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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
一話:送迎バス運転手・土室 樹
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――2017年7月5日――

22才の俺は、まだ大型二種免許を持っていなかった。

1年前から、俺は地元の保育園で働いていた。

高校卒業後、バイトをしながらも保育園の運転手になった。

高校の部活で熱中して、卒業したサッカー。


18で運転免許を取り、元々車にも興味があった。

バイトもなかなか続かない俺が、兄がやっていた保育園の運転を代わりにやることになった。

それから、俺は毎日マイクロバスで送迎をしていた。


元々車の運転は、好きだ。

市が運営する保育園の送迎を、交代制で俺は行なっていた。

保護者の家の前にバスを止めて……保育園児を送るだけの業務。

行き帰りを運転して、給料も悪くはない。

それだけの仕事で、今の小学生や中学生よりも時間が少し遅い。


この日は、夏の暑い日だった。

前日の大雨が嘘のように晴れていて、時間はAM9:28を示していた。

少し眠たそうな顔で俺は、いつも通りに子供を預かってマイクロバスを運転していた。


マイクロバスといっても、園児6人が乗り込む小さなバス。

子供向けのアニメキャラがラッピングされていて、いかにも保育園の送迎バスだ。

車内は、子供が騒いで五月蠅かった。

だが、運転している間は余り気にならない。

箕面市街は、9時を超えると交通のピークは過ぎた。


快適な道路を進み、子供を預かって運転をしていく。

運転席のそばには、缶のブラックコーヒーが空だ。

眠くなりそうになりながらも、俺は運転に集中してバスを保育園まで届けた。


平屋の保育園の敷地前に、俺はブレーキをかけて停車させた。

そのまま、車内キーを解除していた。


「着いたよ、保育園」

後ろに声をかけて、俺は子供に声をかけた。

騒いでいた子供達も、保育園を見て声を上げていた。

保育園の前には、保母が出迎えてきた。


「ようこそ……『ひまわり保育園』へ」

「さあさあ、おはようございます」

「おはようございます」

エプロン姿の保母が四人、マイクロバスから出てくる子供を出迎えた。

6人が乗り込んでいたマイクロバスの子供を、俺は運転席から見送っていた。

運転席にいる俺に、近くにいた保母が話しかけた。


「土室さん、ご苦労様です」

若い女性の保母、エプロン姿の名札には『あきらせんせい』と書かれていた。


「いえいえ、仕事ですから」

「なにか、子供達のことで変わったことはありませんか?」

「いいえ」

いつも通りの、何気ない日常の会話。


『あきらせんせい』は、俺の兄貴とは同級生だ。

3つ年上の女性は、背も高いし肌も小麦色に焼けていた。

一時期、兄貴とはつきあっていたけど……ヒステリックな性格だと兄から聞かされていた。

兄貴とは別れている元カノの女の保母と、俺は世間的な会話を続けた。


(相変わらず、化粧濃いな)

子供相手の仕事なのに、化粧の濃い『あきらせんせい』を運転席から眺めた。

スマホを持った保母は、スマホを見ながら話を続けた。

相変わらず、適当な職場だな。


「午後は、4時の便ですけど……今日は坂本さんの家は家族さんが迎えに来るそうです」

「了解です。じゃあ坂本さんのとこは、キャンセルで」

「それと、由愛ちゃんのお母さんも今日は早く会社が終わるので最初に届けて欲しいと」

「はい、了解」

運転席近くに置いたバインダーを見ながら、ルートを確認していた。


そこには、送迎先の住所と地図が書かれていた。

保母に言われたとおり、俺は送り先の住所を見て考えていた。


「じゃあ、PM3:50に出た方が良くないですか?」

「そうですね、そこのところは園長に相談します」

「頼みますよ、4時辺りは市街地の方だと交通激しいから渋滞も起こるし」

子供達が出て行き、マイクロバスは広く感じられた。

そのまま、俺は自動でマイクロバスの乗車口を閉めていた。


「それじゃあ、俺は……車回してきますね」

「はい、ご苦労様です」

運転席の近くにいた保母が離れて、俺は近くの駐車場に車を走らせていた。


だけど、俺はこのとき一つのミスを犯していた。

そのときの俺は、まだ気づかないでいた。



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