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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
エピローグ:
56/56

056

メタトロンは、裂け目をじっと見ていた。

私は、この時代の人間では無い。


そして、メタトロンは私が送り返した少し未来から来ていた。

だからこそ、私はここでクロノスを起動させていた。


「ならばお前は、ここから帰れ!」

「では、全てに気づいたのですか」

「ああ、まだこの旅は続く」

「エウノミア様、あなたが気づいてくれて良かったです。

自分もこの時代に、来た意味がありました」

メタトロンは、服を着て真っ直ぐ私を見ていた。


「なあ、メタトロン」

「なんでしょうか?」

「私たちに、探せるだろうか?『最高の人材』を」

「人類を救済する『最高の人材』ですから、難しいかもしれませんね」

メタトロンは、正直に言い放った。

私が引っかかっていたことを、ズバリ言い放つ。


「手厳しいな」

「今のままでは、遭遇率は限りなくゼロパーセントでしょう」

「今のままでは?」

「ええ、ですが既に経験したのでしょう。

エウノミア様が、理解したのでしょう。この時代の人間を」

メタトロンの言葉に、今は理解できた。

私は静かに、首を縦に振っていた。


「うん。この時代の人間は、まだ分からないことが多い。

情報や歴史……全ては知っていた。

だけど感性や、経験は味わったことがないものばかりだ」

「自分たちがいた時代には、そもそも周りに人はいない。

『崩壊』が進み、多くの人類は消滅した。

あまりにも少ない人間の中で生きてきた私は、経験に乏しい。

空想だけでは、『最高の人材』を探すことは難しいだろう」

「そうだな、それは実感した」

私は、ディケーの言葉で思い出した。

消すことだけが、この時代でやることでは無い。


人間の形成に関わる他の人間が、どこかで影響していた。

人と人との重なりで、この世界は複雑に成り立っていた。

だから、私はまだまだ経験不足だ。


「メタトロンよ、まずはお前が戻れ。

愚かな選択をしようとする未来の私に、そのことを気づかせてくれ」

そんなメタトロンに、私は投げ渡していた。

これは、ディケーの持っていたクロノス端末。


「エウノミア様は、どうするのですか?」

「もう少しだけ、この時代の人間に関わってみる。

もっとサンプルが必要だし、まだ慌てる時間では無い。

大丈夫、私は時間逆説(タイムパラドックス)を起こすヘマはしない。

だから、もっと見てみたいのだ。この時代の人間を」

「分かりました、では伝えます」

そういいながら、メタトロンは空間の裂け目に右足を突っ込んだ。


「お気をつけて、エウノミア様」

「ああ、お前も頼む。私の目を、覚ましてあげてくれ」

そしてメタトロンは、裂け目の中に入っていった。

同時に、裂け目は消えて普通の公園に戻っていた。

私のそばには、ジャングルジムや滑り台の遊具が見えた。


(さて、この時代を見られるのは、2024年12月24日か。

それまで、この時代の人間を見定めるようにしようか。

私が消し去らなくてもいい人間に、なんとか出会えるといい……な)

少し眠くなった私は、自分の体を透明にしていた。

透明になった私は、夕方から夜へと変わる町へと繰り出していくのだった。




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