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最高の人材を求めて  作者: 葉月 優奈
二話:独身保母・『泉尾 |輝《あきら》』
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――2024年10月6日――

あたしの職業は、保母だ。

ひまわり保育園に勤務するベテラン保母であるあたしは、朝から仕事だ。


保育園の前で、あたしは待っていた。

エプロン姿で、少しだけ化粧をしたあたし。

りんごのバッジには、『あきらせんせい』と書かれていた。

あたしの隣には、髪の短い女性。

若い女は、あたしと同じように黄色いエプロンを着ていた。


「あきらせんせい」

「ゆみせんせい、どうしました?」

若い女のバッジには、『ゆみせんせい』と書かれていた。

本名は、『大黒 弓』。あたしの5つ下の後輩。

短大も同じ学校で完全な後輩の大黒は、あたしに話をかけてきた。


「先輩の顔、最近艶っぽいですよ」

「そ、そう?」

「うん、だって肌がとても若返っていますね」

「そうかしら?」

「10歳は若く見えますよ」

大黒は、微笑みながらあたしに言ってきた。


確かに鏡を見ながら、あたしは自分の肌つやを感じていた。

あたしは今、恋をしていた。

恋の相手は、居酒屋で会った的場さん。

彼とはLONEでやりとりもしていて、メッセージが来ただけで嬉しくなった。

彼を知れば知るほど、あたしは好きになっていた。


「合コン、上手くいったんですか?」

「そうじゃない」

「じゃあ、なんですか?普通の変化じゃ無いですよね?」

上目で、あたしを見てくる大黒。

それでも、あたしは胸の高鳴りを抑えていた。


「いいでしょ。それより園児が、間もなく来るから」

「でも、良かったです。先輩が幸せで」

大黒は、穏やかな顔に変わっていた。


「何よ、あたしが今まで幸せじゃ……」

「まあまあ、幸せなことはいい事ですよ。私だって、今は幸せですし」

大黒が、チラリと見せてきたスマホ。

その画面には、一人の男性が写っていた。


それは大黒の旦那、彼女は24歳の時に結婚をしていた。

逆玉の旦那は、金持ちで散々自慢を聞かされていた。

相変わらず、逆マウントをとってくる大黒という後輩。


それでも、今のあたしはプチ自慢に耐えるだけの度量があった。

的場さんがいて、彼があたしの事を好きでいてくれた。

あたしも彼が好きで……徐々に自分に自信が持てていた。


(なにより、今回を逃せば婚期はないかもしれない)

あたしは鼻息荒く、彼とは結婚前提でつきあっていた。

間もなくして、保育園のマイクロバスが真っ直ぐこちらにやってきていた。

それを見て、大黒は悪い顔を見せた。


「そういえば、先輩」

「なに?」

「昔のマイクロバスの運転手って、どうなったんですか?」

「知らないわよ、あんな奴!」

あたしは、意地悪く過去を掘り返す大黒にそっぽを見ていた。

そして、マイクロバスが辿り着いた。


「お待たせしました、ひまわり保育園です」

中年の男が、渋い声で園児達を送り出していた。



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