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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
三話:迷惑老人・『|柴島《くにじま》 栄五郎』
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淀川は、60年前は既に初老だ。

今の時代に生きているとすれば、130歳で世界最高年齢になるだろう。


無論、今の時代に淀川が生きているはずもない。

それでも淀川の存在を見て、わしと興六郎は驚いていた。


「淀川……サンタじいさん?」

「子供が、五月蠅いぞ!

大体、そんなに砂場に穴を開けるな!危ないじゃないか!」

唐突に、理不尽な事を言い放ってきた淀川。

初めて見た、淀川の怒り声と顔。

顔を真っ赤にして、目を吊り上げていた。

普段は穏やかな人が起こると、ギャップに恐怖を感じた。

淀川の顔には、どこか恐怖も感じていた。


「サンタじいさん?」

「何を言っている?大体子供は、何でも自分が一番だと思っている。

お前らは、五月蠅いとは思わないのか?

周りに迷惑をかけているとは、なんで気づかないのか?」

淀川の怒った顔は、間違いなく初めて見た。

あんなに優しかった長い白髭の老人は、手を上げて怒っていた。


「兄さん、これって……」

「ああ、嫌な感じだ」

淀川は普通ではない。

だからわしは、あることを思い出した。

もしかして、さっき出てきたあの女の仕業か。

わしを観察するとかぬかしていたが、それもこの一つか。


「サンタじいさんは、もう生きていない」

「何を言っている?全く近頃の子供は、勝手に大人を変な呼び方しおって」

淀川の怒りは、全く止まらない。

険しい顔で、わしと興六郎を睨みつけてきた。

あのときの淀川と、明らかに違う。

おにぎりをくれた、あの優しかった淀川ではない。


(でも、この感じどこかで……)

わしは、何かを感じていた。

そうだ、これは今のわしだ。


周りの子供に怒鳴り込んで、怒っていた。

周囲を見回して、近所では話題の『迷惑老人』。

そんなわしの姿に、目の前の老人が重なって見えてしまった。


「ほれ、お前らはとっとと帰りな」

「帰りたくても帰れない。

宝を探さないと……ここから出られないのだから」

「何を馬鹿なことを、言っている?

お前達が五月蠅いから、こうやって文句を言っているんだぞ!」

怒り狂う淀川は、再び叫んだ。

何を言っても、反論しても理不尽に返されてしまう。

おまけに、今の自分達に起こっていることは普通では説明できないことだらけだ。


「兄さん、どうしよう?」

困惑しているのは、弟の興六郎。

兄であるわしが、ここは何とかしないといけない。

立ち上がって、前に出ていく。


「なんだ、文句でもあるのか?」

「じゃあ、わしらをここから出してくれ」

「はあ、ふざけるな!

とっととここから出て行けば、いいだろ!早くしろ!」

淀川によく似た老人との話は、平行線だ。

話が全くかみ合わないし、理不尽だ。

議論は全く進まないし、互いの話が通じない。


「ダメだな、お前ら」

そんな中、淀川が一人の人間を公園の外から呼び出した。

公園の外から、一人の人間が近づいてきた。


それは、真っ黒なスーツにサングラスの男。

サラリーマンと言うより、スパイのような男がゆっくり歩道から公園に入ってきた。

淀川と同じように、見えない壁に阻まれることもなくこのまま公園に来た。

淀川のそばにいた黒いスーツの男を見て、興六郎は思い出した。


「お前は、運転席の……」

「柴島 栄五郎。あなたに質問です。

ねえ、どんな気持ち?……と」

黒いサングラスの男は、抑揚のない声でわしに向けて言い放ってきた。

いきなり変な質問をされたわしは、子供だけど怒っていた。


「馬鹿なことを、言っているんじゃない!

おまえのせいだろう。早く、ここから出せ!」

黒いサングラスの男に、俺ははっきりと言い返していた。


「それでも、君には聞きたい」

「何のつもりだ?」

「栄五郎。なぜお前は、近所迷惑老人と言われても叫ぶんだ?」

黒いスーツの男が、シンプルに聞いてきた。

その問いに対して、わしは眉をひそめた。

わしの怒りは、収まる筈もない。


「そんなもん、市が悪いに決まっているだろ!」

わしは、険しい顔でようやく話し始めた。

それこそ、わしが長年抱き続けた怒りの正体を。



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