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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
一話:送迎バス運転手・土室 樹
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003

――2024年2月24日――

――箕面市内に、大きな団地群が存在した。

街の校外にある団地は、十階建ての高い建物だ。

その中の一室に、俺はいた。


土曜日の昼から夕方に変わる頃。俺は準備をしていた。

この部屋は俺の部屋で、狭い部屋だ。

だけどベッドや本棚、テーブルが置かれたシンプルな部屋。

タンスの目の前で、俺は着替えていた。

着ているのは、ユニフォームだ。


(急がないと、時間が無い)

着ているユニフォームは、レプリカユニフォームだ。

地元大阪にある、プロサッカーチームのユニフォーム。

青をベースにしたユニフォームを、着終えたらテーブルに置かれたスマホが鳴った。


俺はスマホを取り、電話に出ていた。


「ああ、ケイちゃんか」声の主は、男だ。

「団地の下に、とっくに来たんだけど」

「ああ、準備はもうすぐだ」

ズボンを履きながら、電話に対応していた。


壁に見えたのは、サッカー選手が写っていたポスター。

このユニフォームは、俺が着ているユニフォームと同じ。

若い二十代の選手が、ポスターに写っていた。


「今日は出るのか?」

「アイツ、今日スタメンらしいぜ」

「この前の試合中に、打撲したんだけどもう回復したんか?」

「アイツは、ガッツあるからな。俺たちの世代の中でも、最強の司令塔だから」

「流石だな、広貴は。俺たちの部活からまさか、プロが生まれるとは」

「当たり前だ、俺たちはこれでも大阪府大会準優勝メンバーだぜ」

棚のそばには、写真立てが置かれていた。


写真立てには、サッカー部のメンバーの集合写真。

この写真は、高校時代のサッカー部で撮られた1枚。

今電話している相手も、この写真に写った男子部員。

俺と一緒に青春を過ごした仲間と一緒に、俺たちの親友がプロ選手になった試合を見に行くところだ。


「それにしても、(じゅり)

「ん?」

「奥さんとは、上手くやっているのか?」

「普通だよ」俺は、電話相手のケイちゃんに素っ気なく言う。

俺は、既婚者だ。

妻もいるのだが、この団地にはそれぞれ別の部屋に住んでいた。


「いや、なんかあんまり夫婦で一緒にいないから。ちょっと心配で……」

「いや、それはおせっかいだから。

ケイちゃんが、心配しなくても大丈夫。

ちゃんと嫁には、メッセージはちゃんと送ったし」

「会っていないのか?」

「まあ、プチ別居ってやつ?お互いが、個人の生活に干渉しないって約束だしな」

「ふーん」ケイちゃんは、まだ余り納得していないみたいだ。


俺の家は、少し特殊だ。

25才で結婚し、結婚4年目だけどプチ別居は結婚1ヶ月目から始まっていた。

お互い同じ団地に入るけど、別々の部屋で過ごす。


たまにリビングで一緒になるけど、相手の部屋に入らない。

出かけるときは、SNSで知らせる程度。

顔を合わせないで一日過ごすことも、あまり珍しくはない。


「仲が悪いとか喧嘩は、していないんだよな」

「してない」

「離婚とか、しないよな?」

「大丈夫だって」笑って返す俺。

「そっか、ならいい」

などと会話をしていると、俺はユニフォームとズボンに着替え終えた。

俺はそのままスマホを持って、ドアを開けた。


「じゃあ、今から行くから。

サッカーの試合に、早く行こうぜ!」

俺はスマホを切って、部屋を出て行った。


廊下を出ると、妻の部屋があるドアが見えた。

それでも、俺は妻に声をかけること無く玄関を目指していた――



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