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会合戦記 疫病神と呼ばれた提督は望まぬ出世街道を突き進む  作者: 今谷とーしろー
深謀篇

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20/21

第一話 勇退

 一連の反帝国連合軍との戦役は半年ほどで終息した。

 帝国領に侵攻直後にリシャールの第九艦隊と遭遇して撃破されたオランジュ連邦は宰相の外交交渉によって事実上の従属国に収まった。

 帝国と連邦の中間宙域にあった未開拓星系に中立地帯が設定され、双方がGユニットを二個づつ提供し、三個が共同管理となるゲートの形成に用いられ、残り一つを核として要塞が構築された。

 オランジュの離脱により侵攻軍はほどなくして撤収を始めた。帝都に残っていた第二艦隊が条約調印のために中立地帯に向けて進軍を始めたからである。オランジュの艦隊もこの宙域に向かい、両艦隊がその存在を見せつけるかのように会合したのである。

 最も敏速に反応したのがこの宙域からは最も遠い場所で帝国第四艦隊と対峙していたティエンロン帝国であった。元々孤立主義で帝国とはほとんど利害関係を持たなかった国である。通商関係にあった隣国ヌヴェリューヌとの義理で参戦し、あわよくば利益のお零れに預かろうとしていた。

 続いてそのヌヴェリューヌも兵を退く。この戦役に参戦したほぼすべての国と隣接する交通の要衝に位置し、通商で財政を維持していた国である。元々帝国とは関係が良好で戦火を交えたこともなかった。反帝国の急先鋒であった強国テトラ連邦の圧力に屈して兵を動かしたが、戦意は元々低い。

 最後まで戦意を失わなかったのは帝国に匹敵する戦力を有するテトラ連合である。四つの居住可能星系を領有し、七個艦隊を保持する。この侵攻作戦にも六個艦隊を動員して二か所の要塞を同時に攻撃していた。これと対峙したのが帝国側では第六と第七艦隊。この方面だけは単なる睨み合いでは済まずに砲撃戦が繰り広げられた。

 老練な第六艦隊司令は敵の退却に対して要塞と連動して軽い一撃をお見舞いしたが、実戦経験の少ない第七艦隊司令は踏み込み過ぎて手酷い逆敵を食らった。旗艦に被弾して司令本人を含む司令部の半数を失う事になった。

 第七艦隊は結成から間もない急造艦隊であったが、むしろそれが幸いしたのか、各艦が個別に対応して最悪の事態だけは避けられた。テトラ連合軍側としても撤退が目的なので、乱戦は望むところではなかった。

 この時司令官と共に戦死したメンバーには第八艦隊からの移動組、つまりリシャールの元部下が数名含まれていた。

「彼らは自制するように進言していたのですけれどね」

 と生き残りが後に語った。

「その時に元上司の名を出したことが逆効果になったようで」

 要するにこの一戦もリシャールの伝説を彩る一頁になってしまったのである。

 宰相の最後の仕事として、この戦いに不参加だったもう一つの星系国家について触れなければならない。

 テトラ連合が開発した五番目の星系、連合から離反してローンスターと名乗った国家である。今から半世紀前になるこの独立運動の陰には帝国情報部の暗躍があったと言われる。この独立騒動を画期として、帝国と連合との戦いは激しさを増した。それ以前には双方に融和派が一定数いたのだが、もはや両国は不倶戴天の敵同士となって久しい。

 長く孤立政策を取ってきたローンスターであるが、宰相の外交手腕により帝国との軍事同盟に踏み切ったのである。帝国から送り込まれた軍事顧問団が持ち込んだ新兵器こそ例の重力加速砲である。ローンスターは複数のGフォートレスを運用してテトラ連合の再侵攻(ローンスター側では干渉戦争と呼称する)を退けることになるのだが、それはまた後の話だ。

 第九艦隊の青龍は要員ごとこの軍事顧問団に組み込まれた。これはリシャールの力を弱めようと言う軍内部の政治闘争の一環であるが、この計画についてはむしろリシャールの方から持ち掛けた可能性があるが、文書としては残っていない。

 実戦投入した結果を見て、重力加速砲は戦艦砲としては使い難い。用途が限られると言う判断があったようだ。それを受けての要塞砲への転用である。

 出発に際して、

「くれぐれも、無事に生きて帰ってくれよ」

 と声を掛けるリシャール。

「これ以上の伝説は御免だ」

 彼としては、自分の行動によって発生する話は致し方ないが、自分が関わらない局面で伝説が積みあがるのは釈然としない。

「連合の出方次第ですね」

 とジル艦長が笑って返した


 宰相は無事に勇退を果たし、爵位も伯爵から侯爵へ陞爵した。

 宰相職を引き継いだのは軍務大臣であった。軍出身の宰相は建国期の数代を除いて久しくなかった。つまり今はそれくらいの非常時だと言う事だ。

 閣僚はほぼそのまま留任。新任は宰相が兼任していた外務大臣と昇格により空いた軍務大臣のみである。軍務大臣に登用されたのはモンタギュー伯ウリエル三世であった。三世は皇帝の愛妾の甥なので若干縁故採用の気は無いとも言えないが、有能な人物であることも確かである。




 軍の方も若干の改変があった。司令官を失った第七艦隊は一度解体。リシャールがそのナンバーを引き継いだ。

 彼の艦隊は一番艦青龍の出向に加えて四番艦の玄武も近衛への譲渡が決まった。近衛の第一艦隊は玄武の同型艦の採用に伴って、オリジナルの玄武はまず訓練用として用いられる。

 その代替として旧第七艦隊から二隻を受け取る。乗員についても元玄武の乗員に加えて、旧第七艦隊からも選抜して編成する。

 編入に際しては当然アイザックによる改造が施されることになるのだが・・・。


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