054
ディケーは、全てを知っていた。
私がやろうとしていた、ガイアの広域展開。
成長しない人間に嘆き、愚かな人間の部分を見て私が間違えてしまったことを。
ディケーの言葉に、私はいろいろ考えさせられた。
世界が崩壊させたのは、人類だ。
その要因は、人間の中にあるのは間違いない。
「『最高の人材』を探すには、何が必要だと思う?」
「愛を知ること」
「では、なぜ『崩壊』が起こったの?」
「人間が、人間を許せなかったから……それにより起こったのが『崩壊』」
崩壊によって、未来は滅んだ。
何も残らなくなって、人類は絶滅した。
「それは、人を許せなくなったから起きた悲劇」
「覚えているのね、人類の歴史」
「当然よ。それを知って、私たちは『最高の人材』を探しにここに来た。
でも、それは間違いがあったことを私は知った。
それは、根底である私の問題。
「私には、そもそも探す資格は無かった」
「そんなことは無い。
ただ、あなたは少し勘違いをしていただけ。
まだ何も知らなくて、何も経験しなかったから」
「私は無力だ。今までの人間だけを見て、この時代の人間は間違っていると思ってしまった。
これは私の過失だ、大きなミスだ。こんな私には、探す資格は無い」
私ははっきりと、懺悔をした。
落胆した顔で、落ち込んでしまった。
人類再構築計画を、私は焦っていた。
この任務の失敗は、人類の歴史を閉ざすこと。
そのためには、世界を構築し直せる人類を探す。
「今、あなたは許せる?」
「ディケーの言葉を聞いて、私は理解した。
どんな人でも許せる、それが『最高の人材』を探すことに繋がるのだと」
「そう、あなたはようやく分かったのね」
「先輩、ありがとうございます」
私はディケーに、素直に感謝した。
私の中でも、どこか引っかかっていたことだから。
「これが、メタトロンが言いたかったことか?」
「そう、会えたのね。メタトロンに」
「ええ、理解しました」
2024年に、メタトロンが戻ってきたことも。
先輩が、メタトロンにクロノス端末を託したことも。
今なら分かっていた、私にはその意味が。
メタトロンも、エイレネーも、私に伝えたかったことを。
「どうして……私は気づけなかったの……」
それは、自分のやろうとしたことに対する罪悪感だ。
サンプルを見て、私は過ちを犯した。
恥ずかしく、胸が苦しい。
自分は、過失をしない人間だと思っていた。
自分は、人類のために……世界のために生きる使命があった。
でも、私もちっぽけな人間でこの時代の人間と同じ。
それを知った時、不安と恐怖と……安心感もあった。
様々な感情が溢れて、私は涙が溢れていた。
「もう、泣かなくてもいい。これ以上、苦しまなくていいの。
あなたも普通の人間だし、だから選ぶことが出来る」
「その言葉だけで、私の全てが許されるの?」
「あたし達は、神じゃ無い。単なるちっぽけな人間よ。
少し先の未来から、やって来ただけの人間だから」
その言葉を聞いて、私は顔を上げた。
ディケーは私を許すように、眩しい笑顔を見せていた。




