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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
四話:最高の人材を求めて
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メタトロンを追放したのは、過去だ。

あの切れ目は、この時間軸では無い。

スマホ型時間移動装置(クロノス)は、簡易型とも言われていた。

裂け目に入った人間を、約十年前後の過去未来に飛ばすことが出来た。


そして、もう一つ。

このクロノスを使うことが出来るのは、この端末を持った人物だけ。

サポート役でこの時代にきたAIロボ(メタトロン)だけは、この端末を持っていない。

持っていないはずなのに、彼はスマホを持っていた。

しかも、そのスマホを見て驚いていた。


「それは、所長の?」

持っていた端末は、所長のスマホ。

私の憧れる人、ディケー。月の研究所にいた所長。

なぜ、メタトロンがこのスマホを持っていたのか分からない。

それ以上に分からないことが、ここに来たことだ。


「はい、託されました」

「託された?」

「あなたを救いに来ました。エウノミア様」

「私を救いに来た?」意味の分からないことを言うメタトロン。

だけど、メタトロンは真剣だ。


「ええ、エウノミア様に頼まれましたから」

「私は頼んでいない……筈」

「一つ、あなたに言わなければいけない事があります」

「な、何?」

「あなたには、『最高の人材』を探すには値しません」

「なによ、それ?」

「あなたは、この時代の人間をまだ知らなすぎます」

メタトロンは、淡々と続けた。

その声に、相変わらず抑揚は無い。

いつもクールで、冷静で、感情的では無い。


だけどメタトロンは私に逆らうことは、無かった。

そんなメタトロンが、私にはっきりとモノを言っていた。

その言葉を聞いて、私は流石に憮然とした顔を見せた。


「私は人間を調べた。

短い時間ではあったが、この時代の人間を調べる準備はしてきた。

そして、サンプルの確認は今のところ私の想像の域を超えていない。

成長しない愚かな人間の集まり。

この時代の人間は、減らしておかないと『最高の人材』が現れない」

「それは、無理だ」

メタトロンは、私の言葉をまたも否定した。


「どうして?」

「あなたは、人間を表面でしか捉えられていない。

それでは、成長しないこの時代の人間と同じ。

何も変らない、何も変ることは無い」

「では、あんたはどうするって言うの?」

私の質問に、すぐさまメタトロンが対応した。


ディケーのクロノス端末を使い、数分前の私と同じようなことをしてきた。

空間に、切れ目が出来た。

それは時空の切れ目。ここに飛び込むと、過去に戻ることができた。


「エウノミア様、ここに飛び込んでください」

メタトロンの言葉、後ろのエイレネーは静かに見守っていた。


「今度は、エウノミアちゃんが行く番じゃないかしら?」

「頭を冷ましに?」

「そう」エイレネーは、私を抱きつこうと両手を広げた。

それを華麗にスルーして、私は切れ目の方に近づく。


「分かった」

私は冷静を装いながら、切れ目の方に体を入れていった。

そのまま、私の体は切れ目の中……逆流する時の流れに身を委ねていた。



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