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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
三話:迷惑老人・『|柴島《くにじま》 栄五郎』
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60年以上前にも、砂場はあった。

そのことを覚えていて、わしと興六郎は砂場にいた。

そのまま、地面を素手でかき分けた。

素手が、ドンドン灰色の土で汚れていく。


「出ないね」

「子供の時に隠したんだから、そんなに深くないだろ」

「というより、60年前以上の砂場にちゃんと残っているのか?」

興六郎は、不安だ。

宝を埋めたのは、60年以上前。

この公園は、60年以上ある公園だとわしも興六郎も知っていた。


だけど、一部の遊具はなくなって新しい遊具も増えた。

それでも昔から見ていた砂場も、滑り台もなぜか普通に置かれていた。


公園の周りは、大きく変わった。

建っていた家がなくなって、逆に増えた家もあった。

壁に阻まれているが、入口奥にあるわしの家もその一つ。

そんなわしらは、砂場を掘っていた。


「出ないね」

「一体何に入れたんだろ、宝」

「何だっけ?出てこないと思い出せないね」

わしと興六郎は、兎に角掘っていた。

砂場の砂が、ドンドン山に積み重なっていく。


どこ当たりに埋めたかも、はっきり覚えていない。

決して広くはない砂場だけど、子供の小さな手で掘るには手間がかかった。


(スコップもないし、手で掘っていたのか子供の時)

わしは、子供のバイタリティに改めて驚かされた。

だけど、探しているときは純粋に楽しい。

それはわしと、興六郎の表情にも表れていた。


「出るの、これ?」

「ああ、絶対に出る」

「でも、昔の話だよね」

「絶対に出る。宝は見つかる」

諦めそうな興六郎を、わしは励ました。

興六郎も、わしの動きを見て手を再び動かし始めた。


「兄さん……分かった」

「あとはこっち……」

砂場は、ドンドン積み重なる山が見えた。

小さな砂場は穴だらけで、いくつも穴が開いていた。

顔を泥だらけにしても、わしは掘っていく。


そんな中、足音が公園の外から聞こえた。

この砂場は、入口から一番近い遊具だ。


近くには鉄の柵がある公園があって、そこには見えない壁があった。

わしらは、その壁を通り抜けることは出来ない。


そして、公園の外を歩く一人の人間は老人だった。

見た事がある淀川は、子供に出会ったときと同じ姿だ。

あまりにもそっくりな格好で、わしと興六郎は共に見上げていた


「あれって、淀川さん?」

それは、赤いセーターと緑色のズボンの老人がゆっくり歩いてきた。

そして、見えない壁……の公園を抜けてわしらのいる砂場に近づいてきた。


「淀川さん、サンタさん?」

「こら、そこで何をしている?」

それは淀川さんの聞いたことのない、怒鳴り声だった。

顔を赤くして、淀川が見た事も無い怒り顔を見せていた。



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