたんだ。
いや、見てたが正しいの?よくわかんないな。
「聖水は世界樹様の泉にあると言ってましたが、木の根元のどこかでしょうか?往復が楽な場所だと助かるんですけど」
そんなに甘くないよねー。
『鍋の準備が出来たら入れてやるわい』
めちゃくちゃ甘いじゃん、いいの!!?
「……手伝って貰ったら、物凄く面倒な供物捧げないといけないとかありません?」
今更ではあるが、精霊達に対価を払っているのに世界樹に対価なしとかありえるのだろうか。
お伽噺でも小説でも精霊や悪魔とかに何かをお願いする時は何かしらの対価を払っていた。
どうにかしろと言ってきたのは世界樹の方だけれど、最終的にやると決めたのは私。だったら、助力を得る度に対価が必要なんじゃないの。
『失礼な娘じゃな。どうにかしろと言うたのだから、多少の協力はするわい』
「…そういうものですか?」
『そういうものじゃ』
釈然としない部分もあるけれど、悩んだ所で答えは出ない。少なくとも国が崩壊を免れるまではどうこうされる可能性は低い、と思う。
《ウマウマ》
《シフクノ、ヒトトキ》
《ザラ、マリョクキレイ》
三体から精霊の鱗粉を貰った対価に、拳一つ分になる量を各々に渡すと大喜びしている。
「材料そろったし、ポーション作るとしましょうか」
倉庫から離宮へと運んだ大鍋と素材達を並べて袖を捲る。
数時間後。
「……あらぁ…」
真っ黒のブクブクと泡立つ粘状の液体が鍋一杯に完成した。




