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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
エピローグ:
55/56

055

その日の夕方、私は公園にいた。

箕面市内にある公園は、柴島 栄五郎が迷惑を起こしていた公園だ。

彼の住んでいる一軒家も、すぐそばに見えていた。

公園の隅にあるブランコに、私は座っていた。


この時代に私の家も、家族も存在しない。

ディケーの家に招かれたが、私は断った。


ディケーは、夫婦で暮らしていた。

夫が病室にいるけど、私はその家に行くことは出来ない。

元々、私はこの時代に家が無い。


野宿でも構わないし、この端末さえあれば何一つ困らない。

私が着ていたこの衣服だって……スマホで操作すると一瞬で汚れが消えた。

そもそも、この衣服は無地の服にホログラムデータを重ねているだけ。

人間の視覚の原理を利用して、単にセーラー服に見せているだけだ。

着ている理由も、この時代に違和感がなくてなんとなく見た目がいいから選んでいるに過ぎない。


(でも、最高の人材は見つからない)

この時代には、人間がとにかく多い。

時代が進むと共に、人間は地球や世界の真理に近づく。

だが、最後に人類は愚かな選択をして世界を滅ぼす。それが『崩壊』


その年月は、2459年12月24日。

月を最後に、世界が滅び、宇宙も無くなった。

月の研究所は、その数週間前に一つの決断をした。

時間移動装置(クロノス)の通常転送装置を、発動させた。

発動を許可したのは、ディケー。私が尊敬していた研究所の先輩。


世界の滅びを感じたディケーは、最初にこの時代に来た。

次にAIロボのメタトロンと、エイレネー。

私は最後に、この時代にやってきた。


先発隊としてやってきた二人と、メタトロンはこの時代を私より長く見てきた。

そこで、この時代の人間について学んだ。


(まだまだ、私はこの時代の人間を知らない。

単なる文章による歴史や情報だけでは、知らない事も多い。

感じた感性、経験で彼らは人間を見ていた。

私はようやく、この時代の人間を知ることが出来た)

でも、探しに来た人間はいない。

私たちが探し求めた、『最高の人材』は見つからない。


本当に、この時代にいるのだろうか。

この時代よりも、もっと前の時代の人間の方が良いのだろうか。


「エウノミア様、ここにいましたか?」

そんな誰もいない夜の公園に、一人の人間が姿を見せた。

黒いスーツに、サングラスの男。


それは、AIロボのメタトロンだ。

紳士的に公園の前で頭を下げて、私のブランコに近づく。


「ああ、お前は……5年前から来たのか?」

「はい」メタトロンは、肯定した。

「なるほどな。つまりは、私にこれを見せたかったのだろう」

「その様子だとディケー様に、会ったのですか?」

「お前は、近いうちに私を説得しに5年後に戻っていく。

無知な私へ、忘れ物を届けに」

「忘れ物は、無事に響いたよ。

確かに私は、間違っていた。それは謝罪する」

私は、現れたメタトロンに素直に頭を下げた。


「エウノミア様、それは良かったです」

サングラス素顔のメタトロンは、安心した顔を見せた。

そんな私は、ブランコから飛び降りた。

華麗に着地した私は、メタトロンをじっと見ていた。


「それで、お前は他のサンプルを持っているのだろう」

「ええ、自分はいろいろ調べました」

「お前のサンプルを、見せてもらう」

私はすぐさま、ブランコから飛び降りてメタトロンの目の前に立っていた。


スマホを持って、メタトロンの黒いスーツを脱がす。

白いスーツの中には、モニターが見えた。

モニターをスマホでかざすと、私のスマホにデータが流れ込んでいた。

それを、私はスマホをじっと見ながら確認をしていた。


「なるほどな。

やっぱり、お前はあのときのメタトロンか」

私は、すぐさまスマホを操作した。

クロノスを起動させると、空間に裂け目が出てきた。



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