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会合戦記 疫病神と呼ばれた提督は望まぬ出世街道を突き進む  作者: 今谷とーしろー
怒涛篇

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第二話 実戦訓練

「俺たちが出て行って、すんなり退いてくれれば一番良いのだけれど」

 残念ながら現状ではそれをを試してみることも出来ない。

「二番と三番が単独訓練中だからなあ」

 Gユニットをパッシブモードにしているからこちらにも位置が判らない。

「呼び戻しますか?」

 とヴァイス。

「下手に通信を打つと敵に余計な情報を与えてしまうだろう。それに彼らも敵の侵入を探知しているだろうから」

 戦慣れした彼らならば適宜対応してくれる筈だ。

「それで小官は何をすれば宜しいのですか」

 一番艦”青龍”の艦長ジル少佐である。

「最大射程で敵の旗艦に一発ぶちかましてもらいたい。敵の射程距離外だから反撃はないはずだけれど、不安なら楯も出すよ」

 楯とは防御特化の四番艦の事である。

「ご冗談を」

 と苦笑するジル。

「うっかり沈めてしまっても構いませんね」

 と真顔になって訊いてくる。

「まあ当たり所が悪ければ沈む可能性も無きにしも非ずですね」

 とアイザック。

「これは実戦訓練だから、沈めるなら、うっかりでなくきっちりと決めてくれ」

 とリシャール。

「では出陣します」

 一番艦は要塞から少し離れたところに停止して敵を待ち構える。

 艦隊の一方が射程距離に入ったと瞬間に左右の六門が砲火を吐き出す。

「全弾命中か。出来過ぎだな」

 要塞司令部でこの様子を見ていたリシャールが呟く。

「敵艦隊が後退します」

 と要塞の情報担当士官。

「敵は何をされたのかも判っていないでしょうね」

 と要塞指令。

「問題は次ですね」

 今のを見ていた敵のもう一つの艦隊がどのような対応を見せるか。

「悪手だな」

 とダミアンが断じる。

 敵艦隊は侵攻速度を落として航行した。

「最善策は味方と合流して善後策を講じること」

 とダミアン。

「次善策は逆に速度を上げて突っ込んでくること」

「敵の速度が速い方が砲撃は当て難いからねえ」

 とリシャールが同意を示す。

 一番艦は艦首を少しだけ動かす。

「まあまあかな」

 ダミアンの操船なら、砲手は余計な照準調整を行わずに連射できるが、

「まあ砲手の腕の見せ所だね」

 もう一方の艦隊が射程内に入るまで一時間ほどである。この間を利用して、

「あれはレールガンですか?」

 と要塞参謀から質問が出る。

「似たようなモノですが、少し違います」

 と技官のアイザックが説明モードに入る。

「従来のレールガンと言うのは電磁場を用いて飛翔体を加速させますが、一番艦のあれはGユニットを利用した重力場による加速です。重力加速砲(GAC)と呼ぶべきでしょう」

 砲身つまり加速地帯が長いほど弾速が上がる。重要なのは飛ばすものの重量に関わらず一定の弾速になると言う事。つまり思い弾丸を用いるほど威力が増すのである。

「唯一にして最大の欠点はユニットが無いと運用できない事です。戦艦に取り付けるには、取り回しを考慮するとあの長さが限界ですが、要塞砲として用いるならもっと長いモノも運用できますよ」

 この要塞もGユニットを配備されている。

「検討してみます」

 敵が射程圏内に入ったところで、今度は連射を試みた。

 第一射の精度は前回とほぼ互角。問題は第二射である。敵が後退すると想定して少し奥に狙いを付けたのだが、敵艦隊はむしろ速度を上げてきた。

「またしても悪手だ」

 結果として第二射は第一射よりも後ろに命中した。

 着弾時に一瞬動きが止まり、急激に後方へ動き出した。

「Gユニットへのエネルギー供給が飛んだな」

 とアイザック技術少佐が分析する。

「リカバリーが早かったな」

 恐らくは予備回路に切り替えて事なきを得たのだろう。流石にこれ以上前に出ることは危険と判断したらしい。

「撃沈し損ねました」

 とジル艦長から通信が入る。

「上出来だ。戻ってくれ。射撃データの解析をしたくてアイザックがうずうずしている」

「出迎えに行く」

 アイザックは一目散にドックへ向かった。

「見事なお手並みでした」

 と右手を差し出す要塞指令の手を握り返して、

「監視は続けてください。敵は後退しただけでまだ撤退はしていませんので」

 と言ってリシャールは退室した。

「俺はもう少し見ていくよ」

 とダミアンは残留を選択した。


 部屋に戻ったリシャールのもとにジルが報告に現れた。

「アイザックはどうした?」

「射撃データを解析して管制システムをアップデートすると息巻いていましたよ」

「半ば冗談で四種類の艦の構想を話したら、本当に実現してしまうんだからなあ」

「予算が掛かったでしょう」

「実はそれほどでもない」

 一番コストが掛からなかったのがジル少佐の一番艦。GACは構造自体はシンプルで、ユニットを制御するソフトウェアの方が難事だった。

「二番と三番も船の構造的にはさほど特殊ではない。問題は乗せる人材の方で」

 だからこそ単独での訓練が必要だった訳だ。

「最もコストが掛かったのは四番艦の重装甲なんだが、こちらは設計段階から近衛が興味を持ってきて、共同開発になったからかなり圧縮できた」


 それから三時間ほどして、

「敵艦隊が撤退を始めました」

 と要塞指令から連絡があった。

「貴下の艦艇がやってくれたようです」

「戻ってきたら報告を受けましょう」


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