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――2019年7月2日――
次に私が見えた場所は、大きな病院の前だ。
病院の玄関だろうか、自動ドアの前で私は立っていた。
朝の病院は、多くの人が中に入っていくのが見えた。
セーラー服の私は、初めて来た病院を見回していた。
(ここは、一度も来たことが無い)
私は、すぐさま時刻をスマホで確認。
四年前の夏である情報を、私は得た。
それにしても、曇り空だ。色のある病院の世界で、黒い雲が立ちこめていた。
地面は少し濡れていて、雨が降っていたようだ。
(なぜ、メタトロンはこの場所にしたのだろう)
クロノス端末は、時間と同時に場所もある程度設定が出来た。
おそらくこの場所は、メタトロンが任意で設定したのだろう。
この病院も、見た事は無いけど『箕面市民病院』と書かれた看板が見えた。
(それにしても、メタトロンはあんなことを言うとはな)
AIロボ、彼は普通の人間では無い。
強い意見を持たずに、常に他人に合わせる性格。
だけど、二度目に現れたメタトロンは強気だった。
自分の意見をはっきりと言い、私に伝えてきた。
そして、ディケーの端末。
彼は、間違いなくディケーに会っていた。
唯一無二の端末は、メタトロンが使いこなしていた。
ディケーの端末の権限が、なぜかメタトロンになっていた。
なぜ、メタトロンがディケーの端末を使えたのか。
まさか、ディケーを殺して奪ったのではないのだろうか。
2024年の中で、ディケーに会っていないのも気になっていた。
私が過去に戻って、探している二つの目的の一つ。
この目的は個別で私的だったため、私の中で封印してきたこと。
私はランダムに飛ばした時間軸で、メタトロンは会ったことになる。
(まさか、この時間に……)
私は周囲を見回すと、玄関の方に一人の人間が歩いてくるのが見えた。
それは、深緑のワンピースを着ていたポニーテールの女性。
だけど、私はすぐにその人物が分かった。
「ディケー先輩!」
いきなり私は、体が震えていた。
尊敬した先輩で、探していた所長がここにいた。
そこには、大人びた女性……ディケーが姿を見せていた。




