005
バックミラーで見上げた俺は、子供の姿を目撃した。
年齢は、3歳ぐらいだろうか。小学生よりも、小さな裸の子供。
なんで急にこの姿になったのか、分からない。
だけど、自分がこの姿になったことを驚いていた。
(なんだ、なんだ。何が起こった?
俺は……子供じゃないよな?どうした?どうしてこうなった?)
頭の中が、こんがらがっていた。冷静を保つことが、できない。
乗せたはずのないセーラー服の女。急に俺は意識を失って、子供になった。
いろんな事が起こって、頭の整理がつかない。
だけど、時間と共に混乱は収まった。
(兎に角、まずはここから出よう。あのセーラー服の女を、なんとか探さないと)
俺は、決心した。
全てのきっかけは、セーラー服の女だ。
しかも、彼女は普通ではない。明らかに異質な存在だと、第六感で悟った。
それと同時に、俺は置かれたバスの運転手制服に手を伸ばす。
子供の体だけど、驚くほど俺に馴染んでいた。
探していたのは、バスの鍵だ。
それでも、ポケットに入れたはずの鍵は……見つからない。
(あれ、鍵が……)
右ポケットに入れた鍵は、見つからない。
そういえば、意識を失う直前にセーラー服の女が「鍵がどうの……」って言っていたような。
すぐさま、俺は運転席に向かった。
乗車レバーを、握って動かそうとした。
「くそっ、動けっ!」だけど、鍵がないと起動しない。
バスの構造は理解しているが、鍵は必要だ。
鍵が無いと、バスの中の運転席の全てが動かない。
当然、運転手である俺は理解していた。
「ダメか……」落胆した子供の俺。
見上げたのは、大きなガラスの窓。
乗車口のドアを、俺は開けることは出来ない。
小さな体で、バスの運転席に立っていた。
裸の俺は、バスの運転手から周りを見ていた。
バスの車庫には、当然人の姿が無い。
俺は窓を手で触れながらも、バスの窓を叩いた。
(窓を壊すことも、出来なそう)
というより、壊したらお金がかかるという思いが湧き上がった。
それでも、運転手のレバーやいろんなスイッチを動かそうとした。
だけど、鍵が無いから動かすことが出来ない。
(これが、『脱出ゲーム』か……)
セーラー服の女の言葉を、今になってようやく実感した。
バスの中に、子供の姿にされて閉じ込められた。
そして、バスを出るための鍵は……なくなっていた。
(唯一、動くのは……)
俺は、クラクションを鳴らした。
ブーっと大きな音が、車庫の中に聞こえた。
バスに閉じ込められたら、他人に知らせるのだ。
それが一番だと思って、両手で硬いクラクションを鳴らした。
鳴らしたが……変化は無かった。
「だめか……」子供の俺は、ため息を漏らすしか無かった。