第六話 終戦
「どうやら間に合ったな」
第七艦隊が敵本星宙域に達した頃、友軍は敵艦隊と対峙して砲火を交え始めていた。
ここまではGユニットをパッシブにしていたのでこちらの動きは察知されていない。だがこれ以上進めば通常の索敵網に掛かる。敵本星の周辺には通常艦による防御陣が布かれている。
「予想よりも多いな」
約百隻。数は多いがGシップと通常艦では戦闘力が桁違いである。時間を掛ければ壊滅も可能だが、
「さて本陣への通信回路を開いてくれ」
と指示するリシャール。同時にユニットをアクティブに切り替える。
「第七艦隊現着。これより作戦行動に入る」
簡潔に通信を終えて、
「では予定通りに」
第七艦隊が敵軍へ向けて突撃を開始した。
重力場を全開にして、こちらからは一発も撃たずに敵陣を突き抜けていく。二隻の揚陸艦が敵本星に向かって突入を開始し、残りの四隻で四面体陣へと組み替える。戦闘力の無い後尾艦は敵本星側に配置されて、残りの三隻で敵の攻撃に備える。
「攻撃を仕掛けてくる艦に対してのみ応戦しろ」
敵艦は寄せ集めで、およそ組織だった動きを取れずにいた。
「勝負の決まった戦いで、余計な犠牲者は出したくない」
人道的な見地と言うよりも、勝った後の占領政策の都合である。
突入から降伏受諾までおよそ三時間。強硬派の元首がやや発狂気味に国民に向けて徹底抗戦を呼びかけたが、側近に諫められて自決した。と公式には発表されたが、部下の一人に撃たれたらしい。
「迷惑な話だな」
後で話を聞いたリシャールが珍しく怒気を含んだ一言を漏らした。
時間は少し戻って降伏宣言が出る直前。
「おいヤバいぞ」
とアイザックから通信が入る。
「何が?」
「本戦の方だ」
と言われてそちらの戦況を画面に出す。
「これは、まさかアレか?」
友軍が敵の中央部へ突入し、敵がそれを左右から包み込むように動く。
「アレを本気で考えるやつがお前以外に居たとはなあ」
「確かにヤバいな」
リシャールは飛竜に敵旗艦の撃破を指示する。G砲ならばギリギリで射程内だ。
「アレって何だ?」
ヴァイスが声を潜めて訊く。
「完全包囲陣。二個艦隊、十二隻のGシップで構成する正二十面体の中に敵を囲い込んで殲滅する必殺の陣形ですよ」
ユニットの共鳴によって発生した超重力場によって内部に閉じ込められた敵は圧し潰されて自壊する。
「理屈は判るが、十二個のユニットを共鳴させるのは至難の技ではないかな」
「アイザックによると技術的には可能だそうです。但しこれが通用するのは通常艦相手のみ」
Gシップなら多少は持ちこたえる事が出来るが、
「問題はGユニットの破損で・・・」
ユニットは通常の攻撃では傷もつかないが、アクティブ状態で衝突させると共鳴破壊を起こす。ユニットの暴走によりミニブラックホールが発生する。
「と言う事はあのまま包囲陣が完成したら?」
「閉じ込められた友軍のユニットがすべて暴走すれば、包囲している艦隊もろともに自壊するでしょう。巻き込まれるのは我々だけでなく、この星域ごと消え去るでしょうね」
「それにしては落ち着いているな」
「包囲陣が完成してもユニットをすべて共鳴させるのは難儀ですからね。それに内側から破るのはほぼ不可能としても、外側から打ち破るのは簡単です。まあ風船を針で突くようなものですよ」
「それはそれで危険じゃないか?」
「まあ完成する前に止める方が安全ではありますね」
飛竜のドラゴンブレスは敵旗艦の後部推進機関を直撃して大破させた。
「あの司令官とは話してみたかったが。まあ致し方ないな」
とリシャールはぼやいた。
敵旗艦の撃沈と、本星からの降伏宣言はほぼ同時だった。その為に完全戦闘が止まるまで若干のタイムラグがあった。
リシャールはこの降伏宣言を受けて、
「たった今テトラ連合より降伏が宣言された。これに基づき帝国軍の発砲を辺境伯リシャールの名において禁じる。これに反するものは帝国への反逆とみなして軍法会議で死刑にするので覚悟しろ」
とこの戦場全体に布告した。
これを聞いて帝国側からの発砲は完全に止まった。連合側も次第に状況を理解して戦闘を停止していったが、最後まで発砲を続けた艦が一隻だけあった。リシャールはこれに対して飛竜による砲撃を準備させたが、近くにいた味方艦からの砲撃で撃沈された。
帝国は元の艦隊編成に戻り、連合側も艦隊単位でまとまって彼らに道を開けた。
「小官は帝国軍機動艦隊総司令ベルトラン・デュ・ゲクラン大将である。テトラ連合の降伏を受諾し、その武装解除を行う」
リシャールもゲクラン大将が本陣を置く第三艦隊旗艦に移動して本星に降りることになった。停戦は辺境伯リシャールの名前で発効したので、帝国法上ではこの星系は彼の鹵獲物と言う事になる。
「取り合えず、敵の艦隊は人員をすべて第五艦隊に移して、ゲートを繋いで帝都へ送ってください」
ゲートの接続はアイザックの工作艦が担当する。
鹵獲したGシップは十隻。撃沈された二隻のユニットは第七艦隊が回収して工作艦に積み込まれた。




