023
――2024年10月8日――
戻ってマンション、朝に来た的場の家にあたしは夕方までいた。
しかし、来るときまでのテンションとはまるで違う。
そして見た目も、大きく変わってしまった。
あたしの顔は傷だらけで、足も腕も、強く握られた手の跡が残っていた。」
整えた髪はボサボサで、あたしはただ怯えていた。
両手を縛られて、スマホも没収されたあたし。
リビングの椅子には、ふてぶてしく的場が座っていた。
散らかるリビングで、大きな日焼け男子の的場は威圧感を放つ。
「ここを出るなよ」
何度も、的場があたしに念を押してきた。
ここは、高層マンションの最上階。
地上15階の高さが、空中の監獄になった。
マンションを上がる途中のエレベーターは、住民の持っているカードがないと動かない仕組み。
完全な監禁で、あたしは朝からの出来事を整理できないでいた。
(なんで、こうなった?それとも、これが的場の本性なのか)
殴られて、蹴られた。
男の腕力に、あたしは為す術がない。
スマホをあっという間に取り上げられて、迫る的場に何も抵抗できなかった。
そんな的場は、あたしの取り上げたスマホをじっと見ていた。
「だっせえ男と、つきあっていたんだな」
「いいでしょ」見ているのは、写真だろうか。
プライバシーというスマホの中を、勝手に見ていた的場。
「俺さあ、一度このスマホを見ているんだよね」
「え?」
「覚えている、『あきらせんせい』」
「何を言っているの?」
あたしは、首を傾げていた。
それは、保母としてのあたしの呼び名。
職業が保母である事は知っているけど、あたしの呼び名は的場には言っていない。
そもそも、仕事の話や愚痴なんかは的場に何一つ話していない。
「どうして、あたしの呼び名を?」
「そりゃあ、知っているさ。
だって、僕は『ひまわり保育園』りんご組の『まとば れお』だからね」
その名前を言われた瞬間、あたしは戸惑いしか無かった。
不敵に笑う日焼けの男と、保育園児のれおがどうしても繋がらない。
「待って、れおは3歳児よ。
保育園児が、いきなり大人になるなんてあり得ないわ」
「でも、本当に僕は『れお』。
あなたたちが虐待した、『まとば れお』。同姓同名では無く、正真正銘この僕だ」
それと同時に、的場は両手を縛られたあたしを踏みつけていた。
「分からないなら、逆さ釣りでもされてみるか?
お昼寝時間の時みたいに、あきらせんせいを蹴り飛ばしてやろうか?」
蹴られた的場を見て、あたしは再び震えていた。




