047
メタトロンは、私の行動にいち早く反応した。
私がやろうとしたことは、一つ。
それは、無色空間の広域展開。
今、使っている空間の広域展開を広くすること。
つまりこの近辺の人間を一瞬にして消し去るというもの。
未来の技術ならば、それは不可能では無い。
だけど、私の手を掴んでそれを阻止してきたメタトロン。
「何をする?」
「ガイアの広域展開は、多くの人を巻き込みます。
ガイアに封じ込まれた人は、簡単には出ることが許されない」
「そう、この世界で消滅を意味する」
「それは、月まで迫った崩壊と同じなのでは?」
「だが、三人サンプルを見てもいずれも問題が多い。
とてもこの時代には、『最高の人材』がいるとは思えない」
私は、一つの結論を出していた。
だが、それでもメタトロンは否定した。
「でも、人類を全滅させることは無いでしょう。
それに、過去でむやみに人類を消し去っては時間逆説も起こる可能性があります」
「そうならないように、計算をする。
展開の設定だって、私はしくじらない」
「それでも、この時代の人間に干渉するのは良くないと思います」
メタトロンは、淡々と言い返してきた。
「お前は、成長という言葉を知っているか?」
「はい、人間の基本能力が上昇することですよね」
「サンプルの3人は、大人になっても成長していると思うか?
同じような失敗をして、それを繰り返す。
自分がかつて、弱者だったことも忘れて繰り返す。
これは成長していないと言っても仕方ないのではないか?
だとすれは、むしろ最高の人材を探す上で弊害でしか無い」
メタトロンの手を振り払った。
正論である私の言葉に、メタトロンも黙ってしまう。
そんな私は、スマホを操作していた。
一つの操作をスマホで行なうと、突然私とメタトロンの目の前の空間に、亀裂が見えた。
亀裂の奥には、不思議な時の流れが見えた。
「お前は一旦、この任務を離れよ」
「エウノミア様……」
「これは、命令だ」
私の言葉に、メタトロンは頷いた。
AIロボの主導権限は、いなくなった所長と私だけだ。
所長がいない今、メタトロンは私に逆らうことは出来ない。
「分かりました。エウノミア様」
彼は表情一つ変えずに、そのまま裂け目の方に近づく。
「では、少し頭を冷やしてきます」
そのまま、メタトロンが裂け目の中へと入っていった。
私はそれを見ながら、ため息をついていた。
隣にいたエイレネーは、私の後ろからじっと私の背中を見ていた。
「いいの、エウノミアちゃん?」
「うん。メタトロンは、さっきから言っていることが少しおかしかった。
これで良かった。エイレネーさん、ところで……」
「エウノミアちゃん、本当におかしいと思いますか?」
エイレネーが、厳しい一言を私に投げかけていた。
私は、思わず驚いた顔を見せていた。




