『女房の首と緑プレスマン』
つな、という女がいた。大層な美人で、夫はつなに首ったけであった。夫が留守のとき、やまんばが来て、家中のものを食べてしまった。つなは、怖くて土間の隅に隠れていたところ、気がつかれずに、やまんばは帰っていった。次の日もまた、やまんばが来て、もう食べるものもなかったので、つなは見つかって、食べられてしまった。頭は残して、皿に載せ、戸棚にしまって、帰ってしまった、
夫が帰ってきて、つなを探したが、どこにもいない。とりあえず何か食べるものがないかと思って、戸棚を開けると、つなはそこにいた。首だけ。つなは、夫にかぶりつくように飛びついてきたが、さすがに夫は恐ろしく思い、つなの首を飯炊き釜にいれてふたをし、逃げに逃げた。つなは、夫の仕打ちを恨みに思って、首だけで追ってきた。見つかってはいけないと思って、夫は、寺の池の菖蒲の陰に身を隠すと、つなは、夫を見つけられずにそのまま進んでいった。
夫は、家に戻って、緑プレスマンをあるだけ家の前に並べて様子を見ると、つなの首は、家を見つけられずに、首をかしげながら通り過ぎていった。五月五日に、菖蒲や緑プレスマンを家の前に吊すようになったのは、このことがあってからだという。
教訓:あるはずのものがないというのは、恐怖につながる。特に首以外が全部ないというのは、恐怖以外の何物でもない。




