048
私は、迷っているのだろうか。
私は、間違っているのだろうか。
この時代の人間を、時間をかけて私は調べた。
調査対象は、成長した大人に厳選していた。
その結果、成長をしないことを知った。
同じようなミスを犯し、あり得ない失敗をした。
そんな人間がいるこの時代に、最高の人材がいるはずも無い。
だとすれば、人間の多くを消すのは問題ないだろう。
悪い人間がいなくなれば、選ばれた人間の中から最高の人材に近づく人間が生まれる。
そうだ、これは前進だ。
人類が再び世界に、生き残るための進化だ。
そうだと、私は思っていた。エイレネーも、私を支持してくれると思った。
「ねえ、この時代の人間を本当に消すの?」
「消したほうが、最高の人材が生まれやすい」
「確かに、今まで見た人間は最高の人材にほど遠い」
エイレネーは、私の言葉を肯定した。
肯定した彼女と、私の間にはそれでも何か違いが感じられた。
「でも、エイレネーは消そうと動かない。
ガイアの起動は、私で無くても出来るのに」
「確かに、あたしはそれをしなかった。なぜだと思う?」
「人間の可能性?」
「可能性もあるけど……やっぱりあなたを見て思ったのよ」
「私?」自分の顔を指さした。
そんな私を、エイレネーが優しく抱きしめていた。
大きなエイレネーは、抱擁力が違う。
私を包み込むように抱き住めたエイレネーは、とても温かい。
「あなたも、サンプルの一太刀のような失敗をしてしまうのではないかと」
「私は……そうなのか?」
「ええ、なんか辛そうだから。迷っていて、苦しそうだから」
エイレネーの言葉が、暖かくて心地よい。
それでも、私はエイレネーから離れた。
「でも、分からないんだ。
だとしたら、どうやって最高の人材を探せばいいのかを」
「それならば、心配いりません」
そんな中、突然時空の切れ目が近くに現れた。
モヤモヤした切れ目の中から、一人の人物が姿を見せた。
その姿を見て、私は驚いていた。
「メタトロン」
黒スーツ男は、何事も無かったかのように再びこの場に現れたのだから。




