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1プラス壱  作者: 明田 合志
2/2

始まった。Ⅰ

 現在、気温32度。時刻、12時ちょっとまわったくらい。状況……理解不能。


「随分といきなりだな」

 

皆さん、現在、僕は相当意味不明な男になってしまいました……目の前の少年──大津深太(おおつしんた)のせいで……


「せめて説明しような? この騒ぎが起こった理由くらい!!」

 

 現在、僕の目の前には一人の少年がいる。言うまでもなく、大津だ。

 

 しかし、特筆すべきはその後ろ。何故か、県立川上高校──我が校の名前だ──の、1年C組からE組の生徒がD組の教室の中に、全員集結していて、全員、こっちを向いている、いや、睨んでいる。

 

 ……普通にびびるんですけど。


「それは、俺の義務なのか?それとも、お前の希望か?」 


「両方だ」


「欲張りだな」 

 

 顔色も変えずにやつは即答した。

 

 ……ここまで来ると、逆に怒気は失せるよね。


  暴力をふるう気はないけど、とりあえず精一杯睨んでみた。


「……理解した。お前は説明しなきゃ話すら聞く気がないんだな? なら、説明してやる」


 睨みは効くのかな?

 

 長い髪を触りながら、大津は言った。でもやっぱり、偉そうな態度と顔色は変わってない。

 

 偉そうだし、第一、遅い。が、説明してくれるのならもうなんでもいいか。

 

 でも、ここでありがとうって言うほど、僕は寛大じゃない。だから……


「何でお前が、そんなに偉そうなのかも説明してくれない?」

 

 一応、仕返しはする。

 

 出来る限りの最大の笑顔で皮肉ってやった。 

 

 だけど、僕の反撃は全く効いていないらしく「話が長くなるから、省略」と大津はやはり顔色を変えずに言葉を出す(悔しいけど、予想通りだ)。 


「……説明をするぞ。簡潔に言えば、これはいわゆる一つの事件だ」

 

 梅雨前になって、だんだんとサウナ化してきた僕の心と身体を、冷たく、鋭利なものが貫いた。

 

 ──事件?


「それ、マジなの?」


「ああ。女子生徒の鞄が三時限目の体育の間に無くなったんだ。」


「盗難か……」

 

 殺人とかをちょっと予想してたよ。不謹慎だけど、ちょっと安心。


「いや、違う。鞄はその後、見つかったんだが……」 

 

 そう言って、大津は右手の方を指差した。


「うわ、ひどい……」

 

 そこには、ずぶ濡れになって見るにも無惨な姿になった鞄があった。


「さっき、俺が見つけたんだ。この教室の真下の池でな。とりあえず、先生に届けようと思って、校内に入ったら、D組の生徒に何故か誤解されてしまってここに連れて来られたんだ」

 

 大津は例の如くさらっと言う。が、今の言葉は、少し何か引っかかる。何だ?

 

 考えろ……何かおかしい。何か……何かある。力を解放しろ! 僕の脳!

 

 ――はっ。

 

 もう一度、僕を冷たいものがつきぬけた。何てことだ……つまり……つまり、お前は……


「お前は容疑者としてここにいるんですね?」 


「その通りだ」


「帰るっ」


「ま、待て。気持ちはわかるが、まあ待ってくれ」


「お前のせいで共犯者として疑われたら、どうするんだ!!」


「案ずるな。もう多分疑われてる」


「案ずるわっ。大体どうして、僕を呼んだんだよ!」  

 

 面倒ごとに巻き込みやがって。ああ、何で僕ものこのこと来たのさ…… 


「お前を何故呼んだか? そんなの解りきってるだろう? 事件を解決するためさ」

  

 ──は?

 

 耳を疑った。

 

 何度も、何度も。そして出た結論はやっぱり……

 

 ──は?


「は? は? 大事なことだから三回言う。は?」

 

 何を言ってるんだ、こいつは。そんなことできる訳が……


「いや、できる。俺とお前なら」

 

 そんなこと言われても、これっぽっちも嬉しくないわっ。


「でも、一体どうするのさ?」 

 

 解決できる可能性は0に近いと思うんだけど。

 

 しかし、大津はそこで今日始めて表情を崩した。


「大津?」

 

 笑ってる。大津が笑ってる……?


「大丈夫だ。犯人なら解ってる」


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