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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
三話:迷惑老人・『|柴島《くにじま》 栄五郎』
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宝探しと箕面第四公園の関係は、迷子になった一年後の話。

だけど、まだ小学生に上がったばかりのわしは余り記憶が無い。

子供の頃の記憶は、かれこれ60年以上前の記憶。

興六郎も宝の地図を見つけて、ようやく思い出せたぐらいだ

その地図は、色あせた小さな紙に書かれていた。


「興六郎、覚えているか?」

「うん。この公園に小さいとき……丁度このぐらいに、来たんだよな」

「迷子になった次の年も、大阪に旅行に来た」

「あれ、旅行じゃないよ。単身赴任の父に、会いに来ただけだよ」

「そうだっけ?」そのときの記憶も、わしは朧気だ。

子供の時の記憶なんか、あまり印象に残らないモノ。


人間は、忘れていく生き物だ。

わしのような老人の脳細胞は、常に死んでいく定めなのだ。


「迷って、サンタさん……淀川さんに会いに行ったよね」

「ああ、そうだったな」

「で、帰りに何かを埋めたんだよね」

「確かに埋めたような……」

記憶が朧気で、はっきりとわしは覚えていない。

埋めたことも覚えていなければ、何を埋めたかも覚えていない。


「そういえばそうだな。で、何を埋めたっけ?」

「なんだっけ?」

「さあ」興六郎も、それははっきりと覚えていない。

誰もいない公園で、わしと興六郎は紙切れを見ながら歩く事になった。

『宝探し』を宣言した女は、いつの間にかいなくなった。


普段訪れた狭い公園も、この日ばかりは広く感じた。

子供になったことで、視点も低くなった。

何より体が小さくなったことは、見える景色が変わるということだ。


「『たかいところにあるところにたからがある』。そんなのが、書かれているね」

「これ、興六郎が書いたのか?文章が少し変だけど」

「兄さんの字じゃない?」

「そうか?」

紙切れを、一緒に興六郎とわし。

それと同時に、二人で白黒の公園を見回した。

一番高い遊具をみつけたわしらは、すぐに近づく。

二人で近くの遊具を見て、ジャングルジムに近づいていた。


「公園で、高いところってこれだよな」

見えたジャングルジムは、鉄の棒で組まれたシンプルなモノ。

だけど、このジャングルジムを見上げた。

子供で見上げると、さらに高い。


(このジャングルジムって、60年前にあったか?)

わしは、この公園でジャングルジムの周囲を見ていた。

そこで見つけたのは、ジャングルジムの一本の鉄の棒に書かれた日時。


「おそらく、ジャングルジムじゃないな。平成元年、寄贈だぞ」

「ああ、そうか60年前。じゃあ昭和だもんね。兄さん」

「何?」

「この公園にある、他に高い建物で……もっと古い遊具を探さないと」

「知っているの?」

「多分、これか?」

わしは、近くにある一つの遊具を指さした。

それは古ぼけた滑り台が、近くにあった。



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